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宝花の軌跡 〜目指せ、最強スローライフ〜  作者: 逢坂ひより
病に倒れて異世界転生!?
22/22

ピンキーモンキと草原ラビット

 




「来るぞ。構えろ、ラルシア!」



 ラルフのその声に、サッと杖を構える。



「捕らえろ!!ダズル・パイソン!!」



 そして、無意識のうちに私は呪文を唱えていた。現れたのは光り輝く眩しい大きな蛇。



 蛇はその口を大きく開け、1匹のピンキーモンキを噛み砕いた。そして、尻尾でもう1匹を弾き飛ばし、さらにもう1匹を身体で締め上げる。



 締められたピンキーモンキは、泡を吹きながら絶命した。


「やるじゃねぇか!!見直したぜ、ラルシア!!」



 ラルフはそう叫び、嬉しそうに刀を振るう。



 あっという間に、決着がついた。



 ラルフは3匹のピンキーモンキを斬り伏せ、ニヤリと笑っている。



 私の出した光の蛇は、一度に3匹も殺してしまったのだ。尻尾で弾かれたピンキーモンキは少し離れたところで、お腹に火傷を負って絶命していた。



「いまの、初級魔法じゃねえな。いつの間に中級魔法を覚えてたんだ?」



「……わからないの。凄く無意識で」



「ハハッ、無意識で呪文まで出てくるってか?そうか、これが特級光魔法の才能ってやつか。随分面白いものを見せてくれるじゃねぇか」



 私はラルフのその言葉を聞きながら、小さく微笑む。



 ──正確には。



 微笑もうとしたんだけど、身体にうまく力が入らなくて、倒れ込んでしまった。



「っと、危ねぇ!!!」



 すんでの所でラルフに抱きかかえられ、草原との熱い抱擁を避けることが出来た。



「……ごめ、力、入らなくて」



「ったくよ、無理しやがって。ほら、口開けな」



 そう言ってラルフが、和服の裾から青い瓶を取り出す。私はラルフに従い、小さく口をあけた。



「魔力切れの一歩手前だぞ、馬鹿。あれだけちゃんと把握してから慎重にって言ったのによ。まあ、今回は大活躍だったから、説教はあんまりしないでやるよ」


 ラルフの手によってゆっくりと流し込まれたそれを、なんとか飲み込む。



 ほろ苦くて、ほろ甘い。


 まるで、子どもの時に飲んだ子ども用の液状飲み薬の様な味だった。



「……ありがとう、ラルフ」



「ああ。あとは5分くらい休めば本調子に戻るさ。俺は魔石でも拾って来るから、そこで休んでな」



 ラルフに言われた通り、私は草原に座り込む。揺れる草花の香りが、心地良かった。



「……そうやって花に囲まれて座ってると、人間じゃないみたいだな」



 魔石を拾い終わったラルフに、とんでも無いことを言われる。



「……に、人間じゃないってどういうこと!?」



「いや、ちげえよ、そう言う意味じゃ無いって!!悪い意味じゃなく、なんつうか、神さまみてぇだなって。……綺麗だなっつう意味だよ。わかれ、ばーか」



 ラルフが、頬を赤くしながら顔を背ける。



「な……、えっ……と、ありがとう」



「うるせえ、黙れ」



 ……自分で言ってそんなに照れるくらいなら、言わなきゃいいのに。



「何はともあれ、ラルフのおかげで助かったよ。ありがとう」



 スッと立ち上がり、お礼を言う。



「もう身体はいいのか?ったく、もう無理すんじゃねえぞ」



「うん、わかってるよ」



 口は悪いけど、その不器用なラルフの優しさを受け取り、心が温かくなる。



「……頼もしいなぁ」



「あ?当たり前だろ。俺がいるんだから」



 ラルフは、そう言ってニヤリと笑った。



 その後も私達は順調に魔物討伐を繰り返した。何度も魔物と遭遇するうちに、私も怯まずに攻撃を仕掛けられるようになった。これは、大きな成長だと思う。


 もう、前ほどの失態はしなくて済みそうだ。今回の魔物討伐でかなりレベルも上がったらしく、MP量にも少しだが余裕が出て来たように感じる。



「……あ、あそこ!角の生えた兎……みたいなのが……」



 いる。


 そう言おうとした瞬間、私はその衝撃的な顔につい言葉を失ってしまう。



「お。やっと草原ラビットのお出ましか?ってお前、何呆然としてんだよ」



「……凄い、顔だなぁと思って」



「だから言っただろ?同じ兎でも、カミルやマリーみたいに可愛いもんじゃねえぞって。あんな前歯をむき出しにした兎を可愛がってる奴がいるなら、一度くらい拝んでみてぇな」



 ラルフは呆れたように、刀に手をかける。



「草原ラビットは、基本的にはあの鋭い角で突進し、攻撃を仕掛けて来る。だから、まずはあの角を切り落とすと戦うのが楽だぜ。ま、お前の魔法だとちょっと厳しいかもしれないから、普通にやっていいと思うぜ?」



 ラルフはそう言葉を続け、一気に草原ラビットとの間合いを詰める。



 豪快で、大胆で、それでいて繊細な刀捌き。



「……まずは角を落とすんじゃなかったの?」



 ラルフの刀は草原ラビットの胴を捉え、それを真っ二つに斬り捨てていた。



「……おう。そのつもりだったんだけどな」



 こっちの方が早い気がして。



 なんて言いながら、ラルフは草原ラビットの角を、解体用ナイフで切り取っている。どうやら草原ラビットの角と毛皮は、買い取ってもらえるらしい。



「ま、お前も割と魔法使えるようになって来たし、適当にやってみろよ。って言うか、なんかレベルアップするの早くねぇか?多少の個人差はあるもんだけど、お前の成長スピードの速さは中々珍しいぞ」



「……そうかな?」


 確か、取得経験値を増やすと言うスキルを持っていた記憶がある。多分……と言うか、絶対そのスキルのせいだと思う。


「ああ。まあ、良い事なんだけどよ。元々才能があったのかもしれねぇな」



「才能……ね。それはわかんないけど、MP量が増えるのはありがたいね。撃てる魔法の数も増えるし、もっとMP量が増えていけば出来ることも増えそうだから」



「ああ、そうだな。まあ、まずはCランクの冒険者にならなきゃな?俺らはこんな低ランクで止まるべきじゃないと思うぜ。特に、お前は貴重な光魔法持ちだからなぁ」



「何言ってるの?ラルフこそ、凄く強いし絶対にみんなから必要とされるに決まってるよ」



 ……ラルフなら、あっと言う間にCランクに上がってしまうかもしれない。



 私は……



 例えCランクの冒険者になったとしても、大型の魔獣とまともに戦える気がしなかった。



 その後も、ラルフと会話をしながら、草原ラビットを探し続けた。



 結果的に今回の魔物討伐数はかなりの物になった。私がまともに戦える様になり、ラルフが自由に動けることで討伐効率がグンと上がったのが、その理由の一つだろう。



 ゴブリンを12体と、ピンキーモンキを28体。そして、草原ラビットの討伐数は32体にもなった。



「ふぅ……結構な数になったな」



「うん。ラルフが頑張ってくれたおかげだよ」



「何言ってんだよ。お前がちゃんと動けるようになったから、スムーズに討伐が出来たんだろ?少しは自信持てよ」



 ラルフが、呆れたように笑う。



「うん……。色々教えてくれてありがとう。またよろしくね」



「おうよ。んじゃ、ギルドに戻ろうぜ。さっさと報酬でも貰って、たまには飯でも食いに行くか〜」



 私達は魔獣討伐を終えて、ギルドへと帰った。ラルフのランクは変わらなかったけど、私のランクはFランクからEランクへと上がった。




 これで、ラルフがいなくてもDランクのクエストを受ける事が出来るようになったんだ。



 やっぱり、ランクが上がると言う事は嬉しいものだった。私達はランクアップ祝いと称し、ファミリーポリーで少しお高めの料理を堪能する。



 今回はDランク依頼である小型魔獣の討伐クエストを複数クリアした為、お財布にも多少の余裕があったのだ。



 この世界に来て2度目の外食。ラルフは美味しいご飯に感動した様で、かなりの量を平らげていた。






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