表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マナ・スクランブル!〜借金返済のため、天才魔術銃士と脳筋剣士は今日もノンストップで大暴れ!〜  作者: 牧野ハル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/13

第13話:迫るタイムリミット! 王都まであと2日

「……ねえ、レオン。あたしの髪、まだ焦げ臭い?」


「ん? おお、見事な炭火焼きの匂いがするぞ! 腹が減ってくるな!」


「食欲の対象にしないでよ!! あたしは乙女なの! 美少女なの!」


第十一層の灼熱ボイラー区画を辛くも、そして最高に不本意な姿で突破したあたしたちは、現在、第十二層『中央連絡通路』を無言で……いや、あたしの愚痴とレオンのズレた慰めを響かせながら歩いていた。


手鏡に映るあたしの姿は、相変わらず悲惨の一言に尽きる。


ボイラー室の熱波でチリチリに焦げた髪は、見事なアフロヘアー、プードル風をキープしており、服のあちこちには前の階層で浴びた強酸のせいで小さな穴が空いている。おまけに顔は煤だらけだ。


「ピキュ。マール、文句ヲ言ッテモ毛根ハ復活シマセン。今ハ任務ニ集中スベキデス。……ソレニシテモ、見事ナ爆発頭デスネ。鳥ガ巣ヲ作リソウデス……ププププ……」


「アンタもいちいちイジってこないで! ああもう、絶対にあのインテリ眼鏡をブチのめして、超高級サロンでのトリートメント代を請求してやるんだから!!」


あたしが頭を抱えて地団駄を踏んだ、その時だった。


ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!


突如として、要塞全体を揺るがすような、凄まじい地鳴りと振動があたしたちを襲った。


「きゃあっ!?」


「おっと! 随分と激しい揺れだな! 地震か!?」


あまりの揺れに、あたしは床に這いつくばるようにして姿勢を低くした。レオンは大剣を杖代わりにして、平然と立っている。


単なる地震ではない。


要塞そのものが、まるで巨大な獣が咆哮を上げるかのように、内側から激しく脈打っているのだ。


「ピキュキュキュキュッ!! 警告! 警告!!」


レオンの頭の上で、ナビコのアンテナがかつてないほどの激しさで赤く明滅を始めた。


「な、なんなのよ! 今度は何が起きたの!?」


「ピキュ! 要塞ノメインエンジン出力ガ、通常ノ三百パーセントニ跳ネ上ガリマシタ! コレハ……『オーバードライブモード』デス!」


「オーバードライブモードぉ!?」


嫌な予感しかしない単語に、あたしの顔から血の気が引いた。


「ピキュ! 現在ノ進行速度カラ算出……! 王都到達マデノ予測タイムリミットガ大幅ニ短縮サレマシタ! 到達マデ、アト『四十八時間』デス!」


「よ、四十八時間!? たったの二日!?」


あたしは素っ頓狂な声を上げた。


ギルドマスターから依頼を受けた時は「あと数日」と言っていたはずだ。それが、いきなり二日にまで縮んだというのか。


「ガハハ! それは一大事だな! 王都がペシャンコになれば、王様も無事では済まんぞ!」


「王様なんてどうでもいいのよ! 王都が潰れたら、あたしが通い詰めてる大通りの絶品ケーキ屋さんも、お気に入りのブティックも、冒険者ギルドのツケも……いや、ツケが消えるのはちょっと惜しい気もするけど……とにかく! あたしの愛する王都の平和と便利な生活が消し飛んじゃうじゃないの!!」


それに、とあたしはハッとした。


「……王都が滅んだら、この要塞を止めた報酬、誰が払ってくれるのよ!?」


「ピキュ。……タブン、誰モ払エマセンネ。国庫モ銀行モ、全部瓦礫ノ下デスシ」


「うわああああああああっ!!」


あたしは頭、というよりアフロを抱えて絶叫した。


国家が滅びれば、あたしたちの借金を帳消しにしてくれるという約束も、スナイダーから慰謝料をむしり取る計画も、すべてがパアになる。


ただの「森を爆破した重犯罪者、借金持ち」として、荒野を逃げ惑う人生が確定してしまうのだ。


「冗談じゃないわよ! あたしの輝かしい未来を、こんな鉄屑に潰されてたまるもんですか!」


あたしは両目の奥に業火を燃やし、ガバッと立ち上がった。


「レオン! 行くわよ! もうエコだの節約だの言ってる場合じゃないわ! 何が何でも、四十八時間以内にこの要塞のコアをぶっ壊すわよ!!」


「オォォォッ! まだ見ぬ絶品ケーキのために! 行くぞマール!」


「アンタの目的はそれじゃないでしょ! まぁいいわ、走るわよ!!」


あたしたちは、かつてないほどの猛スピードで、主に金銭的な焦りに突き動かされながら、連絡通路を駆け抜けた。


「ピキュ。前方、中央エレベーターホールニ到着シマス。ココヲ抜ケレバ、要塞ノ上層部、中枢エリアヘト直通デス」


ナビコの案内に従い、分厚い隔壁を抜けたあたしたちの前に、巨大な空間が広がった。


天井が見えないほど高い吹き抜けのホール。その中央には、上層へと続く、まるでひとつの塔のように巨大な『メインエレベーター』のシャフトがそびえ立っている。


「よし! あのエレベーターに乗れば、一気に黒幕のところへ行けるのね!」


あたしが歓喜の声を上げて踏み出そうとした、その時。


『侵入者ヲ確認。コレヨリ、絶対防衛プロトコルヲ実行。排除、排除、排除』


ホール全体に、地を這うような重低音のアナウンスが響き渡った。


ガションッ! ガションッ! ガションッ!


エレベーターシャフトの前に広がる空間。そこに、床や壁の隠し扉から、無数の巨大な影が次々とせり出してきた。


「な……なによ、あれ……」


あたしは絶望的な光景に足を止めた。


今まで戦ってきた人型の防衛ゴーレムではない。


それは、キャタピラで移動する巨大な鋼鉄の塊――全身に機関砲や魔導ミサイルポッドをハリネズミのように備えた『重装甲・殲滅型ゴーレム』の部隊だった。


それが数十体、何重もの横隊を組んで、エレベーターへの道を完全に塞いでいる。


さらに悪いことに、彼らの前方には、分厚い半透明の光の壁……『高密度・多重魔法障壁マルチ・イージス』が、何層にもわたって展開されていた。


「ピキュ。上層部ヘノ最終防衛線デスネ。……ハッキリ言ッテ、要塞攻略戦レベルノ布陣デス。アレヲ正面突破スルノハ、軍隊デモ不可能デ――」


「退路はないわ!!」


あたしはナビコの言葉を遮り、両手の魔銃『カノン』と『フリューゲル』を抜いた。


「四十八時間! あたしのケーキと報酬が潰れるまで四十八時間しかないのよ! あんな鉄壁、一秒でぶち抜いてやるわ!!」


「ガハハ! その意気だマール! 俺が道を切り開く!」


レオンが雄叫びを上げ、単騎で重装甲ゴーレムの陣形へと突撃を開始した。


『目標捕捉。全砲門、一斉射撃、フルファイア』


直後、数十体のゴーレムから、凄まじい弾幕が放たれた。


炎の弾、氷の矢、風の刃、そして物理的な徹甲弾。ありとあらゆる攻撃が、暴風雨のようにレオンへと襲い掛かる。


「おおおおおッ!!」


しかし、レオンは一歩も引かない。


彼が身の丈ほどもある大剣を、プロペラのように超高速で回転させると、全ての弾幕が「ガガガガガッ!」という火花と共に弾き飛ばされていく。


物理攻撃だろうが魔法攻撃だろうが、すべてを腕力と剣圧だけで相殺する、完全に理を外れた荒業だ。


「遅い、遅いぞ! その程度の弾幕で、俺の歩みは止められん!」


レオンは弾幕を強引に押し返し、最前列の魔法障壁へと到達した。


そして、渾身の力を込めて大剣を振り下ろす。


ズガァァァァァァァンッ!!!


強烈な衝撃波。


第一層目の魔法障壁が、パリンッとガラスのように砕け散った。


「やった!」


あたしが快哉を叫んだのも束の間。


『障壁修復。第二陣、砲撃開始』


砕け散った障壁の後ろから、すぐさま無傷の第二層目の障壁が展開し、さらに後列のゴーレムたちが新たな弾幕を一斉に放ってきたのだ。


「くっ!?」


さすがのレオンも、息を継ぐ暇もないゼロ距離からの集中砲火を受け、ズザザザッ! と床を滑って押し戻されてしまう。


「ピキュ! アカンデス! 敵ハ相互ニ魔力ヲリンクサセテ、障壁ヲ無限ニ自己修復シテイマス! レオンノ物理攻撃ダケデハ、ジリ貧デス!」


「わかってるわよ!!」


あたしは舌打ちをして、ホルスターの弾倉ポーチを探った。


残る特級カートリッジは少ない。ここから先、ボスのスナイダー戦まで温存しておきたかったが……背に腹は代えられない!


「レオン! 伏せなさい!!」


あたしの叫びに、レオンが瞬時に床に身を伏せる。


「カノン、炎属性カートリッジ装填! フリューゲル、風属性カートリッジ装填!」


両手の魔銃に魔力を流し込む。


赤と緑の幾何学模様が、銃身に眩く浮かび上がる。


「障壁が自己修復するなら、修復する暇もない『面』の飽和攻撃で、一網打尽にしてやるわ! ――『爆風・炎嵐陣、フレア・トルネード』!!」


二丁の魔銃を交差させ、同時に引き金を引く。


放たれた特大の火球が、凄まじい風の渦に巻き込まれ、巨大な炎の竜巻となってゴーレムの防衛線へと直撃した。


ドゴォォォォォォォォォォォォォンッ!!!


多重魔法障壁が、圧倒的な熱量と風圧に耐えきれず、一斉に悲鳴を上げて融解していく。


「今よ! レオン!!」


「任せろッ!!」


炎の竜巻が敵の視界と障壁を奪ったその一瞬の隙を突き、レオンが再び地を蹴った。


彼は炎の中を一切の躊躇なく突っ切り、また髪が少しチリチリになったが、がら空きになったゴーレムたちのド真ん中へと跳躍する。


「これで……終わりだァァァッ!!」


上段から振り下ろされた大剣が、床の鋼鉄ごと、重装甲ゴーレムの群れを文字通り「真っ二つ」に両断した。


誘爆に次ぐ誘爆。


凄まじい連鎖爆発がエレベーターホールを包み込み、あれほど強固だった防衛線は、わずか数分でただのスクラップの山へと変わった。


「……ふぅ。や、やったわね」


あたしは肩で息をしながら、両手の魔銃を下ろした。


弾薬代のことは今は考えない。王都を守るため、いや、あたしのケーキ屋を守るためなのだ。安い出費だと思わなければ精神が持たない。


「ガハハ! 素晴らしい連携だったなマール! さあ、このままエレベーターで一気に上層部へ殴り込みだ!」


レオンが大剣を肩に担ぎ、意気揚々と巨大なエレベーターの扉の前に立つ。


「ピキュ。……マール、マスター。申シ訳アリマセン。最悪ノ知ラセデス」


ナビコが、絶望的なほど暗い電子音を発した。


「な、なによ。もう敵は全滅したでしょ?」


「……エレベーターノ動力ガ、上層部カラ物理的ニ『切断』サレテイマス。ボタンヲ押シテモ、ウントモ、カントモ、スントモ言イマセン」


「…………は?」


あたしは急いでエレベーターの操作パネルに駆け寄った。


レオンが何度ボタンを連打しても、ランプは点灯せず、扉が開く気配は微塵もなかった。


「う、嘘でしょ……!? 動力が切られてるって、じゃああたしたち、どうやって上の階層に行けばいいのよ!」


「ピキュ。正規ルートハコレデ完全ニ立チ消エデス。……オシマイデスネ」


ナビコがアンテナを垂らし、完全に諦めモードに入った。


王都滅亡まで、あと四十八時間。


目の前には、絶対に開かない鋼鉄のエレベーター。


「…………」


あたしは、静かにうつむいた。


「マ、マール? 大丈夫か? なんなら俺がこの扉を叩き斬って――」


「……どいて」


「え?」


「そこを、どきなさいって言ってんのよッ!!」


あたしは血走った目で顔を上げ、両手の魔銃『カノン』と『フリューゲル』の撃鉄を、カチャリと音を立てて起こした。


「敵が動力を切った? 上に行けない? ……ふざけるな。アベニール流の『上への行き方』を、とくと教えてやるわ」


あたしの全身から、先ほどの戦闘を遥かに凌駕する、怒りとヤケクソの青白い魔力が立ち昇り始めた。


「レオン! しっかりあたしに捕まってなさい!!」


「お、おう!? よくわからんが、気合が入っているな!」


正規ルートが閉ざされたなら、裏ルートを見つけて上へ行ってやるわ!

最後まで読んで頂いてありがとうございます!

ブクマ・評価・リアクションを押して頂けると嬉しいです!(◍•ᴗ•◍)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ