実力者にお願い③
「お世話をしていただいた感謝を伝えたり、その仕事ぶりを認めていると表現するのに、よい方法はないかしら?」
特に誰とも相手を決めずに問いかけると、心得たように家令のイマージがうなずいた。
「そのお心だけで十分なのです、キララ様。不遜な申しようになりますが、私共は、キララ様はじめ、旦那さまや坊ちゃまたちに、ご満足いただける仕事ができて当たり前。そのことに誇りを持っております。敢えてお伝えいただけるというのであれば、一言、ありがたく頂戴いたします。また、信頼して任せていただけるということが、何よりの励みになります」
「よくわかりました。これから、どんどん頼み事をしますね」
「お任せください」
胸に手を当てて頭を下げる。当然だけど、ワルサさんがする礼より深い角度。
「さっそく質問とお願いなのだけれど」
まずは、ワルサさんの服装について。
「喪はあけたとお聞きしていますし、もう少し明るい色目の、例えば水色に銀糸で刺繍した上着など、ご用意したらいいのではないかと思うのだけど、どうかしら?」
イマージとスカレの目がきらりと光る。反対、ではなく、我が意をえたりって感じよ。
「よろしいのではないかと思います」
「型紙は針子の手元にありますので、キララ様にその他の指定をしていただけたらよいかと思います」
予算は家令と要相談。でも、この分だと惜しまず注ぎ込んでくれそう。燃えるわ!
なんかね、ワルサさん、古風っていうか。服装とか小物にうだうだ言うのはよくないと思ってるみたい。
それをいいことに、好き勝手やったのが前の奥さん。亡くなった人のことをとやかく言うのは矜持が許さないみたいで、あんまりはっきりとは教えてくれなかったけど、いかにも貴族な夫婦関係だったみたい。私としては、よいことですけどね。
長い道中、大使や護衛騎士の皆さんにもさりげなくリサーチしたところ、クク先生がわりとざっくばらんに話してくれた。先生、あくまで見たまま伝えてくれるのは曲解のしようがなくてありがたいんだけど、女の心理に首を傾げながらってのはどうなの? いや、私も決して賛同はしないけど、その筋道くらいは想像がつくよ?
で、その奥さん。着飾った自分を引き立たせるために、ワルサさんに黒っぽい服装ばっかりさせてたっぽい。なんじゃそりゃぁぁ!
どうせ、ワルサさんの血筋目当ての結婚だったくせに! 初対面の時、まだあんたの喪に服してるのかと思っちゃったじゃないの!
肖像画に描かれたドレスとか装飾品とか、部屋の内装は趣味がいいだけに、よけいに腹が立つ。
前世でいうインフルエンザで亡くなったようで、若い身空で子供を残してなんて、それは同情するしかないけど。
でも、ひどい! むかぷんぷんな私の態度をどう思ったのか、ワルサさんは屋敷の回廊に並ぶ一族の肖像画から、元妻の絵を外してもいいって言ってくれたけど。なんの罪もない、子供たちのことを考えたらそれはできないよ。
むーん。私の胸中は複雑だけど、彼女の絵の前に小さな卓を置いて、いつでも花を挿せるように花瓶を置いておいてねと、スカレに頼む。
ほんの一瞬、動作をとめたメイド長だけど、しっかりと肯いてくれた。
「坊ちゃまたちを毎日お連れすればよいのですね」
「お願いね」
優秀なだけでなく情のある人だ。子供たちのためにもよかったよ。




