できる妻①
新妻としては当然、夫に逢いに行きたい。けど、ちょっとそこまでって距離じゃないんだ、これが。付き合わせる護衛たちにも悪いから、帰ってきてからまた出かけるまで、三日はあけるようにしてる。
差し入れを持って行くのはもちろん、全員に《回復》魔法をかけてから帰るんだから、できた妻だと思わない?
力を加減する、その感覚をつかむためにも、屋敷でも毎日練習。腰痛からはじまって、包丁での切り傷、訓練での打撲。みんな実験につきあってくれてありがとう。おかげで過不足なく、魔法をかけられるようになってきたよ。
新しいミスリル鉱山は、いわゆる露天掘り。いまはひたすら広く浅く掘っているところ。天井がないから、想像してたような暗さや湿気は感じない。ただ、まあ、当然だけど埃っぽい。
精製前の鉱石は不純物の方が多くて、鉄のつるはしで掘ることが可能。でも、硬いは硬いよね。すっごい音してるもん。
これからどんどんすり鉢状に深くしていく。想像するだにすごい規模だよ。それというのもこの鉱脈、山としてでっぱっていた部分より低い位置に、広々と深く眠っていたらしい。
この分でいくと、街道の位置も大幅にずらさないとならないって。まったく忙しいとなると、際限ないもんだね。
ここで私が大魔法をつかったら、せっかく掘った大穴どころか、先の崖崩れもみんな元通り、なんてことがなきにしもあらず。ミスリルさんがこんにちはしなければ、それもありだったと思うけどね。
先は長い、がんばりすぎると死ぬぞー。念を込めながら、うっすらうっすら皆の疲れをいやす。手加減の女王とでも呼んでちょうだい。え? あっ、ちがった王女王女。
でも、いちばん最初に現場に行った時、私は手加減なしに怒ってしまった。
だって全員が、顏を布で覆うことすらしてなかったんだよ!?
誰が悪いって、現場監督だ。夫をつかまえて、説教だ! 私のあまりの剣幕に、ワルサさんはびっくり、どうやってなだめたらいいのかって感じで困惑してた。まあ、人前で年下の女に怒られたからってムッとするような男だったら、私も惚れてない。
大きくため息ついて自分を落ち着かせ、こんこんと理由を説いた。
ワルサさんが、子供の頃のことを思い起こし、私の言い分を認めてくれてよかったよぉ。途中から我に返って、これで疎まれるようになったらどうしようって、怖くなってたから。
昔、ワルサさんのお祖父様、お祖母様世代の人夫たちは、老境に入って、変な咳とだるさに苦しむことが多かったんだって。
粉塵を防ぐだけで、それが予防できるならって、息苦しいとか、暑いとか、まあ文句が出るのもわかるんだけど。それを何とか抑えて、とりあえず布で鼻と口を覆うように徹底してくれるって。
まあ、いまだったら、私が治してあげられるだろうけど、この魔法だって万能なはずがないし、いつまで使えるかもわからない。いやな想像だけど、私がずっと生きてて、ここにいられるって保証もないしね。
もちろん、これは応急措置だから、私は私でもっといい方法がないか考えるって約束をした。




