獣化ウイルス4話ー血と涙ー章弘エピソード
2020年 8月16日
テレビでは佐藤の感染と佐藤と同じ飛行機に乗った女性の大学生が感染したと昼のニュースで話題となっていた。章弘は、勉強しながら、この話題を聞いていた。今日は、朝から、お父さんと姉は熱が出て職場や学校に連絡して休みをもらって家で安静にしていた。お母さんは、とても疲れてるような目をしていた。章弘は、お母さんを楽にしたいために、家事をしました。章弘は、毎日お母さんのことを感謝しながら、黙々と家事をこなしていた。そして、お母さんにみんなの昼ごはんを作ってもらい、それらを、お父さんと姉の部屋へ運んでいた。すると、
「ゴフッ」
と姉が血を吐いてしまった。章弘はお母さんにこのことを教え、救急車を頼んだ。すると、今度は、お父さんも血を吐いてしまうという大惨事が起きた。救急車が来る頃には、2人は、体が痙攣しながら悶えていて、床は、血まみれだった。救急隊員が2人を搬送しようとしていると、章弘は見てしまったのだ。お父さんの太腿が動物のような毛が一部を覆っていた。姉の方は、首筋あたりに、トカゲのような肌が見えた。章弘の目には大粒の涙が頬に沿って流れた。
2020年 8月17日
病院から、お父さんと姉の感染検査の結果が言い渡された。結果は陽性だった。そして、病院からは、家族全員の感染がないかの確認のために検査をすることになっている。お母さんと章弘はマスクをして、指定された病院へと向かった。病院には、咳き込む人がとても多かった。搬送の救急車も何回も何回も急患を運んでいた。章弘たちは、名前を言うとすぐに中に通され、唾液と血液検査を行った。結果は明日渡される。章弘は、検査が終わると、そのまま帰路についた。本当は、お父さんと姉の病室へ行って、調子などを聞こうとしたが、看護師の人からストップされたのだ。家について、玄関のドアを開けると、血塗れだった部屋がとても綺麗になっていた。食卓の机には一通の手紙があった。
「突然綺麗になって驚いてるかもしれませんが、私たち『金城清掃株式会社』は、政府から派遣され、消毒と掃除をしました。家族方全員が無事であることを祈ります。」
章弘は、自室に戻って、ベットで横になり寝た。お母さんは、手紙を読んだあと、テレビをつけて、ウイルスについての話題を見ていた。夕方のニュースでは、章弘の家族のことと、感染者が日本各地で増えていることを報道していた。
2020年 8月18日
朝のポストを見ると、検査結果がきていた。お母さんと章弘は陰性というのがわかった。2人は安堵し、ハグをした。
「章弘無事でよかった」
涙を流しながら、お母さんはそう言った。章弘は自室に戻り、クラスラインを見た。そこには、章弘の家族が感染したという情報が出回ってしまったのか、章弘への心配の声があった。
「章弘おーい息してる?笑」
「笑つけんな。章弘、無事でいること祈ってる」
「章弘、血とか吐いてない?血とか吐いたら急いで病院に行ってね」
「佐藤みたいになるなよ。2度と会えなくなったら切れるからな。本当に無事でいろ」
章弘はみんなの文を見て涙がまた出てしまった。章弘はそして、
「番号13 岸本章弘、生存していることをここに証明します。」
クラスラインでも安堵の声がたくさん上がり、章弘も喜んだ。すると、
「新型ウイルスについて、政府は日本全土に緊急事態宣言を発表」
と章弘のスマホのに一つのニュースが通知できた。
クラスメートの人たちにも通知が届いようで、みんながクラスラインで、動揺していた。章弘は、クラスラインを見ながらリビングへと足を向けた。すると、お母さんは、家族写真を見ながら、椅子に座って泣いていた。章弘も目に涙が溜まっていた。章弘は、ソファに座りテレビをつけた。
「········っており、また、中国の上海で保管されていた獣化ウイルスの容器が盗まれたことが判明し、捜査をしています。そして、フランス、スペインでは、獣化してしまった国民を保護する施設を政府が負担で設けることが決まり、日本も、検討をしていると思われます。続いてのニュースです········」
章弘は、テレビを消して、自室へ向かいベッドに横になった。
2020年 8月19日
章弘は、外の騒ぎで朝早く起きた。
「章弘、支度して。ここから逃げるよ」
章弘に向かって必死になる親を見て急いで、携帯、パソコン、充電器、筆記用具をリュックに入れお母さんと外に出た。すると、外には、高台へ走る人々がいた。街の方を見てみると、ビルから炎が出て、地上には緑色の煙が立ち上っていた。緑色の煙がこちらに迫っているのがわかるとお母さんは章弘の手を引っ張って高台へ向かった。緑色の煙の中に入ってしまった人たちは、
「熱い、あづい。死ぬ。だれがだづげて」
悲鳴を上げながらバタバタと倒れてしまった。
章弘たちは高台へ登ると、高台に避難した人たちがたくさんいた。そこに
「章弘!!無事だったんだね」
後ろを振り返るとそこには、同じ中学校に通うクラスメートの「上甲比奈」がいた。
「上甲さんも無事でよかったよ。他のみんなは?」
章弘は上甲に聞いていると、
「章弘!! 俺たちも大丈夫だ」
クラスメート5人グループも無事にいた。しかし、高台には、この7人しかいなかった。章弘は、パソコンで情報を集め始めた。
「何かわかったの?」
比奈は章弘に質問し、一緒に章弘のパソコンの画面を見た。情報によると、この近くの人が集まる交差点で爆発が起き、多くの人が倒れているという情報だけがパソコンの画面に映っていた。
「ダメだ。みんなとラインが繋がらねぇ」
5人グループの一人がそう呟いた。すると、軍のヘリが飛んでいるのを目撃した。ヘリは、高台の駐車場にヘリを着陸させ、軍の人たちが小銃を腰に抱えて、避難民を誘導した。章弘たちも搭乗した。
「これから、東立川駐屯地へ移動します。食糧などが支給されます。ヘリから降りたら一人ずつ検査をします。密集にならないようにしてくだいさい。」
軍の一人が言った。章弘たちは窓から街の景色を見ていた。すると、緑色の煙が街の至る所で見つけることが
でき、そこから、人が倒れているのが確認できた。すると、クラスラインから通知がきた。
「外が緑色の霧で外が見えないけど何があったの?」
「ヤバイ、親が血をはいた。誰か助けて」
クラスラインでは、逃げ遅れたクラスメートたちが混乱していた。章弘たちはそれを涙を浮かべてみることしかできなかった。駐屯地へ着くと、体温測定と、安全チェックを軍の人に検査された。駐屯地には、グラウンドに、避難者用のテントがたくさんあった。章弘たちは、親たちがいるテントの隣のテントにみんなで座って、下を見ていた。
「あれ、どうなるんだろうね。もしかしてだけど、上海にあった獣化ウイルスの容器が盗まれていたのが、この緑色の煙じゃない?」
比奈が呟くと、みんなが比奈に注目した。比奈はビクッとした。すると、5人グループの一人が、
「多分そうだろうね。感染者は半端ないだろうよ」
と言った。章弘たちは、スマホで情報を集めていた。すると、目に留まる記事が見つかった
「私が、東京に獣化ウイルスのバイオテロを仕掛けました。Fです。」
と書かれていた。みんなが章弘のスマホに注目していると、
「上海のウイルス研究所から獣化ウイルスを5本盗み、東京にまず1本目をばら撒きました。これから、フランス、サウジアラビア、アメリカ、ブラジルにもテロを仕掛けます。」
と記事には書かれていた。章弘たちは背筋に冷たい何かを感じると、すぐに7人は、近くにいた軍の兵士にこの記事を見せた。兵士は、フェイクニュースと感じたのか聞く耳を持たなかった。
東京で撒かれた緑色の煙はニュースによると、獣化ウイルスであることがわかった。政府の話によると、獣化ウイルス完全除去までに5週間かかってしまうとのこと。
すっかり夜になり、7人は支給された寝袋に包みながら就寝した。
2020年 8月20日
章弘は、早く起きて、外に出た。すると、駐屯地に緑色の霧が見えた。それは風に乗って章弘たちに迫っている。章弘は、急いでテントの中に入り、テントのチャックを閉めた。すると、
「あああああ。熱い熱い。体があああああ」
「子供がいるの助けて。。。」
外が騒然とした。章弘以外のみんなも起きてびっくりしていた。すると、
「章弘、お母さんもうダメみたい。この霧が治ったら、愛媛にいるおじさんのところに行きなさい。わかったね。」
お母さんはそう言って、章弘はテントの幕越しにお母さんの手を握った。章弘は泣いた。そこにいたみんなも泣いた。
あれから何時間経っただろうか。外にいる人たちの声が聞こえなくなり、軍の声も聞こえなくなった。まだ、外は緑色の霧があるかもしれない。その恐怖があり、7人は外へ出ることができなかった。
夕方になり、7人は一向に外へ出ようとはしなかった。章弘たちは、パソコンやスマホで情報を集めいていた。すると、
「田舎だったら安全なんじゃない?」
「富士山に登ったら菌の活動が停止するんじゃね?」
SNSでは、そのことを言っていた。しかし、今の章弘たちには関係のない話だった。今7人は、霧の情報を探していた。すると、外で、
「バキバキッ」
「ゴキャッ」
何やら音が聞こえた。7人は、テントの奥に固まってチャックがある場所を見ていた。すると、
「ビュ〜ン」
とテントのチャックが開いた。そこには、ウサギのような容姿の人型がいた。みんなは固唾を飲み込んだ。すると、
「あ、き、ひ、ろ。み、ど、り、の霧、が、消え、た、よ。」
それは間違いなくお母さんの声だった。章弘は、また泣いてしまった。7人は、急いで後ろのテントの幕に穴を開けて外へ出た。しかし、章弘は外へ出ようとしなかった。
「お母さん、ごめんなさい。ごめんなさい。」
章弘は涙を流しながら謝罪をした。すると、
「章弘、悲しいのはわかるけど、今は早くここから抜け出さないと感染しちゃうよ。」
比奈がそう言うと、章弘の腕を掴んで外へ連れ出した。章弘は涙を拭って、駐屯地から去った。
スマホで空港の情報をみると、意外なことに稼働していた。7人は急いで、羽田空港に向かった。電車はなく、途中で見つけた高校生の自転車に二人乗りで羽田空港へ向かった。
羽田空港は、閑散としていた。しかし、空港には愛媛行きの便があった。
飛行機に乗る前の場所でCAがいた。
「本便が最後です。席は無料なので、好きなところへ座って大丈夫です」
そう言うと、7人は飛行機に乗り、席についた。すると、CAが乗ってきて、出航した。
飛行機の窓から見てみると、緑色の霧が見えた。緑色の霧は富士山の麓にあった。
数時間が経過し、愛媛の松山空港へ到着した。松山空港で、体温の検査や服のウイルス検査をした。すると、7人とも服にはウイルスが付着していることがわかり、空港の人から、土産のところにあったT シャツを着た。外に出ると、あたりは暗くなっていた。聞こえるのは車やバイクが走行している音が聞こえた。
7人は久しぶりに聞く音に感動していた。そうこうしていると、叔父がデカイ車で迎えにきてくれた。7人はそれに乗り、叔父の家へ向かった。
「長旅お疲れ様。さっきラインで君のお母さんから愛媛に章弘たちを行かせたからお迎えお願いと言われたからね。」
叔父は嬉しそうなかつお母さんのことを心配していた。
「お母さん、ウサギになって感染した。」
章弘は、そう言うと、叔父は「そうか」と言って悲しくなっていた。空港通りを抜けて、高校の前までになると、高校生が明るい笑顔で帰ってるのが見えた。甲子園強豪校の高校の前にあるスターバックスでは、ドリンクを楽しく飲んでる人たちがいた。7人はまだ、ここは大丈夫と安心していた。車は走り続けて、松山市駅前の通りを抜けると夜景が広がっていた。車の中にいた7人はまた感動した。車内は明るい雰囲気になった。そして、もう一つの高校の前に止まると、
「着いたよ。」
と叔父が言って、降りると、高校から吹奏楽の楽器の音と、野球部の練習の声が聞こえていた。
「ささ、中に入って。おじさんは一人だったから子供が7人も嬉しいな」
叔父はそう言うと7人を自宅に迎え入れた。7人は章弘の叔父から、温かいご飯を食べ、寝床に叔父が案内してくれて、そこで7人で寝た。章弘は、高校を窓から見ていると
「ITパスポート 13名合格 情報基本技術者 8名合格」
「全商簿記検定1級 3名合格」
と書かれていて、章弘は、商業関係の高校か。と思いながら寝床についた。