元彼はプレーボーイ
いよいよ、文化祭当日を迎え、栞那は大忙し。そんな時、大和の行動に異変がー。
文化祭当日。 準備で、あたしも大和も大忙し。
「栞那、まだ用意してないの?あたし、ヘアーメイク担当だから、こっちに来て!」
自分の準備も忘れて、あちこち動いていたら、クラスメートの奈緒が、あたしの腕を掴んで衣装室に連れて行った。
「じ、自分で、できるから大丈夫だよー」
「いいからいいから。じっとしててね!」
奈緒は、メークしたり、着替えさせたりと手際がいい。
何分か経って、やっと出来上がった。
「はい!完成~」
奈緒は、鏡を見せた。
顔は青白く、あたしの肩までの髪は逆立っている感じで、服装も真っ白な着物だ。
「どう、あたしの腕前は?何処からどう見てもお化けそのものでしょ~」
奈緒は、自信満々そうに言った。
「お~い。もうすぐ時間だから、自分の持ち場について!」
大和が、みんなに呼びかけた。
あたし達が、衣装室から出て行くと、
「びっくりした!相沢か~」
大和が、ドキッとした顔で、胸を押さえた。
「大和君!どう?怖そうに見えるでしょ~。あたしが、してあげたんだぁ~」
横にいた奈緒が、あたしのお化け姿を大和に見せた。
「すげー上手!絶対、みんなびっくりするよ」
「ちょっと、大和君も、まだ、用意してないじゃない!」
奈緒に言われて、大和もあたしと同じく、衣装室に連れて行かれた。
1分もかからないうちに、大和が衣装室から出てきた。
大和の格好は、吸血鬼そのものって感じだ。
か、格好いいー。
「きゃあ~!大和君、かっこいい~!」
「大和君に血を吸われた~い!」
またまた、女子達が大騒ぎ。
お化け屋敷なのに、みんな怖がるどころか、みんな寄ってきている。
「奈緒、あれじゃ、お化けの役目果たせないじゃない」
あたしは、大和をチラッと見る。
「大和君は、呼び込みだから、いいみたい」
「……」
確かに、客引き寄せなら、人が集まるかもしれない。
女子達に囲まれている大和を見て、何だか、胸の奥がチクンとした。
時間になると、みんな気合いを入れて、自分の仕事についた。
お客さんは、女子が多いかなと思っていたら、結構、カップルが多く、みんなキャーキャー言っている。
始めは、お化け役は乗り気じゃなかったけど、怖がってくれるお客さんもいて段々、驚かすのも楽しくなってきた。
黒幕に隠れて、次のお客さんが来るのを待っていたら、急に首筋がヒヤリと冷たい物があたった。
「ひゃっ!」
あたしは、びっくりして、何かにひっしにしがみついた。
な、な、何今の?まさか、本物のお化け!?
あたしが怖がっていると、
「相変わらず、怖がりだな~。相沢は」
大和の声が聞こえてきた。
「……!!」
あたしが、ひっしに掴まっていたのは、大和だった。
「ごめん。今の、俺がこんにゃくで驚かしたんだ。あはは~!でも、そんなに驚くとは思わなかったな~」
大和がおかしそうに笑った。
「酷いよ!あたし本当に怖かったんだから」
あたしは、肩を叩くみたいに、夢中で大和を叩いた。
「いてて……。謝ってるだろ?」
大和が、あたしの腕を掴むと、あたしの顔を見つめた。
ドキン!
あたしと大和の瞳がぶつかる。
大和は、そっと近づくと優しくあたしの唇にキスをした。
……!!
あたしは、何が起こったのか把握できないままでいた。
「大和~!交替の時間だけど、どこに行った?」
クラスの男子が、呼んでいるのが聞こえてきた。
「交替の時間だってさ。相沢、着替えてこいよ」
大和は、何もなかったように行ってしまった。
あたし、大和とキスしちゃった……。付き合ってた頃も、大和とキスをしたことがあった。でも、あの時とは違う……。
大和の温かい唇の感触が、あたしの唇にいつまでも残っていて、何だか心地よい感じだ。
大和は、どうしてあたしに、キスしたの?
あたしの胸がキュ~ンと切ない気持ちになった。
「……」
あんなことがあって別れたのに、まだ、あたし大和のことが好きなんだ……。
文化祭最終日。
「相沢さ~ん!サービスするから、うちのクラスにも遊びに来て」
葉山君が、自分のクラスの前で、ホストの格好して呼び込みしていた。
「休憩時間に行くね」
あたしは、ぎこちなく言う。
まだ、大和のことが好きなことに、気づいてしまったのに、こんな気持ちで、葉山君と付き合うなんてできない。文化祭が終わる前に、断ろうー。
「やっと休憩~」
お化けの格好するのも、楽じゃない。メークを落として着替えて髪を整えてと、やることがいっぱい。
「相沢ー」
準備が終わって、葉山君のクラスに行こうとした時、大和があたしを引き止めた。
「あのさー、一緒に回らないか?」
「いいけど……」
あたしは、少し戸惑った。
だって、たちまち休憩時間の女子達が、
大和の周りに、集まって来たから。
「大和~!あたしと一緒に回ろうよ」
「あたし達と回ろう!」
次々に、言い寄られた。
これじゃ、一緒に回るなんて、無理みたいだ。
あたしは、溜め息をつくと、教室を出た。
葉山君のクラスの前まで行ったものの、入るのを戸惑っていると、クラスの男子があたしに気がついた。
「君、お客さん?入って入って!」
「えっ、あの。葉山君に話ー」
葉山君を呼んでもらおうと、慌てているうちに、男の子に背中を押されて、教室に入ってしまった。
葉山君を連れ出して、告白の返事を断ろうと思っていたけど、そうもいかないみたいだ。
「誰を指名しますか~?」
男の子は、馴れ馴れしく、あたしの肩を抱いた。
あたしが、戸惑っていると、
「栞那!来いよ」
誰かに、不意に後ろから腕を掴まれて、そのまま教室を出た。
あたしが、振り向くと、相手は大和だった。
確か今、「栞那」って……。
「葉山なら、他の所にいるの見かけたぜ」
あたしが、何も言わないうちに、大和は口を開いた。
「じゃあ、捜してくる」
あたしは、大和の手をふりほどこうとした。
「行くなよ……」
大和は掴んだ手を、緩めようとはしなかった。
「離して……」
少し強めの口調で言ったけど、大和は手を離してくれない。
「どうしても、行くなら……、俺もついて行く」
「な、何言ってるの?告白の返事を返しに行くのに、た、高崎君が来たら変に誤解されちゃうじゃない」
まだ、大和を好きな自分がいたのはわかった。でも、昔のこともあるし、付き合いたいか聞かれても、すぐに答えは出てこない。それなのに、大和が一緒に行ったら、葉山君に断るのは、大和と付き合いたいからだと、誤解されるかも知れない。
「行こう!」
あたしの言葉を無視して、大和は手の力は緩めず、あたしを強引に引っ張って行く。
昨日のキスといい、大和はどういうつもりなんだろうー。
「確か、この辺りで見かけたんだけど」
しばらく歩て、視聴覚室まで行くと、急に大和が立ち止まった。
「あ、ねえ!この辺で葉山見かけなかった?」
大和が、近くにいた葉山君と同じクラスの子らしき女子達に、声をかけた。
「大和君!葉山君なら、理科室に入るの見たよ~」
女の子達が、次々と口をそろえた。
「サンキュー」
大和が、礼を言う。
「大和君~。今度、デートしようよ」
独りの子が、大和のことを知っているらしく、親しげに声をかけた。
「また、今度ね~」
大和は、さらっとかわして、理科室に向かった。
中学の時も、モテたけど、廊下では、他の子に声をかけられたりはしなかった。でも、裏では二股かけられていた。それなのに、今はそれ以上にモテててるし、付き合う女の子は、二股どころか三股になりかねない。
あ~、昔の嫌なこと思い出したー!
あたしは、何だか不機嫌になってきた。
「どうしたの?栞那」
また、大和があたしを呼び捨てに呼ぶ。
「さっきも思ったんだけど、高崎君に呼び捨てにされる覚えないんだけど。それに、昨日だっていきなりあんなこと……」
「あ~。キスしたことか」
大和は、ケロッとした顔をしている。
「今でもそうやって、誰にでもそんなことしているんでしょ?」
自分で言いながらも、ギュッと胸が締め付けられる。
「俺は、今も栞那のことが好きだからキスしたのに……。本当に、そんなこと思っているのか!?」
急に大和は、真剣な顔であたしを見る。
「……!そ、そんなこと言われても……。二股かけてた人の言うことなんて……」
信じられるなら、大和と寄りを戻してもいいと思ってるのに。
「本当は、二股かけてないって言ってもか?」
思いがけない言葉に、あたしは戸惑う。
「い、今さら、何言ってるの?信じられるわけないじゃない。まあ、証拠でもあれば別だけど」
証拠なんて、あるわけがない。あの時、2人で腕を組ながら歩いているの、この目でちゃんと見たんだから!
「わかった。本当に証拠があればいいんだな?」
大和は、確かめるように聞いてきた。
「う、うん……」
あいまいに、あたしは頷いて見せた。
「わかった!日曜日、証拠を見せるよ。1時にさくら公園の前で待ち合わせな!」
大和は、あたしの返事も聞かずに、話を進めていった。
よほど、自信があるのだろうか。大和は、自信満々そうな顔をしている。
証拠があるのに、また、証拠なんてあるわけがない。
そんなことより、今は葉山君を捜しているんだった。
あたしは、大和を無視して理科室に行った。
理科室の前で立ち止まると、ノックをした。
「は、葉山君。いる?」
あたしは、ガラッとドアを開けた。
すると、ちょうど葉山君が着替えをしている最中で、シャツを脱いでいた。
「あ、ごめん!」
あたしは、慌ててドアを閉めた。
ちょっと待って、チラッと見ただけだけど、葉山君の胸が膨らんでたような……。もう一度、確かめないと。
あたしが、そっとドアを開けようとした時、ガラッとドアが開いて、葉山君が出てきた。
「あ~あ。見られちゃったかな?」
葉山君は、がっかりした顔をした。
「あたしの見間違いだったら、ごめん……。まさか、葉山君って、お、お、女の子だったの?」
あたしに聞かれて、葉山君は頷いて見せた。
「当たり!実はオレ、女なんだ」
「えっー!」
あたしは、びっくりして、言葉に詰まった。
「お前、女だったんだ~」
後から来た、大和もびっくりしている。
「ど、どうして男の子の格好しているの?」
あたしは、言葉を振り絞って聞いてみた。
「他の子みたいに、可愛い洋服着たりするのは嫌いだし、気がついたら男の子の服ばかり、選んで着るようになって。次第に、心の中も男なんだって気づいたんだ」
あたしには、なかなか理解できないものがあるみたいだ。
「こんなオレとは、やっぱり付き合えないかな?」
「ごめんなさい……。ちゃんとした男の子だったとしても、断るつもりでいたし」
あたしは、きっぱりと言った。
「そっか。そうだよなー」
葉山君は、がっかりさせながら、公園の入り口の所で立ち止まった。
あたしバカみたい……。どうして、走ってるのよ。
「栞那ー!遅いぞ」
大和が、あたしに向かって軽く手を上げた。
大和の横には、花柄の可愛いワンピースを着た女の子が立っていた。
どこかで、見たことがあるような……。
あたしは、その子の顔をまじまじと見つめた。
「……!!」
そうだ、思い出した。昔、大和とデートしてた子だ!!この子と二股かけてたせいで、別れたんだから!
「ど、どうしてこの子がいるの?」
あたしは、眉をひそめた。
まさか、大和が外国に行った後も、まだ続いていたとか!?
あたしは、愕然と2人を見つめた。
「こいつ、仲森佐月」
大和は、平然とした顔で紹介した。
「……」
あたしのこと、好きとか二股かけていない証拠とか言っておきながら、また同じことをするとか!?
「栞那さんですよね?大和君から聞いてますよ~」
佐月ちゃんが、大和の腕に手を回した。
証拠なんてあるわけがないと思いつつ、のこのこ来てしまった自分がみじめに感じて、情けなくなってきた。
「この子とまだ、続いていたんだ?結局、証拠なんてないんじゃない……」
「えっ!いや、違っ……」
大和が慌てて、あたしの肩に手をやった。
「触らないで!」
あたしは、大和の手をはねのけた。
あたしは、だんだん冷静ではいられなくなってきた。
「あたし達、とっくに別れているんだから、あなた達が付き合っていようと、関係ないけど、あなたも気をつけなさいよ!こいつには、他に付き合っている子がいるかも知れないから」
あたしは、佐月ちゃんに向かって忠告した。
「栞那、勘違いだって!こいつ大体、男だし」
「嘘!そんなこと言って、また同じこと……」
あたしが、言いかけているのに、大和があたしの手を掴むと、佐月ちゃんの胸に触れさせた。
触れてみると、板みたいに平らだ。
「お、お、男ー!?」
あたしは、素っ頓狂な声で叫ぶ。
「本当ですよ。そんな大きな声で驚かれると、恥ずかしいー!帰ります」
佐月ちゃんが、顔を真っ赤にしながら手で顔を覆い隠しながら、走っ行ってしまった。
そこら辺の女の子より、よっぽど女の子らしい。葉山君といい、どうしてあたしの周りはそんな子ばかりなわけー?
「だったら、どうして教えてくれなかったのよ?」
「昔、何回か言おうとしたけど、全然話を聞いてくれようとしなかったのは、栞那だろ?」
「……」
確かに、大和は何か言いたそうだったけど、頭にきていて、話を聞く気にもなれなくて、あたしから別れることにしたのに、あたしの勘違いだったなんてー。
謝るしかない。
「ふ、二股かけていなかったんだね……。本当に、ごめんなさい!」
とにかく、誤解も解けたことだし、あたしは、素直に謝った。
「本当に悪いと思っているなら、キスしてくれたら許す」
大和は、少しいばった感じで言った。
「えっ!こんな所で!?」
あたしは、思わず回りをチラッと見た。
結構、カップルも多く、イチャイチャしている人達もいる。
「ほら、早く!」
大和にせかされて、仕方なくあたしは、大和の唇に軽くキスをした。
「ダメダメ。こうやるの!」
急に大和は、あたしを抱きよせると、キスをした。
それも、濃厚なキス!いつこんなキスを覚えたわけ!?
あたしが、ボーとなりかけた時、大和があたしから身体を離した。
「疑いもはれたし。もう一度、俺の彼女になってくれる?」
大和が、真剣な瞳であたしを見つめた。
「そうねー。どうしようかなー」
あたしは、少し考えるふりをした。
「考えなくてもわかるだろ?栞那だって、俺のこと好きだって言っていたじゃないか」
大和が、あたしのおでこに自分のおでこをくっつけた。
あたしの心臓がドキドキと高鳴った。
「か、彼女になってあげてもいいけど」
あたしは、すました顔で言った。
「良かった~!」
「でも、その前に条件があるの」
「ん?」
大和は、少し首を傾げる。
「あたしか勘違いするような行動はしないって、約束して」
大和は、佐月ちゃんが男の子だったから良かったけど、とにかく大和は女の子にモテるし、大和がその気じゃなくても、腕を組まれて歩いたりしたら、こっちの身がもたない。
「わかった。約束する!勘違いするようなことはしない。他の女に言い寄られて、一緒に遊びに行ったりしたら、勘違いするもんな」
大和は、ふむふむと頷いた。
「言い寄られてって……、誰かに言い寄られているわけ?」
あたしは、大和の顔を覗き込んだ。
「た、例えばの話だから」
大和は、焦った顔をした。
その顔が面白くて、あたしは、思わずぷっと吹き出してしまった。
その後、大和もつられて吹き出して、あたし達は顔を見合わせて笑った。
大和とこうやって笑うのは、久し振りだ。
いつまでも、公園にあたし達の笑い声が響き渡ったー。




