パーティーにて⑥
私はため息をつく。薄闇の中で見ても、ドレスの染みははっきりしている。
「どうした?」
「どうしたも、こうしたも。好きな殿方からはじめていただいたものが、こんなになってしまったんですもの」
「え?」
え? ってなによ、え?って。
「もしかして、嘘泣きだと思ってらしたんですか?」
「いや、そういうわけではないが」
じゃあ、なんでそっぽを向くんですかね? ビロードのような手触りの耳をやさしくつまんで引く。
「好きな殿方からはじめて贈られたものなんですよ?」
「そこまで大事に思ってもらえるとは」
「ワルサさんがくださったものなら、なんでもうれしいです。大事にします」
じっと視線で訴える。この朴念仁め、いいかげん答えにたどりつけ。
「わかった。これからは、もっとたくさん贈り物をする」
「はい! 楽しみにしてます」
無駄遣いをさせるのは、ちょっと気が引けるけど。うちの領地はいま景気がいいし、いいよね? それに、プレゼントを選ぶ間は確実に私のことを考えてくれるわけだから。
前世では、女優モモ○ちゃんの名ゼリフ「別にどなたかに買っていただかなくても」が、座右の銘だった私だけど。なかなかどうして、甘えるのもいいものだ。もちろん、相手は選ぶけどね。
「本当に、疑っていたわけではないんだ」
ワルサさんの言い訳は、私を別の意味でドキリとさせるものだった。
「その染みが君の血でなくて、本当によかったと思っていた」
いやな話。でも、まったくないとも言えない話だ。
ワルサさんが、私を心配してくれてるのは知ってた。一生懸命守ろうとしてくれてるんだよね?
「でも、このドレスの生地。蜘蛛の魔物から採ってつくったアレですわよね? その辺の陣ナシのなまくらなんて通りませんわよね?」
ちなみに魔法陣を刻んだ武器は、独特の魔力を帯びているようで、近づけば、わかる人にはわかるらしい。
「知っていたのか?」
そんな驚かなくても。
「私だって、お仕事で扱っているんです。それはまあ、ほとんど人任せですけど」
「じゃあ、汚れないのも知っているんじゃ」
あー、にやにやしそう。だめだめ、それって辺境伯夫人の顔じゃないわ。
「それは、メイドの仕事ですもの。私、存じません。ええ、実際に落としてみるまで、本当に染みが落ちるかなんて、そもそも汚れ自体染みていないなんて、わかりませんでしょう?」
おうっ、渋い顔。でも、もう約束したからね、ワルサさん。次は、なにをくれるのかな? 楽しみだなぁ。




