実力者にお願い④
「次に、お食事のことですが」
コック長のフクフが震えあがる。さっきからこの人、俯いてて目を合わせないのよ? 直視するのは無礼とか、いつの時代のお作法だろう。
「ワルサ様のお皿に、お野菜が少ないように感じたのですけど」
っていうか、全然乗ってなかった。スープの具も肉ばっかり。
ヤラレタ王国で供されたものは、ふつうに食べてた。視察に出たあたりから、嫌々なのが隠しきれなくなってたけど。
「体質的に、野菜が毒になるとか、そういうわけではないんですよね?」
三人が三人共、さっと顏を背ける。なにげに皆、仲いいよね? 押し付け合うような雰囲気があって、観念するのは女性がいちばん早かった。
「なさけない、旦那様。いまだに好き嫌いが治らないなんて」
意を決したように、身を乗り出す。
「キララ様からも、よくよく言い聞かせてさしあげてください。お体を健やかに保つためには、バランスよくお食事していただかなければならないと」
「そ、そうですよね! 私もそう思います」
思わずこちらも身を乗り出して、血管の浮いた手をとる。
「ワルサさんには、ぜひ長生きをしていただいて。のみならず、健やかな赤さんを授けていただかなければ!」
「え?」
意外にかわいらしい声を上げたスカレをおいてけぼりにして、私は興奮のあまり立ち上がり、握り拳をぶんぶん振ってた。
ぶほっ。って、吹き出したのコック長?
「し、失礼しま」
あら、ちゃんと笑えるんじゃないの。
呆気にとられた家令。頬を引き攣らせるメイド長。
この子、ほんとに意味わかって言ってんのかしら、とでも思われてるのかな? まあ、外見は七歳だからね。でも精神、大人だと九年なんて、あっという間だよ?
「あ、別に家督とか狙ってませんから。確かに、安心して暮らせる立場はほしいですけど。それを抜きにしても、ただむしょうに、どうしてもワルサさんの赤さんがほしいんです。想像してみてください。ほら、絶対にかわいいでしょう?」
口に出すのも恥ずかしいことだけど、絶対に叶えたいことは、宣言して後戻りできないようにしなきゃ。
「それには皆さんの協力が絶対に必要です。ご協力をお願いします!」
三人と順に目が合う。
私、真剣よ? 伊達や酔狂で、三回り近く年上の男を狙うわけじゃないんだから。
顔を見合わせたあと。三人が三人共、ぐっと、両手を握り拳にして見せてくれた。うん、私がんばる。
私がひと息ついたように、むこうもほっとしたみたい。そうだよね、どんなやつがやってくるかって身構えて当然だよね。
「くくくく」
「ふふふふ」
「あははは」
フクフ以外、口も開かず笑うなんて器用だね。やばい。私自身、口元がニヨニヨしてきた。
もちろん、これはきっかけでしかなくて。
彼らがいずれ、絶対的な味方になっていくのは、毎日、毎朝、意見を擦り合わせることを続けたおかげだと思うんだ。
一度も会ったことのないよそ様はそうはいかない。




