奥様のたくらみ②
新たなミスリル鉱山は、思った以上に埋蔵量があるらしく、うちの双子がおじいちゃんになるまでもつんじゃないかって言われてる。
この採掘事業は、流通にたずさわる商会、抽出・加工をする職人、魔道具を使用する国民、みんながウィンウィンウィン。
うちとしても、冬の間は主にギュベニュー辺境伯領の領民に、雇用という形で富を分配することができるし、春から秋にかけては、ヤラレタ王国の働き手をこちらに集結させることができる。
ケセラサ王国の中枢に許可を求めるのは家令に任せて、私は実家に手紙を送る。ちゃんとギュベニュー辺境伯夫人としてサインした正式なものだ。
折り返し返事がきて、そんなことをしたらヤラレタ王国内の農業が滞ってしまうとか、ごちゃごちゃ書いてあったから、「王都にあふれてる浮浪者を農民自身に安く雇わせて、畑を耕させたらいかが?」って、お上品に返しておいた。
人夫への給金をミスリルで支払うなら見逃すって言われてもねぇ。それはケセラサ王家の手前、できないって突っぱねるよ。ワタシ、イチ家臣ノ辺境伯夫人デスカラ。
だいたい、足元みてるのは私で、みられてるのは実家だよね。
そっちじゃ、高すぎる税を払えなくなった人たちが農地を捨てて、なんとか食い扶持をって王都にでたはいいけど、結局ホームレス。出稼ぎさせれば少しは納税率も上がるし、王都の治安回復にもつながるわけだから、なんの文句があるのかな?
まあ、王家が許可しようがしまいが、もう人の動きは止められない。こっちの感覚では最低限のやっすい給金でも、ヤラレタ王国の農民にしてみれば大金だ。闇のルートをたどってだって、こちらに流れてくる。
当然、給料はケセラサ王国のお金で支払われ、あとの流れは、工場の場合とおんなじ。ぐふふー。
なんでも、ヤラレタ王国内では、私のことを「慈愛の第二王女様」って言ってるらしいよ?
私が《回復》魔法を使ったことについては、実家が箝口令をしいてるらしいけど、まあ、噂を止めるなんて無理だよね。貴族たちの間でも、王家アホだな、って言われてるんだとか。
このままいけば、ヤラレタ王国にはどんどんケセラサ王国の貨幣が流入し、賠償金の支払いで、ヤラレタ王国の貨幣はケセラサ王家へ。
な~に、ないならつくればいいじゃないのって貨幣を増産、さらには改鋳にふみきってくれれば、ヤラレタ王国貨幣の価値はますます下がるって寸法。
まあ、むこうは大国。たかが一領主の、若奥様のささやかなたくらみなんて、湖に小石を投じるようなものだけど。
それで、なにかがどうにかなったら、私の夢に一歩近づくと思うんだけどな。
家令のイマージが言うには、ヤラレタ王国内には私を取り戻そうなんて、動きもあるとかないとか。おいおい。国の勝手で、人の幸せな新婚家庭を壊すなや。
先手必勝。とっくの昔に、お父への定期便には「なんか~みんなすごいすごいってほめてくれるんだけど~キララなんにも覚えてないのぉ」って書いといたんだけど、やっぱりそれだけじゃすまない大事なんだね。
ヤラレタ王国からは、王家はもちろん、会ったこともない貴族の子女からも、本当に私が魔法を使ったのか? 本当に《回復》の魔法だったのか? それはどれほどの規模だったのか? 里帰りの予定はないのか? 等々、問い合わせの手紙が送られてくる。
いやさ、人質が里帰りできるわけないでしょ。
当然「(意訳)なんも覚えてなくてさ~それよかそっちの生活いまどうよ?」って、ユリリアに代筆させてる。身内でもないのに、なんでも訊けば教えてもらえると思ってるなんて、前世の後輩みたい。甘いわ。どんなくだらない情報でも、対価をおよこし!




