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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第1章 目覚めの王国
41/206

Chapter5-5

修正、加筆しました。


時はお昼時。


突然であるが、私エストレアは今。厨房にて鍋を振るっています。


「エレンさーん、右五番にキャベツのスープ煮、豚のスペアリブに後………スマイルです!」


「わかった!後、最後のは知らない!接待してるネロの役目だろう!」


鍋を下ろして、注文の品の準備にかかる。それと、スマイルなど今の状況で向けられるほど暇じゃない。

注文を取るネロに任せているというと文句が飛んでくる。


「うるせえ!余計なこと言うんじゃねえ!!くそ、どうして俺がこんなことしてんだよ………




いらっしゃいませーーー!お一人ですか?」


「うお、可愛い子だな。女将ーー、新しい子か?」

「そーだよ、しばらくの間働いてもらうことになったんだよ。」



ぐちぐちと文句を垂らしながら空いた食器を纏めて厨房の奥へと運ぼうと動けばカランカランと扉を開ける音と一緒に新しい客のようだ。

この店を仕切る女将に徹底的に叩き込まれたせいで即座に作った笑みで客を案内する。


「ニアス、スペアリブとスープ上がった!持ってって!!」

「ん。『浮遊フーム』………「いや、普通に運んでくれ。」ちぇ……。」


もう一人の給仕を務めるいつものローブ姿ではなく給仕姿のニアスが魔法を使って運ぼうとしたので釘をさす。

不貞腐れて盆に品を入れてヨタヨタと運ぶ姿はこちらからみても危なっかしい。


当然、ここにいるのはエストレア達だけではなくこの場の隅でモップを使って掃除するジッド、レンヤの姿が。

彼らのそばにこの『仮設施設』である食堂の女将が鞭というか、かなり厳しめに声を飛ばす。主に掃除の綺麗さでだ。


「くそ、なんで俺が………!」

「レンヤ諦めろ、こうなりゃ行くところまでやっちまおうや。」


「オラぁ!!ピカピカに磨くんだよ!!綺麗になったかどうかは舐めて確認しなっ!!!」


汚そう………だ。


彼らはここにいるが、そのほかにも仮の教会でアグニルとアンナ、リムの三人が信徒達の定刻の祈りや、炊き出しに従事しバイドとオルスト、今更駆けつけていたドラン、ガペットらが、フレニアと一緒に鎮火したウルマトの街並みの瓦礫撤去に戻ってきたウルマトの市民達と一緒に片付けに乗り出している。

そのほかの冒険者達もウルマトの復興作業に当たっており、強い日差しの中、汗を流して仕事している姿はかっこいいものだ。


どうしてこうなっているのかというと。


上位竜を倒すのに齎された被害額、その何割かが借金としてエストレア達に連帯責任として背負わされた、それだけである。


総額金貨6500枚分、日本円にしておおよそ6500万円。

この世界の通貨は金貨一枚が一万円相当なので計算がしやすい。が、こうしてこの場で働いたとしても1日銀貨1枚銅貨30枚。銀貨なが1000円に届くかどうかで銅貨が10枚で100円。

売上に応じて上がることがあるもののこのままではしばらくは借金は返せそうもない。


ことの始まりは、上位竜の首を落としてそのまま気絶し起きた後のことだったーーー



●●●





「知らない天井だ………。」


気がついた時、エストレアは知らないベッドの上で目を覚ました。窓が開けられ、カーテンが風に揺れて小鳥のさえずりが心地よく耳に触る。

ボロボロになったレザー製の一式や、外套代わりの赤い布地を纏っておらず代わりに白い簡素なワンピースを着ていて所々包帯が巻かれている。


ベッドから降りて窓の外を眺める。どうやら戦いの場となったウルマト市内ではないようで室内の装飾された壺やらを見るにウルマトの領主館の中のようだ。

避難した市民の中には領主館に行ったと聞いたからおそらくはそうなのだろう。間違っても、自分がクワイエット家の令嬢だからということではないはずだ。


………そもそも、ウルマトの領主であるカイアスとは一度しか会ったことがない上、当時はまだ3歳の時だ。覚えてもいないはずだといいな、と思うのだった。


それにーー、戦いの終盤まであった興奮に近い血の渇きに襲われていた感覚がない。首を断ち切った際に吹き出した血でも舐めたのか、定かではないが今のところ吸血鬼としての習性である吸血をする必要もなければ襲う必要もないことに安堵を覚えた。



コンコン、と軽めなノックと共に一人の女性、いや見覚えのある修道姿のリムが陶製の小鍋を乗せたお盆を持って入ってきた。


「あら、起きてたの?体は、大丈夫?」


ベッドのそばにある小さな机にお盆を乗せるとこちら側に近づいてくる。歩くたび、修道服を押し上げる凄まじい大きさの爆乳が揺れ少しだけ殺意が湧いたのはご愛嬌。


ーー本当に何食ったらこうなるのか。

だが、エストレア自身人のことは言えない。リムには到底及ばないが十分巨乳であるし、モデル顔負けのスタイルの良さがあるのだが悲しきかな、女として生きた年月が長過ぎたせいで女の性が優先されてしまっている。

紅 諸葉としての男性の感覚なぞ既にないに等しく紅流の経験と記憶ぐらいなもの。価値観も女性そのものだろう。しかし、この世界の男性がいくらイケメンだろうと、なんだろうと揺らぐ気がしないのは何故だろう。この国の王太子であるジェラルドは、小さい時から関わりがあるが世話の焼けるヤンチャな弟のようなもの。

それはさておき。


ーーいい加減離れてほしい。デカすぎる胸が頬と肩を圧迫して正直苦しい。


「リム、離れてくれないか。自分の体のことを考えればわかると思う。」


「あ、あら?ごめんなさい、離れるわね。熱はないから、多分大丈夫だと思うけど………ねえ、貴方なんらかの祝福とかお持ちかしら?あれだけの傷を負ったのに殆ど治っているし、後遺症もないから………。」


「祝福?何のことだろうか?察するに、加護とかそういう………類のものか?」


「そんなところね、出奔したとはいえ私、元は神聖国出身なのよ。元々、国の過激なまでの人間至上主義に嫌気が刺しちゃって………。」


もしかするとーー


「もしや、何年か前に失踪した聖女がいたと聞いたことがあるが……まさか……?」


「ええ、多分私に違いないわ。まあ、それはそうとして祝福を受けた記憶はない、のよね?なら、いいわ。朝食、ここに置いておくわ。食べ終えた頃合いを見てまた来るわね。」


そう言い残すと、パタン、と戸を閉め元来た場所へ戻っていった。階下ではどうなっているのだろうか。反響を使って把握したいが取り敢えずは、だ。


「麦のリゾット、か。仄かにリンゴを混ぜてるのかな。美味しそうだ。」


ーー朝の活力を得るとしよう。



ーーーー


ーーー


ーー




「ご馳走さま。」


食べ終えたエストレアは、一緒に置かれているミサンガのような麻布を桶の中に入れて濡らし塩を含ませて口の中を磨く。転生し、年月を重ねるにつれて色々驚くこともあったがまさか歯を磨くのにこれを使うとは思わなかったものだ。

戦国時代は、指に塩をつけて磨いたというし、歯を磨く習慣のなかった平安時代はお歯黒にすることで虫歯を防いだと聞くが。


んーーー、と伸びをして固まった体をほぐすと、ちょうどその時にリムが入ってくる。手には着替えと思われるものを持っているのでその辺気を遣わせてしまったようだ。いや、簡素なワンピース姿では外は出歩けないか。


「食べ終えたのね。ちょうどよかった。これ、よかったら着てみてね。ここのお古だけど綺麗に保管されていて虫にも食われていなかったから貴方の大きさに合うのを持ってきたの。」


「これは。かたじけない、好意に甘えるとしよう…………待て、何故に使用人(メイド服)?」


リムが持ってきたのは、黒のゴシックロリータ風のメイド服。よく、親友の慎也がメイドサイコー!とか言っていたが、メイド喫茶などで見られるタイプのものだ。正直言って若干男勝りな気があるエストレアには見合わないじゃないかと引かざるを得ない。

少しだけ、リムが笑っているように見えるのは気のせいか?


「ゴメンね、これしかなくて。私のところの修道服でも借りれればよかったんだけどご禁制でね。それと………これからの話でも関係があるから。」


「話?つまり、は?」


「取り敢えず、それ着てもらっていい?部屋の外にいるから着替え終わったら呼んでね。」


リムはもう一度、パタン、と戸を閉めて出て行く。今度は階下に行くことはなく扉の前で待っているようだ。


「うう、こんなの着たことないぞ………。でも、構造が一緒なら多分着れるはず。」


恥ずかしいが、これしかないなら………とその服(メイド服)に袖を通した。

結果から言えば、鏡を持ってきたリムに姿を見られながら服を直されたことを言っておく。若干、いたずらにあい、百合に近い戯れが起きそうなことも一応記しておく。



●●●




エストレアは少しスースーするこの服装に顔を赤らめ先導するリムを少しだけ睨みつける。先ほどの、言うには恥ずかしいことをされかけたこともあり警戒心むき出しだ。大胆な胸元は上側が丸出しで、秘部が見えないだけマシだが何があるか分かったものじゃない。


「実はね、あの後とーっても面倒臭い事態になってね……。領主のカイアス氏には絞られるし、飛んできたギルドマスターにはいい笑顔で仕事を追加されてたっていってたわ。それでね、この件に関係した私達皆が従事せざるを得ない状態になったわ。」


「どういう…………ああ、たしかにあれではな。」


疑問に思ったエストレアは、しかし外を見た途端に理解した。

障害物が多いほど良いため、あの作戦を立てたが実際はロクに立ち回れず街を大半を火の海に変えた上、上位竜の死体もそのままだ。


「それでね、聞いた話では全体被害額のうち、竜の処分と損壊させた建物分を多分2割が私たち全員それぞれに負担されることになったらしいの。」


「つまり、それは………。」


話を続けるうちに目的の場所についたらしく戸を開ければ応接室のような場に出た。

何故か、椅子に自分と同じメイドが座っていて何故かな、と思えば。


「え。リム、見間違いでなければあれってネロと、ニアスか?」


ガタガタと肩を震わせて、ついでにトマトのように顔を真っ赤にしたネロ?と思わしき使用人姿の少女。他のメンバーは前に見た冒険者としての装備ではなく動きやすい格好であるし、違いはわかりやすかった。


「ブハッ!!」


なんとも言えない空気の中、堪え切れなくなったのはレンヤだ。ローブ姿なのは変わらなく腹を抱えて笑いだす。


「なっ、兄貴!実の妹捕まえて笑うとかナシだろぉ!!」

「ついでにこのような事態でなければ、お前燃やしてた。仲間がいてよかったよかった。ね、エレン?」


「いや、笑ったのはエレンだよ。三人揃って使用人か、属性揃っていいじゃねえか。クール系、じゃじゃ馬、ミステリアス。いやぁ、人選に業が深いねえジッド?」


ニヤニヤしながら、目を細め不機嫌そうに相方の足をゲシゲシと蹴っている青髪の特徴の女性アンナ。それに反発するのがジッド。


「やめてくれ、さっきからアンナとか、ガペットとかドランとかから視線が痛くてな………。後、アンナ脛を蹴るな痛いから。」


「フン、ジッドの性癖は知ってるけどまさかエレンさんにまで手を伸ばすつもり?この色男!そんなに使用人がいいなら私が着てあげるのに!!」


「ジッド、アンナ痴話喧嘩は外でやれ。お前らの痴態見るだけで砂糖吐きそうなんだよ。」


「まあまあ、ドランさんも落ち着いてください。せっかく同郷の方もいらっしゃるんですし僕がこっち受け持つんで故郷の話でも弾んでは?」


「ナッシュ、お前黙れ。」


嫉妬に駆られるアンナに制止をかけたのはジッドらパーティーのお目付役になっているであろうドランである。

別に粉かけられた覚えもないしアンナの杞憂だと思うのだがこればかりはよくわからない。むしろ粉かけられそうになったのはナッシュだと思うのだが気にする必要もない。


「というか、なんで俺らがここに集まってるだろうな?普通、さっさとシェアトに戻ってるはずなんだが………」


「おーおー、高ランクともなればこういう場でも普段通りか。」


エストレアとリムの背後の扉から声がする。振り向けばあの会議室で見た大層な大斧は持っていないが特徴的な黒髪と狐耳、威厳の皮を被っていそうな顔というか態度、間違いようのない雰囲気。


「ギルドマスター………。」


「リムか。こう間近にみるといささか殺意が湧くな。その駄肉を、こう、引きちぎりたいくらいには、な。」


冗談なのに、自分でもそうしたいのだから不思議である。というよりギルドマスターが何故ここにいるのかということと自分達に何をさせられるのかというのを聞きたい、それがエストレアの本音であった。

その気持ちを汲み取ったのか、ギルドマスターのルディナは皆を視界に捉えて取り敢えず座れと言う。


その辺にあった椅子を集めバラバラにならぬよう配置で各々が座る。


「揃ったな?では今回の依頼についてだが。まず……………何をしているのだ、この、大バカ供ォォォォォォォォ!!!竜を倒せとは言ったが街を灰燼にしろ、とは言ってないだろうが!!!」


「いや、作戦を立てたのは……「言い訳するなネロっ!!」ヒャンッ!?」


「最終的に倒したから良いものの、倒した際の換金代とこの街の年間予算を吟味しても復興するのに最低三ヶ月、いや五ヶ月かかるぞ!!後始末する側を考えろ、小童供ッッッ!!!」


ゼェー、ゼェーと息を荒くしながら取り乱した息を整えギロリ、と睨んでくる。


「貴様らには、罰としてこの街の復興作業に従事せよ。異論は許さん、市民の指示に従って行え。だが、竜を倒した功績だけは別案件だからな、参加した連中、ここにいない連中含めて大幅にランクアップはするつもりだ。」


街への被害は甚大だが、竜を倒したというのは間違いのない功績であり冒険者しても誉れ高い事だ。ギルド貢献ポイントも凄まじく上がる事だろう。

なんでも、エストレアのような低ランク帯の冒険者は2ランクアップ昇進で試験は免除にしてくれるとのこと。


ーーこれは助かる。



「いいな、特にそこのエレン含めた竜殺しの貴様らはこのウルマトの街に奉仕するんだ。カイアスには定期的に連絡を受けとるからサボっているのも筒抜けなのも忘れるなよ?ーーーというのが本音だが街の方々から依頼という形で特にお前たちを対象に発注された。


エレン、ネロ、ニアスお前たちがそんな格好なのもそれが理由だ。」


「なんでだよっ!?」


「不本意極まりない……」


「成る程……。作戦立案者の私とで、街を灰燼にした原因の一人のニアスに派手に暴れたネロへのお仕置きも兼ねている、のか?」


ブーブー文句を垂れるネロとニアスとは別で原因が分かっているエストレアはただ受け入れた。


「なんだ、エレン貴様は分かっているじゃないか。お前ら三人が此度の依頼でいろんな意味で暴れてくれたちょっとしたお仕置きだ。」



これが顛末。そしてーーー


「ああ、エレンはこの依頼が終われば、ギルド貢献ポイントが溢れるだろうからランクアップも検討するといい。資格もあるし日が空いたら来るといい。」




●●●



「へえ〜、あんたらがねえ………。」


ゴゴゴゴ、という効果音が漂うそうな雰囲気を纏うオバちゃんが一人、後は厳しめな視線と好奇な視線と関心のない態度と分かれている。


ギルドマスターに連れられてウルマト市民達が避難生活する仮設集会所に来たエストレア達は彼らの視線に気づくとエストレアらの前に先ほどのおばちゃんがやってきて腕を組みながらなんというのか雰囲気だけで見下ろされてそうな感覚に陥った。


「此度はギルドマスターとして謝罪するとともに市民の皆様方はこいつらを復興作業に従事させるつもりですので徹底的に使ってくださっても構いません。」


「ルディナ会長、頭を下げなさんな。事前に避難できたからウチらは問題ないし、竜も倒してくれた。まあ、帰る場所が灰燼になったのはアレだけどね。一応、ウチら全員感謝してるんよ?復興も領主様が支援してくれるというしわざわざ連れてくることも……」


「そういうわけにもいきません。こちらも落とし前というのがあります。掃除、瓦礫撤去、魔物の討伐、全て無償で行わせますので。」


「そこまでいうなら、しゃあないね。使わせてもらおうじゃないの。だけど、ルディナ会長にも既に言ってあるけど復興作業の手伝いという依頼を申し出てあるからそれを受けてくれると助かるわ。」


「だが、それでは……」


「いいのよ、領主様も復興支援をしてくださると言われたし、なにより冒険者さんには色んな世話になっているのにタダ働きさせるのはうちらが悪いことしたみたいじゃないか。どうだい、受けてくれないかい?」


冒険者とは互いの利益が合致するから請け負ってくれる存在だ。なのに、冒険者側に非があるとはいえタダ働きをさせるのは冒険者ギルドとしての教義が成り立たない。

けれど、シェアトの冒険者ギルドトップとしては責任を取らせたい気持ちもある。街の人たちはそれを汲んだのかは不明だが市民の声としてカイアス直々の印鑑を押された依頼がルディナの元に来たということだ。


依頼という形ならば双方の利益も合致するし、冒険者たちの面目も保て、ルディナギルドマスターも彼らにタダ働きさせそうになったという外聞の悪いこともない。


「受けます!」


誰が言ったのか。けれど、それだけで十分だった。目の前の彼女はいい笑顔でウンウンと頷きルディナギルドマスターと握手を交わすのだった。


期間は予想とは短めの半月ほど。内容は、瓦礫撤去の手伝い、炊き出し、礼拝、食堂のスタッフ、施設の掃除。二日ごとに役割を分担するという事だった。


ーーー

ーー



あれやあれよと事が進み、エストレアとニアス、ネロはメイド服姿のままおばちゃんに連れられて木製のジョッキの看板が立てられた施設に入った。まだ、人はおらず厨房も静かなので開店前なのだろう。というよりこのおばちゃんは女将だったのか。


「さて、来てもらったはいいけど。どうしようかねぇ。んーーー、そこの赤髪の子、アンタ名前は?」


急に指名されたが迷う事なく、エレンと答えるエストレア。すると女将は考える仕草をするともう一度指差してきた。


「アンタ、何が出来る?」


何が、か。随分と返答に困る質問を投げかけられたエストレアはこの施設を見渡しこれは試験なのだと理解した。

このような場において投げかけた質問は三つのうちどれをこなせるか、だ。調理できるのか、接客ができるのか、掃除が出来るのか。

一応、全てこなせる自信はある。料理もレシピを見せてもらえれば再現は可能だし、創作にしても材料で決めればいい。


が、こう答えるのがベターだ。


「問題なくこなせます。」


「なら、厨房に来てもらおうかな。えーっと、後の二人は接客やってもらおうじゃないの。練習させるからね?」


そして、レシピを渡され作ってくれと言われ鍋を振るう。結論から言えば、合格であり「明日からお願いね。」と言われ今日のところはじっくりと休むことが出来た。

けれど、ネロやニアスはこういうことをしたことがないのかかなり難儀している様子であった。


そして、次の日の昼には冒頭のようなやり取りがあり

一日目、二日目とエストレアは問題なくこなすことが出来た。

ほかの二人も、危なっかしいところもあったが問題はなかったようだ。



ーーーー


ーーー


ーー





「ありがとうございましたーー!」


ネロが店の最期の客を見届けると空になった机にグター、と倒れかかりニアスは既に目が死んでいる。

エプロンをつけていたとは言え使用人姿(メイド服)は油汚れがついて今夜洗濯しないと、と自分に言い聞かせた。



「お疲れ様、取り敢えずギルドマスターは無償で言ってたけどこれ、お給料だよ。明日は別の仕事を頼むかもだから頑張りなさいな。」


麻袋に入れられた硬貨を手渡されネロやニアスにも渡されている。

外はもう真っ暗で明かりがなければ何も見えないだろう。

女将に礼を言いつつ、ランタンを灯して領主館へ進んでいく。


「つっかれたーーーーッッッ!!!」

「同感、二度とやりたくない。精神へのダメージ増大……。」


二人とも大袈裟だなぁ、と思うのだが彼らは多分こういうことをした事がないからだろう。

だから、あんなにもクタクタなわけだ。


道中、ランタンを持って歩く時彼女たちは笑っていた。いつもなら、嫌味やらなんやらと喧嘩があったものだがこの時は内心犬猿な中であるニアスとネロは疲れ切った体を互いに預けながら、それでも、笑いあっていた。

ほかの彼らは既に戻っていて後始末していた彼女たちが最後だ。彼女らの手には店で作った賄いがあり、今夜皆と食べるつもりである。


「そういや、エレンもこれ終わればランクアップだろ?今一番低いランクのFからDもんな。良かったな。」

「ん、でも私たちにはまだまだ遠い。頑張ってね。」


「ああ、貴方たちに追いつけるように頑張って見せるとも。」


真っ暗な夜、輝く月の光が雲の隙間から漏れ出て領主館を照らし出した。

彼女たちは笑いながらそこを目指すのだった。







ーー続く。

後一話ほどでこの上位竜は終わると思います。





※オマケ。以下台詞のみ。



「ああ、ダメよ暴れちゃ締められないでしょ?」


「紐を締めるだけなのに、どこを触っているんだ!?ひゃっ、胸を触るな、尻を撫でるな、ちょっ、ああ!?」


「敏感なのねえ………。うふふ、お人形さんみたいで可愛いと思ったけどここまで感度いいなんて………ふふふ、そぉ〜れ、こちょこちょこちょ〜。」


「ちょ、やめて……くすぐられると、ホントダメなんだ………ああっ!?いやらしい手つきで背中なぞるなぁ!!」


「や、やぁ……ダメ、ダメ……ガクッ。」




我が主人公は、くすぐりに弱い。前世から変わらず。


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