実力者にお願い②
すっごく興味があるけど、いま、ここで出自を問うのは止めておこう。
表面だけなぞっても意味がないようなわけがありそうで、聞いたらかえって距離ができちゃう気がするんだよね。
もっと親しくなれば、そういう機会もあるだろう。
「皆さんもご存じのとおり、私はヤラレタ王国で育ちました。ケセラサ王国の皆さんの習慣や風習をよくわかっているとは言えません。これまでのところで目に余ったことや、これだけは気を付けた方がよいということがありましたら、教えてください」
「では、僭越ながら私から」
メイド長が臆せず手を上げてくれた。
「先日、お茶の配膳をしたメイドに、茶菓子をお分けいただきました。お気持ちは大変ありがたいのですが、今後はお控えいただいた方がよいかと思います。なぜかと申しますと、我々ケセラサ人は、食料を集めづらい地に育つこともあり、食べきれる量だけを用意できるということが一つの技能なのです。配膳してすぐに、お手を付けられる前にくださったということで、そのお気遣い、当人も伝え聞いた私もきちんと理解しております。しかし、一般的に、余りを出すこと自体が不手際とされ、残した食料を与えられるということは誇りを傷つけられることでもあります。どうぞ、ご理解のほどをお願いいたします」
な、なるほど。
「理由まで丁寧にお教えくれて、ありがとう。これから、気を付けますね」
「いえ。年寄りが気を回しすぎかとも思うのですが。キララ様に瑕瑾があってはならないと思い、申し上げたしだいです」
厳しいけどやさしいってタイプなのかな。杓子定規かと思いきや、しばらくは見守ってくれる余裕もあるみたい。
メイド長ともなれば、うっかりなんてまずしないだろうから、わざと聞かせてくれたのかな? 「まったく近頃の若いメイドたちは」というつぶやき。どこの世界もジェネレーションギャップはあるらしい。プライドより、甘いお菓子をもらった方がいいわ、と。あのメイドさんは、純粋によろこんでくれたようだ。
でも、これで、お菓子ばら撒き作戦はできなくなった。
メイド長はあくまで表向きの規則を言ったのであって、こっそりやるぶんには平気なのかもしれない。
でも、せっかく忠告してくれたんだし、味方にするなら有象無象より、このメイド長の方がいいに決まってる。




