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第三十八話 「地獄の続き」



「言われた通りの仕事はしてきたわよ」


 そう言って悠々たる態度で帰ってきた水世と、何故か自分たちから遠ざかっていく先生の姿に、智也は水世が期待以上の成果をもたらしてくれたのだと察した。

 そのあまりの優秀さに敬意と少しばかりの嫉妬を抱きつつ、時間を稼いでくれていた間に話したことを、水世にも共有していた。


「まぁ、話した内容はそんな感じだよ」


「ふーん」


 聞きたがっていたわりにはやけに薄い反応だ。或いは、水世の期待に沿ったものを用意できなかったのかもしれない。そもそも智也としては、必死になってまで聞く価値のあるものではないと思っていたのだが。

 勝手に期待して見込み違いだと肩を落とされるのは、勘弁願いたいところである。


「まぁいいんじゃない」


「え?」


「だからいいんじゃないって言ってんの」


「そうか……てっきり肩透かしだったのかと」


「はぁ? アンタ私のことなんだと思ってるわけ?」


 見た目に反して口が悪く、魔法に関して造詣が深いが、怖くて近寄り難いクラスメイト――とはとてもじゃないが言えない。

 代わりに苦笑いを浮かべて智也はその場をやり過ごし、同じく話を聞いていた別チームの二人に目を向けた。


「じゃあ作戦通りに……って、よかったのか?」


「いんじゃない? 楽しそーだし。なんかワクワクしてきたっ」


「でも、もう走りたくはない……」


 手を組む約束をした水世はともかく、流れで一緒にいた東道と栖戸まで巻き込んでしまったけど、という意味で智也が尋ねると、前者は楽観的な思考で気に留めておらず、後者のほうも特に問題視はしていなさそう。

 作戦会議をしていた智也たちを見て、「面白そうじゃん」と東道のほうから身を乗り出してきたので、どちらかと言えば心配なのは栖戸だったのだが。


「そういえば残り時間は?」


「今の休憩で、体感四十分弱ってとこかな」


「なにそれ、信憑性ないじゃない」


 そう――なにげに智也たちにとって、経過時間を知らされていないのが大きな不安要素となっていた。

 時間が分からなければ体力や魔力の配分が難しく、いつ終わるのか分からない状態が長く続くのは、精神的にも負担が大きくなる。

 それもこれも全て、先生が意図して狙っているのだろうと智也は踏んでいるが――、


「そろそろ十五分だ。ぼちぼち始めんぞー」


 と、再び拡声魔法のようなもので声が届く。

 お互い、広い闘技場の両端にいるというのに鮮明に聞こえるのだから、それだけで魔法のすごさを体現しているようなものである。いちいち驚いているのは、智也だけだが。


「一応、宛にしておくわ」


 そう言って立ち上がると、水世はそそくさと定位置に歩いていく。

 一人で向かってはなんの意味もないので、智也たちも急いで腰を上げて、


「雪宮、頼んでたやつはできそうか?」


「……た」


「さすがだな、頼りにしてるよ」


 水世を追いかける前にそう雪宮に尋ねると、辛うじて「できた」という声が聞き取れた。

 それを確認して、智也たちも定位置――最初にBチームが陣取っていた、中央付近へと並び立つ。


「……ほう、横並びときたか」


「あれが対策……?」


「ま、よく見とくんだな。鬼が出るか蛇が出るかは、開けてからのお楽しみだ」


 東ゲートに佇んでいた先生が、後ろの久世となにやら話しているようだった。

 しかしその話はすぐに終わったようで、重い腰を上げるように立ち上がった先生が、智也たちを見て左手を上げる。


「来るわよ」


 水世の呟きに緊張が走る。智也は固唾を呑んで、腰を落として身構えた。

 緩やかに下ろされる左手。おそらくそれが再開の合図であろうことは、みんな自ずと分かっていただろう。

 その左手が腰より下に落ちると同時に前傾姿勢になった先生は、次の瞬間、思い切り駆けだした。


「遅い、いや、少し早いか!? ――黒だ!」


 例の魔法を警戒していたものの、先ほどのような爆発力を感じられず、一瞬判断に悩まされた。

 それでも、前もって決めておいた合図を智也が発すると、五人が一斉に旋回を始める。

 紫月、雪宮、智也の三人は時計回りに。水世、東道、栖戸のほうは反時計回りにと二手に分けれ、真っ直ぐ走ってきた先生を挟み撃ちできる位置取りとなった。


「結局、読みは五分五分だったわけか……」


 開始直後の一番警戒心が薄いタイミングでの強襲。

 そして三発目の魔法が、確実にこちらが消耗しているタイミングを狙ってくる、というのが智也の読みであった。

 休憩を挟んだいまを後半戦とするならば、「開始直後」というのは強ち間違いでもなかったと言える。

 しかしそれとは逆に、最後の切り札を切るタイミングを読み違えたことになるのだが、


「短期決戦のつもりなのか? ならなおさら、ここで時間を潰させてもらう……!」


「Reve11【火弾】!」

「Reve11【火弾/赤鷲】」


 ちょうど中央で立ち止まった先生に、左右に分かれた二組のチームから火球が放たれる。

 それを順に見て、先生は最小限の動きで身を躱すと、二つの火球が衝突して爆煙を生んだ。

 先生の姿を視認できなくなれば、ほんの些細な予備動作を見損なってしまう。そうなれば、一瞬の隙にどちらか片方のチームが潰されてしまうだろう。

 それを防ぐために、


「「Reve12【水風船】!」」


 智也と東道に代わって、今度は紫月と水世が広範囲に水泡を散布させる。魔力を多く消費してしまうが、リスクを気にしなければ水の弾幕は無限に増加させられるのだ。

 そして、愚か者でなければ、わざわざ弾幕の張られたところへ突っ込むことはしないだろう。

 ――魔法を当てればこちらの勝ち。その勝利条件を逆手に取った、あの瞬間移動の対抗策である。


「なるほど、こりゃ手の打ちようがないな」


 足踏みを余儀なくされた先生が、何故か嬉しそうにそう笑う。

 既に三十秒以上は経過しているはず。あの言葉の通り、本当に先生に打てる手はないのだと考えていいはずだ。

 いいはずなのに、


「なにか嫌な予感がする……」


 時間の経過とともに、破裂音を響かせながら水の弾幕が次々と霧散していく。

 まるでそれを待っていたかのように、先生が智也たちのほうを向いて、わざとらしく右足を引いた。

 隣の雪宮を横目に見ると、彼は小さく首を動かす。――いつでもいける。彼の沈黙をそう解釈して、智也も魔力を搔き集める。


「「Espoir13【隔壁】」」


 ほとんど雪宮の声は聞こえなかったが、身を屈めた二人の前に、壁が二つ迫り上がった。

 それと同時くらいに走り出した先生を、少し開けた壁の隙間から確認して――その岩壁が、蹴破られた。


 瓦解する壁の向こうに、飛んでいく先生の姿がある。


「壁を蹴って……!? いやまさか、強歩の効果時間は既に過ぎたはず……」


 そうでなければ岩壁を蹴破るなんて所業、できるわけがない。

 となると必然的に、答えは一つしか残らなくなる。


「智也くん、水世さんたちが!」


 紫月の声に思考を止め、智也は前方を確認した。

 行く手を阻むために立てた壁を逆に利用され、先生は反対側へと飛んだのだ。

 あからさまにこちらを狙う素振りを見せたのは、逆サイドの三人を油断させるためか。


「ひぇぇ……! なんでこっちに!」


「言ってる場合!?」


「大丈夫っ! 黒霧くんの話だと、先生は真っ直ぐしか走ってこれないっぽいから!」


 慌てて左回りに逃げる女子三人。その背を追う先生が真っ直ぐ壁に激突して止まることはなく、普通に進行方向を変えて追跡を続けていた。

 例の速さなら推測通りになっていただろうが、どうも先ほどから力を抑えている節がある。だから効果時間が伸びているのだろうかと智也は考えて――、


「なんか、聞いてた話と、違うんですけど!?」


「ぜぇ……ぜぇ……だまされた……」


 二人からの射るような視線に、あらぬ誤解を招いている気がして智也は顔を引き攣らせた。

 まるで三人を餌にしているかのような状況だが、智也には一切そんな狙いはない。

 先生がこちらの作戦の裏をかいてきたのだ。

 助けを求めるように隣を見るも、雪宮は智也の視線から逃げるように、ゆっくりと顔を背ける。


 と、そんなことをしている間も、女子二人は悲鳴を上げながら逃走中だ。先頭を走る水世には余裕が感じられるが、最後尾の栖戸はついていくので必死そう。


「栖戸っち! Espoir20――【円環】!」


 声を上げて、東道が助けに入る。

 手を伸ばし、狙いを定めて言霊を唱え、具現化した光の輪が先生を捕らえ、損ねてそのまま後方で霧散して消えた。


「走りながらムズっ……!」


「へぁ……へぁ……もう無理……」


 東道が足を止めてリベンジを図ろうとするも、先に栖戸の足が限界を迎えたようだ。

 同時に、先生の強化魔法の効力も切れたのだろうか。走る速度が徐々に落ちていき、座り込む栖戸の後ろで立ち止まった。


「栖戸心結――」


「【雨燕】!」


 肩に触れようとした手が、勢いよく射出された水泡によって弾かれる。

 いや違う、すんでのところで腕を引いたのだ。


「邪魔だから早く連れてって!」


 かなりきつめの口調だが、その真意は東道と同じものだろう。

 立て続けに二発放たれる水泡を、先生は手慣れたように捌いていく。もう水世の攻撃は、読まれているということか。


「Reve16【半月切り】」


 と、不意を打った半月型の斬撃に、一拍遅れて先生がその場を飛び退いた。

 その隙に、東道が栖戸の元へと駆け寄っていく。


「水世さんありがとっ! 栖戸っち、強歩使えそ??」


「もう走れない……」


「あーー、んーー分かった。あんぶしたげる!」


 脚力を強化して逃げるのは楽だが、足の疲れが溜まっていたり、そもそもの体力がなければ使用することは難しい。

 そんな栖戸のしんどそうな様子に見兼ねてか、東道が背を貸そうとしゃがみ込む。


「早く!」


 気恥ずかしさからか、栖戸の表情に迷いが見えたが、急かすように叫んだ水世の言葉に、栖戸は目を瞑ると思い切って東道の背に乗っかった。


「よーし、いっくよー!」


「わ、わたし重いから……」


 橙色の髪に顔をうずめる栖戸へ、「そんなことないよー!」と言いながら軽快な走りを見せる東道。

 水世は引き続き足止め役を担っているが、


「あーもう、鬱陶しい!」


 全く掠りもしないどころか、どんどん距離を詰めてくる先生に憤っていた。

 強化魔法の効力がなくとも、そもそもの先生の機動力が高い。

 あのままでは、確実に三人とも捕まってしまうだろう。


「……」


 と、視線を感じて横を向けば、雪宮が智也のことをじっと見つめていた。

 長い前髪に隠れて顔は見えないが、何かを訴えるかのような視線は感じる。

 まるで、三人を助けたいと言っているかのようだ。


 合理的に考えれば智也たちとあの三人は別のチームであり、仮に助けることができたとして、それで成績に影響があるわけではない。

 そして智也は既に二回半ほど魔法を使用しており、それで残りはもう半分だ。

 制限時間もまだ四十分近くあるはずで、それらを勘案すれば、残りの魔力は温存しておきたいのが本音である。


 ――雪宮だけ援護させる……それでいいのか?

 ――水世と手を組んだんじゃなかったのか。

 ――でも能率的に考えれば……。


 巡らせていた思考が、そこで停止した。


 三人のうち二人は、雪宮の元チームメイトだ。もしそれが国枝や七霧だったなら、自分だって助けたいと思うはずじゃないのか、と。

 そう気付いたとき、智也は無意識に二人の名を呼んでいた。


「雪宮、紫月、力を貸してほしい」


 その言葉に前者は静かに首肯し、後者は嬉しそうに微笑んだ。

 再び頭を回転させ、智也は三人を助ける方法を模索する。


「直撃を狙えずとも、先生の足を止めることくらいはできるだろう。それで一度距離をとれたら、切り札を全て使い切った先生は、かなり不利になる……はずだ」


「そうやよね、少なくとも魔法で捕まる心配はないんやもんな」


「……あぁ」


 自分で言いながら、なにか引っかかりを覚えたが、その違和感がなにかは分からない。

 今はそれを追求するよりも、と智也は思考を切り替えて、


「八がいけるなら十もいけるよな……」


「なんのこと?」


「いや、なんでもない。俺と紫月で牽制を入れて、雪宮には時間差で狙ってほしい」


 二人が頷いたのを見て、智也は視線を三人の方へと移した。

 水世がかなり奮闘しているようだが、東道もいよいよへばってきており、捕まるのはもう時間の問題だった。


「時間がない。細かいことはやりながら説明する!」


 東ゲートの前を過ぎて、旋回してくる先生に狙いを定める。


「Reve11【火弾/赤鷲】」


「Reve11【火弾】!」


「Reve18【……蜂】」


 水世の攻撃を、走りながら左右に身を揺らして躱していたところへ、ほぼ同時に放たれた二つの火球が、横っ腹を襲撃する。

 その横撃に対し、先生は背面跳びのような形で宙を舞い、背中すれすれを火球が通り抜けていく。

 そして、時間差で飛ばした雪宮の火球が着地の隙を狙うが、今度は片足で地面を蹴って、再びその体躯が宙に返った。


 狙いを外れた雪宮の魔法は背後の壁に衝突し、先に行ったはずの智也と紫月の火球が、時が止まったかのように停滞している。


「…………」


 雪宮が【なにか】を唱えると、停止していた二つの火球が微かに揺れて。

 いきなり加速したそれらが、本来の速度を凌駕する勢いで先生の背中を襲った。


「――そう来たか」


 さすがの反応速度だ。背後からの奇襲にいち早く気付いた先生は、振り向きざまに腕を振るって二つの火球を鎮火してみせた。

 だが、雪宮の攻撃がそれで終わりじゃないことは、周りの者には最初から見えていただろう。


 先生の頭上でずっと光っていた八つの玉が、雨のように降り注いで炸裂する。



 ✱✱✱✱✱✱✱



「……っ、はぁ~マジ助かったぁ」


「やっぱりわたし重かったのでは……?」


「全然そんなことないケド……ぁいやでも、確かにさっきまで背中に柔らかい重みを感じてたような……」


 智也たちの援護の甲斐あってか、女子三人からどうにか先生を引き剥がすことに成功した。

 闘技場の北側で合流するや否や、その場にへたり込む東道に、ずっと背負われていた栖戸が申し訳なさそうな顔でそう尋ねる。

 それに対し、何故か東道はしまりのない顔になっており、


「な、なにを……」


「いやー、栖戸っちって結構おっぱいたい痛い痛い!」


 なにか言おうとした東道を、頬を赤らめた栖戸がぽこぽこと叩く。そこから視線を横にずらし、何食わぬ顔で歩いてきた水世の様子に、智也は内心で苦笑をこぼした。

 あれだけ派手に戦っていたのに、まだ余裕を感じられるのだ。体力的にも魔力量的にも、持久力があるということか。


「まったく、おそろしい機動力ね。――アレも、どうせ躱されたんでしょ?」


「まだ分からないけど、期待はできないよな」


 片目を瞑って壁に凭れる水世の、その視線を辿るように首を回し、さっきまで先生が立っていた場所を智也も見やる。

 いまは土煙が巻き上がっていて視認できないが、それが晴れたらきっと、何事もなかったようにまた追いかけてくるのだろう。

 あとは、持久力勝負である。


「なにはともあれ、ゆきみーたちのおかげでマジ助かったわ~。あ、もちろん水世さんもありがとねっ!」


「……!?」


「ゆきみー?」


 東道の視線から、聞き覚えのない愛称が雪宮に対するものなのだろうと智也は察したが、本人も呼ばれたのは初めてなのか、表情が見えないなりに驚いているのが伝わってきた。


「で、これからどうするわけ?」


「そうだな……やることはさっきまでと変わらず、俺たちはなるべく魔力の消耗を抑えて、余裕があるうちは雪宮たちの手を借りたい、かな……」


「まるで脛齧りの徒食者ね」


「悔しいけどぐうの音も出ねぇよ」


 罵倒が飛んでくると予測はしていたが、想定以上にトゲが深く刺さり、心から血の涙が流れた。

 が、そう言われても仕方のない身の上なので、いまは我慢する他ない。

 いつか先生みたいに強くなって見返してやると、智也が密かに心の中で決意していたところ、東道が横から割り込んできた。


「あの~、ウチらもう限界なんで、できれば少し離れて休みたいかな~なんて」


「足が棒です」


 遠慮がちに挙手した東道の横で、栖戸が死んだ目をしている。

 やはり傍から見ても分かるくらいには、二人の消耗が激しいようだ。

 この闘技場で休める場所があるのかは疑問だが、無理して智也たちと固まって動く必要はない。それに最悪、さっきみたいに遠くからでも助けることはできるわけだし。


「わかったわ」


「それじゃ、いまのうちに~」


「お先です」


 智也も特に止める理由はなく、水世が代表して二人の離脱を承認。雪宮と紫月は、静かにそれを見送っていた。

 身長差からか、並んで歩く二人の後ろ姿に「姉妹みたいだな」なんて思い、二度目の違和感が智也を襲う。


 ――いや待て。


 本能的に危険を感じ、咄嗟に叫ぼうとしたタイミングで、闘技場に突風が起こった。


「きゃっ!」


 前方から聞こえた悲鳴に顔を覆っていた腕をどければ、歩いていた二人が足を取られて立ち止まっていた。

 反射的に、先生がいた方角へと顔を向ける。


「土煙が晴れて……!?」


 腰を落とし、走る構えをとる先生の姿を智也が目にしたのは、一秒にも満たない僅かな時間だった。


 東道と栖戸が北から西へと移動しようとしたことで、先生から見える二人の位置は、ちょうど奥にいるCチームの二人と重なって見えたはず。

 ――そう。前半で起きた、あの惨事と同じ状況である。


「走れ!!」


 智也が叫ぶよりも早く、先生の残像が東道と栖戸の肩に触れ、理解が追い付かないまま二人が捕まる。

 そしてその姿は、瞬く間に延長線上にいた藤間たちの元へと移動しており、風すら置き去りにして走った跡に、遅れて砂埃が舞い上がった。


 まただ。また一瞬にして四人が捕らえられた。

 もっと早く気付いていれば、せめて東道たちだけでも助けられたかもしれないのに。

 そう後悔の念に駆られていた智也の鼓膜を、威勢のいい声が揺らす。


「――そう何度も喰らうかよ」


 藤間と清涼に伸ばされた先生の腕が、見事に空を搔いていた。



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