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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
三章・反逆者は満を持してその牙を突き立てる

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反逆者は初めて魔族を目の当たりにする

今回ちょい短め


おのれ花粉めが……(ニクラシヤァ!)

 



「某が用事が在るのはただ一人、勇者のみ。

 その勇者を差し出されよ。さすれば、この場では他の者達には危害は加えぬと約束致そう」




 そう、闘技場の内部に居た者達に宣言しながら被っていたフードを取り去ったのは、端正な顔立ちをしながらも額から二本の角を生やした紫色の肌をした存在であった。




 外見からして、恐らくは男性に当たるのだろうが、アレは一体どんな種族なのか?亜人種に、あんな特徴の種族は在っただろうか?そもそも、先程口にした『勇者』とは一体何なのか?よもや、物語に登場する例の勇者か?そう言えば、先程『魔王』とも口にしていた様な……?




 観客席からは、戸惑いの声が多く挙げられている。


 ソレもそのハズ。何せ、情報が隠匿されていた為に、そもそも大多数の人間は魔族の特徴すらも知らないし、その脅威度もどの程度のモノなのかを把握出来ていない。



 それ故に、こうして舞台に乱入してきた『ズィーマ』と名乗ったソイツの事を、大多数の者が『危険な存在だ』と言う認識すら碌に持ち合わせていなかったのだ。



 …………とは言え、ソレは魔族について欠片も知らない大多数の話。


 何の因果か情報を統制していたハズの王族や、コレから始まる予定であった『活動』に関して色々と知らされてしまっていた極一部の者達は、(ズィーマ)が放った言葉によって顔色を青ざめさせる事となってしまっていた。



 何せ、元々『魔王が復活したのを掴んでいる』と言う事も『対抗手段として勇者を召喚した』と言う事も『この大会に勇者が参加している』と言う事も、分類としては『機密情報』として扱われていたのだ。


 それ故に、それらを知る者は王族を含めたとしても極々僅かな人数でしか無く、ソレもほぼこの会場に集まっている状況となっている。誰かが情報を売った、と言う事はほぼ無いだろう。



 ならば、どう言う事なのか?何故、こうして全てがバレているのか?



 答えは一つ。彼らが張り巡らした防諜の網目を軽く掻い潜り、それらの情報を全て目の前の魔族が集めて見せた、と言う事だ。


 それはつまり、そのまま魔族側の間諜の能力の高さを如実に語るモノであり、同時に彼らの持つ機密情報が丸裸にされてしまっている可能性を産んでしまった、と言う事に他ならない。



 例え、魔物が跋扈し、魔術が飛び交う世界であったとしても、戦争や国家間でのやり取りの際に優位に立てるのはより多くの正確な情報を握っている者であるのに代わりは無い。故に、この国は現在圧倒的なまでの不利な立場に立たされている、と言う事が確定した瞬間でも在ったからだ。



 当の本人たるシモニワと、もう一人を除いた関係者達はその事実に思い当たってか顔色を悪くさせて行く中、ソレに思い当たっていながらも『どうせもう俺は関係無いんだし』と他人事の様に考えていた『もう一人』であるシェイドは、つい先程まで熱心に眺めていたカタログを丸めて肩を叩きながら、発言の許可を取る様に手を掲げて声を掛ける。




「…………なぁ、ちょっと良いか?」



「………………何か?」




 その声かけに対して、些か面食らった様子でありながらも、取り敢えず、と言った感じで応じて見せるズィーマと名乗る魔族。



 取り敢えず話の通じない相手では無いみたいだな、と判断したシェイドは、カタログで肩を叩きながら言葉を続けて行く。




「いや、なに。ちょいと確認しておきたくってね。

 お前さんさっき、目的は『勇者のみ』だから他の連中、例えば俺とかには手を出すつもりは無い、と言っていたんだったよな?」



「………………うむ、ソレについては肯定致そう。

 実はそなたこそが勇者であった、と言う事で無ければ、某から手出しをするつもりは無い、と。

 ……尤も、攻撃を受ければ話は別だ。某も、この身を守らねばならぬ。であれば、先に敵意と刃を向けて来た相手に対しては、コレと言って容赦をしてやるつもりは無いがな」



「ソレに関しても、心配ご無用さ。

 俺も、俺の方から手を出すつもりは無いから。

 ソレで、具体的にどう手を出すつもりは無いんだ?勇者さえ連れて来れば、それだけで無関係な連中は全員晴れて解放、って訳でも無いんだろう?」



「…………うむ、そうだな。

 流石に、事が終わるまで全員解放、とは行かぬよ。

 某とて、間諜が本命なれど、ソレなりに腕が立つ自信は在る。が、だからと言ってこの国の戦力全てをぶつけられる様な事態になれば、確実に討ち取られる事となるであろう事は、容易に想像位は出来ている故な。

 強者との一騎討ちにて果てるならまだしも、数の暴力によって擂り潰され、削り殺される事は本意では無いのでな」



「あぁ、ソイツには激しく同意するよ。

 圧倒的大多数に嬲り者にされるなんて、何度も経験したいとは思えない程に胸糞悪い経験だからな」



「………………見た処、かなりの実力の持ち主と見受けるが、その様な経験が在る、と?

 …………よもや、そなたの様な強者に対し、その様な仕打ちをするとは……やはり、今も昔も人類とは碌な事をしないと見えるな……」



「……あらら?まさか、一応『人類の敵』って分類されてるあんたから、そんな同情の言葉を頂けるとは思って無かったよ。

 案外と、打算も無く悔恨からのモノじゃない『案じる言葉』ってヤツは、悪い気分になるモノでも無いみたいだな。

 あぁ、ついでに言っておくと、ソコで女の影に隠れようとしてコソコソしてやがるのがあんたのお探しの勇者様だけど、どうするつもりなんだ?」



「………………何だと?」



「なっ!?」




 会話の流れをぶった切りながらも、何て事は無い、と言わんばかりの様子にて、自らの横方向へと指差してそう告げるシェイド。



 示された指先は、表彰式が終わって彼らの方へと移動していたレティアシェル王女と、最初と変わらぬ位置に立っていたナタリアの影に隠れようとする様にコソコソと移動していたシモニワの事を的確に示していた。



 ソレにより、意味合いも言葉も異なる呟きを溢す二人。


 片方は、多少同情的になっていはしたものの、本来ならば人類にとっての希望となるハズの存在をアッサリと売り渡す様な事をした彼の行動に戸惑って。もう片方は、仮にも顔見知りである相手から、人類の敵であるハズの相手にアッサリと売り渡された事に驚愕して、である。



 ……しかし、彼の取ったこの行動は、残りの二人にとっては予想外でも無かったらしく、レティアシェル王女からは苦い顔を、ナタリアからは困った様な笑顔を向けられながらも、特にコレと言って咎められる事は無かった。



 それもそのハズ。


 何せ、彼にとってはこの世界は『敵』か『そうでない』かのどちらかだ。



 ならば、既に手を出されている者達や、過去の行いを悔いていたとしても、実際にソレに繋がる事を行っていた者達よりも、未だに何もして来ていない相手の方が彼にとっては与するに値するだけの価値が在る、と言う事になるのだから。



 ソレを理解しているが故に、してしまっているが故に、自分達ではどうしようも無い事態を前にして、咎める事も碌に出来なくなってしまっている、と言う事だ。


 ……まぁ、若干一名(ナタリア)に関して言えば、そこら辺は全く関係無くただただ彼の行動を容認しただけだったのかも知れないが、ソレはまた別のお話である。



 とは言え、そんな彼の事情なんて関係無く、本来ならば宿敵である(らしい)と聞いている魔族にいきなり売られる形となってしまったシモニワ。


 既に、圧倒的な強者から一方的に蹂躙される事に対しての恐怖感を学習してしまった彼は、あの時戦ったシェイドよりも強そうな雰囲気を纏っている魔族の視界に入らない様に、とコソコソしていたのだが、彼の一言によって半ば強制的に引き摺り出される事となってしまっていたが為に、ほぼ自棄になりながら腰に差していた得物を引き抜いて構えて見せる。



 相手の放つ魔力圧により、カタカタと切っ先が震えて鍔が鳴る。


 惨敗する恐怖を知る者の、圧倒的な相手に蹂躙される恐怖を知る者の振る舞いであったが、しかし彼はその場から背を向けて逃げ出す事も出来たのにソレを選ばず、こうして真っ正面から相対する事を選択したシモニワ。



 そんな彼の態度により、若干ながらも彼の評価を上向かせたらしいズィーマは、それまでマントによって隠していた両の腕を露にすると、変わった形の短剣の様なモノを手に取ってからダラリと脱力し、限り無く自然形に近い構えを取って見せる。



 一目見ただけで、達人のソレと分かるその動作に尻込みしそうになるシモニワであったが、どのみち自分が勇者だと知れてしまっている以上はここでどうにかしないと自分も危ないし、何より仲間の美少女達にアピールする絶好の機会なのだから!と気力を振るい立たせると、自らを鼓舞する様に大声を挙げながらズィーマへと突っ込んで行くのであった……。




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― 新着の感想 ―
[一言] 初対面で意気投合とは笑えますなー。まー、暴露は確かにやると思いましたが、モノのついでな感覚でやるとは…。 そこにシビれるあこがれますなァ!!
[一言] どうせ死なないんだろうなぁ…… 呆れに呆れられ、見逃されるんだろうなぁ…… 勇者死ねぇ!!(迸る殺意) シェイドマジ最高っすわww そのまま魔王側に着いたりしたら尚笑う
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