騎士と線③
「むきになられているわけではなさそうですね。理由をお伺いしても?」
「ええ。理由は二つあります。一つは、彼女の動きが武人として美しいこと。そうとうな使い手とお見受けします」
「そうですね。我が領において、槍の扱いで彼女の右に出る者はいません」
無表情ながら、ふんす、って鼻息が聞こえてきそう。耳もぴんとして、すごいうれしそうだ。
そうか、ワルサさんのところの騎士なんだね。ならば、ますます教わりたい。
「二つ目は、彼女が女性だからです」
途端に、ムッとした雰囲気。
ワルサさんは、どんな感情も見せずに問いかけてくる。
「同じ女性だからですか?」
「はい、そうです。男性と女性とでは、体の構造が違います。有利不利を言っているのではなく、これは単なる特徴です」
「うん?」
うん。ワルサさんは、この騎士をやたらの男より強いって認めてるもんね。
ぴんと来ないようなので、その辺の棒を拾って、地面になるべくまっすぐ線を引いた。せいぜい十歩歩くくらいの長さ。雑草の芽が顔を出していたり、小石が落ちていたりして、ちょっこし歪んでるけど。
「こうして、足の角度を線と平行に、なるべく線が足の中央になるように」
私はその線にそって、なるべく速足で歩いて見せる。つまり、平均台の上を歩く感じだね。
「これ、彼女も簡単にできると思いますよ?」
挑むように言えば、さっとやってみせてくれる。うん、ちっとも体が揺らがない。重い装備を身につけてるのに、すごい体幹。
「そちらの同僚の方、ワルサ様もよろしかったら、挑戦なさってください」
二人の男が、順に歩く。子供の言うことと馬鹿にせずに、真剣に取り組んでくれる。いい人たちだなぁ。
「なんとなく、わかった。いえ、わかりました」
「キララ様。解説をお願いします」
右手を胸に当ててかしこまる。ワルサさん、ノリいいね。




