プロローグ1:虎牢関の戦い
この物語は三国志演義を基に作成しています。もはや三国志はあまり関係無いですが、一応……。ちなみに、すこーしラブコメ風味ですが、コメディー寄りの内容です。
西暦百九十年。
袁紹を盟主とする反董卓連合軍は、洛陽より五十里。天険の要塞、虎牢関で董卓軍と対峙した。
十万の兵を置けば、天下の諸侯は通路を失うと言われる虎牢関。
董卓軍はそこを十万どころか、一.五倍の、十五万の兵で守備をしているのだ。
そしてそこには、かの有名な呂布奉先がいる。
この状況には、連合軍も頭を悩まさずにはいられなかった。
「呂布か……」
「はい。人中の呂布とも言われる豪傑です。華雄の時みたいに関羽が討ち取ってくれる。とも思えません」
「そうよね……」
連合軍の総本部であり、作戦会議を行う陣の中。連合軍参謀、曹操は悩んでいた。
いかに虎牢関を攻略するか。もそうなのだが、それよりもまず呂布をどうするか。と、ただただその事を考えている。
「オーッホホホ! そんなに悩まずとも、たかが呂布など我が軍が蹴散らしてご覧にいれますわ!」
「「さすがお嬢様です!!!」」
「袁紹、顔良、文醜。あんたらさっきからうっさいのよ。少し黙っててくれる?」
「曹操!!! この名族たる袁本初に向かってその口の聞き方はなんですの!!!」
袁紹は作戦会議の時もそれしか言わず、結局会議は中断。その為、曹操がこうやって一人で考えさせられる羽目になった。
曹操はその事で……、だけでは無いが、袁紹に対して大分苛立っていた。
「うるさい人間にうるさいと言って何が悪いのよ! そもそもあんたのせいで−−」
「−−曹操様っ! ……今は呂布をどうするかを考えるべきかと」
先程まで曹操と話し合っていた人物が曹操を諌める。
「……そうね、ごめん。ありがとう、劉備」
そうだ。今はこんな能無し盟主に構っている暇なんて無い。
曹操は冷静さを取り戻し、劉備という男に向かって礼を言った。
「いえ。そういえば公孫讃殿は……?」
劉備はふと問い掛けた。
「公孫讃殿なら、浪人が尋ねてきたとか何とかで……」
「浪人?」
「ええ。趙雲とかいう名前の」
「趙雲……。ですか……」
趙雲。
劉備はその名前になにか引っ掛かりを覚えつつも、さて。と話を続ける。
「呂布に正面から当たっては負けるとは言いませんが、勝てるとも言えません。ましてや我が軍は袁……団結に欠けます。ここは、策を講じて倒すのが、よいかと」
「袁紹のせいで団結に欠けるのね」
曹操は肩を竦めながら、先程から横でファッションショーをする三人を見る。
そしてフッ。と鼻で笑った。
「策……ね。なら、郭嘉でも呼ぶのがいいかしら?」
「ええ。郭嘉殿ならば、良き策を思い付−−」
ジャーン。ジャーン。ジャーン。ジャーン。
鳴り響く銅鑼の音。
「呂布が攻めてきたかっ! 誰か! 鎧をもて!」
「では私も自陣に戻ります。話はまた後ほど」
何回聞いても好きになれない銅鑼の音。
劉備は戦争を無くす為に戦争をする自分に嫌悪しつつ、渋々自分の陣営に戻っていく。
袁紹も銅鑼の音を聞くや否や、素早く鎧の用意をさせる。
普段は我が儘お嬢様の袁紹も、いざ戦争になるとその指揮官としての能力をいかんなく発揮する彼女。
その為、曹操も袁紹に対して中々文句を言えずにいるのだ。
「顔良、敵の数は?」
「およそ五千です、袁紹様」
「五千……。おおよそ我が軍の実力を確かめにきた。という所でしょうか」
「ええ、おそらくは。では袁紹、私も自陣に戻り戦の準備を致します」
「分かりました。また何かあったらここにいらして下さいね」
曹操は、袁紹がいつもこの調子なら。と思いつつ、自陣へと戻っていく。
その目はギッと研ぎ澄まされていて、それは言わば戦人の目だった。
−−公孫讃陣営−−
それは劉備が陣に入るのと同時だった。
「兄上! 呂布が攻めてきました!」
「うわっ! ああ……、関羽か。その事なら既に知っている」
「いよっしゃー! いよいよあの呂布と戦えるのかー!」
「おい張飛、遊びじゃないんだぞ」
毎度ながら、張飛のこの戦好きの性格はどうにかならないのか。
こんな若くて美しい女が戦、戦と言っているのは、時代がそうさせているのだろうか。
だとすれば、なんとしてもこの群雄割拠の時代を終わらせなければ。
劉備はそう思うのであった。
そこで劉備は陣の中に公孫讃の姿を見つける。クスクスと笑いながら張飛とのやり取りを見ている彼、公孫讃。
一兵卒に過ぎない劉備、関羽、張飛の世話をしてくれたのは他でも無い、彼だった。
と、劉備はある事に気付く。
「ん、公孫讃殿。そちらの方は……?」
劉備は公孫讃の隣に居る、長い槍を持つ少女を見ながら尋ねた。
しかし劉備は、公孫讃に尋ねると同時に先程曹操が言っていた事を思い出す。
そういえば確か、公孫讃殿の下に浪人が訪ねてきていたとか……。確か……名前は……。
「もしやその方が趙雲……?」
「その通り。彼女の名前は趙雲子龍というんだ」
そう言って公孫讃は趙雲の肩をポンッと叩いた。
「趙雲子龍だ」
愛想が無いなぁ。
劉備は心の中で叫ぶ。
「はじめまして。私は劉備、字は玄徳」
「ああ、知っている」
知っている? 私の事を?
どこで知ったんだろう……。
「兄者ー。今はそんな事より呂布を何とかしようよー」
「張飛の言う通りです、兄上。早く戦の支度を」
「あ、あぁ。分かった」
しかしその疑問は、張飛と関羽の催促で吹き飛んでしまった。
劉備は関羽から剣を受け取り、それを腰に付けた。
「よし、相手は呂布だ。とにかく死なないように頑張ってくれ」
「はい」
「分かりました」
「まかしといてー!」
公孫讃の言葉に劉備、関羽、張飛が順に返事をする。
「では関羽、張飛。いくぞ!」
「はいっ! 兄上!」
「おっけー!」
そして劉備、関羽、張飛の三人は戦場へと赴いていった。




