旅の空②
領内《回復》旅は順調だよ? 防寒さえしっかりしてれば、特に急ぐ理由もないしね。私がかけた魔法の効果範囲を確認しながら、ゆっくり進む。
私も、旅に出るまでの間、腰痛や打撲や切り傷を治してばかりいたわけじゃない。
庭の片隅に穴を掘って、気合を入れて《回復》すると、地形が戻ることを確認したり。菜園もどきを用意して、魔法の重ね掛けをしても、作物がいきいきするばっかりで害がないことを確かめたり。
まあ、毒見は屋敷で飼われてるウサギからはじまって、食えりゃなんでもいいって兵士たちや、メイドたちが率先してやってくれたし。実験設備の準備も、護衛のブロンゾやメイドのハンナが先回りして、私にはちっと手伝わせてくれなかったんだけど。ちぇっ、ちぇー! 姫様だって、たまには泥団子こねたりしたいよー。
そんなわけで、魔法の効果範囲に漏れがでないように、騎士や兵士が周囲に散って確認している間、私は移動しつつ魔力を回復。まあ、だいたい一晩寝れば大丈夫っていうか、そうなるように加減してる。一回から三回目までは、ちょっと失敗しちゃって、だいぶ心配かけたけど。
この魔法は基本的に、同心円状に広がるから、どうしても効果範囲が重複する部分がでてくる。実験で確認した通り、重なるぶんには問題ないし、光の届く範囲を調節するより、こっちの方が楽なんだ。それでも、あんまりかぶると魔力の無駄だし、効率がわるくなるわけで。
この旅の間は、大きな町か、街に宿泊。そうすれば全員、屋根の下で眠れるもんね。
騎士の中には、これも訓練だって野営したがる人もいたけど? クク先生とか、クク先生とか、クク先生とか。別に緊急事態でもないんだし、一般人時代の方が長い私としては、配下にさっぶい思いをさせながら自分だけぬくぬくって、罪悪感が半端ないのよ。
時々使えるサウナは極楽だね。
なにより、旦那様とずっと一緒にいられるのがうれしい。
とにかく忙しいワルサさんだけど、人を選び、仕事を割り振り、流れを確立させて、この旅に同行してくれた。わがまま言ったらいかんと思って、我慢してた分、よけいにうれしいよ!
代理を任されたギーブ君は、ひーひー言っているらしいけど、ワルサさんは、そう遠くないうちに君を領主にするってよ? いい経験だと思って、がんばって!
そうなると私は前辺境伯夫人ってことになるけど、跡目争いの勃発なんて勘弁してほしいから、ワルサさんの考えに、全面的に賛成してる。
彼のことだから、跡目を譲っても楽隠居なんてしてないで、あれこれ手伝ってそう。そしたら、私はそれを手伝うね。
まあ、先のことは先のこととして、いまを満喫しよう。うふふー、耳なでさせてー。
一つだけ不満があるとすれば、新婚直後から、離れて暮らすことになったせいか、ワルサさんの態度が夫というより、娘に対する親みたいになっちゃってることよ!
だっこも、頭なでなでも、そりゃあうれしいけど。私たち、夫婦でしょー? ちゅーしよ、ちゅー!
ちっがーう! でことか、ほっぺだけじゃなくて!
もうっ。キス一つでなんにも考えられなくさせる、エロエロ成分はどこへいっちゃったのよ?




