機会
機会は、思ったよりずっと早くやってきた。
私のお披露目を三週間後に控えたその日。自国が戦争で負けたのだ。やっとかぁ。思わなかったといえば嘘になる。
なんで私が、こんなのん気にしていられたのか? 戦闘が、緩衝地帯の荒れ地で行われていたからだ。被害は双方に同じくらい出たらしいが、こちらの総指令、現王の姉が負傷して投降。降参したと。
たくさんの天使様が、戦場と天上を何度も行ったり来たりしたのかと思うと申し訳ない。老衰や病気ならまだしも、人間の勝手で疲れさせてすみません。
さて。
我らがヤラレタ王国を下した隣国は、ケセラサ王国という。なんだかんだ、政治体制は似ている。でも、あんまり王族や貴族が威張ってないみたい。
戦後対応も穏やかで、捕虜は無条件で返してくれるらしい。いっつも身代金がっぽり取ってた、うちってなんだろうね?
あちらが要求してきたのは戦費、戦死者と負傷者への補償だけ。しかも今回の戦争に限った上、分割払いも認めている。
ただし、今後このようなことがないように、王族一人、人質に寄越せと。まあ、当然だわな。
ヤラレタの首脳陣。恥知らずなりに、こっちから仕掛けて負けたんだから、領土の五分の一くらい要求されることを覚悟していたようだ。ほっとしたせいか、敵を甘く見て、侮蔑的な発言が、私の耳にすら入ってくる。まったく、こりてないね。
で、人質の件だけど。王太子と、スペアの第二王子は当然、除外。それ以外の兄弟姉妹は、言い方は悪いが、こんな時のために飼われてるわけで。
多少揉めたようだけど、早々に第一王女と決まった。反対した貴族は、彼女の《ファイヤーボール》の才を惜しんだみたい。まだ、戦争やる気か!
結局、王妃が、誠意を示すならそれだけ価値のあるものをって、押し切ったんだとか。
まあ、第三王子でも向こうはかまわなかったみたいだけど、頭が幼すぎてわけがわかってない。敵国に行っても、母国に有利になるよう立ち回れと、期待されてるようだよ、お姉ちゃん。
他人事のように言ってる私も、候補にあがることはあがっていた。もう七歳になろうというのに、魔法の才に恵まれないできそこないを装ってる。厄介払いができると考えられてもしかたない。
むしろ、そう思えって念を送ってたんだけど、届かなかったか。でも、まだあきらめてないからね。




