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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第1章 目覚めの王国
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Chapter5-6ーChapter end



シェートリンド王国 会議室卓上


昼だというのに、黒いカーテンで室内を締め切っており、光源は円卓に備え付けられたロウソクのみ。細長い円卓に何人かの官僚が手元の資料を元に頭をひねっている。

目に悪くないのだろうか?と心配されるのだが表に出せない会議は隠匿されるためこのような場を用意される。


「うーむ、ファンテリム帝国の軍事拡張は目に見えて本格化し始めたなぁ。逆にベル・クラウディア帝国は未だ内部の揉め事で儘ならぬ状態か。これは近いうち滅びるのでは?しかし‥‥‥兵糧の数が例年に比べ三倍に跳ね上がっているのはどういうことなのか?」


「うちの影のものに調べてもらったが‥‥‥、どうやら海洋連合と組んだらしい。ファンテリム帝国は地図上だと東に海に面している。おそらくだが軍事拡張の大半は艦隊に向けている可能性が高い。」


海洋連合。


正確にはバルセゥト環海洋艦隊国家連合の略称だ。常に海に浮かぶ船の上で生活をし、海と共にある列強の一つ。海そのものが彼らの活動範囲であり、基本的には大陸側には無干渉だ。

ただ、船の生活だと野菜等に不足するために定期的に陸に上がり、食糧を確保する。今は統制されているが過去は暴力、略奪が横行しており文字通り海賊と変わらなかった。


「しかし、帝国は海に進出するのか?内陸ではなく?」


「モートハク公、おそらくだが海を使うことで内陸側の我々の意表を突き進行するつもりだ。距離はあるが海を使えば神聖国のような余程の内陸ではない限り進軍は可能だろう。」


「質問を、ガルトン卿。仮にこれが事実だとして‥‥‥我が国に進軍はあり得るのだろうか、これでも我が国は内陸だぞ?」


「ブルック侯、十分あり得る。影のものによれば、戦車なるものを開発したらしい。おそらく上陸したらそれで進軍するだろう。」


ガルトン卿という今回の議会の副長は青緑色のオーブを背後に控えていた黒服の男から受け取ると魔力を流し込み、壁に投影する。

『記録封じの水晶』

魔力を込めると込めた魔力分の時間、水晶に記録することが出来る早い話ビデオカメラである。


壁に映されたものは、戦馬二頭に引かれた櫓と馬車の中間のようなものだ。車輪は畦道でも進めるようスパイクが施され、すれ違いざまに敵を引き切るのだろうか垂直に付けられたスパイクがある。

車内は外見からすれば四人、御者は車内から操作するのだろうか、御者席がみえない。

これが大量に製造されているというのだ。

実践投入されているところを見てはいないので推測になるが戦場では矢避けのエンチャントが掛けられるだろう。そうなれば事前の情報がなければ新兵器に他ならない。そう、これが本物であるならば、である。



「映像としては本物だが、囮だろうな。新兵器であるならばあの皇帝だ、短気だが慎重な奴のことだ。本命は他にあるとみていいだろう。第一、この映像の情報は他の国にも伝わっているはずだ。」


「帝国に関してはここらで締めよう、次の議題だ。先日の件について各貴族の領土について保安面での影響はどうなっている?」


まずは西側からモートハク公、と言われ手元の資料を見ながら保安面での影響を報告をしていく。


「バジル男爵領、ホッセ騎士爵領、グランセルマ辺境伯領、トルクセラ伯爵領は治安に関しては特に問題はなさそうです。逆にルートゼラ公爵領、バルムント侯爵領、カムラック辺境伯領は産業が傾き、貧困が増加、山賊などが増えギルドから陳情が絶えません。」


また、という前にガルトン卿から遮られる。


「それだけで十分だ。すまないが、時間が少し押している。ブルック侯、東と南の報告をたのむ。」


「はっ、東と南ですがやはりクワイエット公爵が一番ひどいです。当主は酒に溺れるほどに‥‥‥、無理はないのですがそれにつられてゴードン男爵、ヘルピュライ侯爵、エルクラッド伯爵などが領土内に引きこもってます。クワイエット公爵はアイアノス将軍がカウンセリングをしているようですが、政務に復帰できるかどうか‥‥‥。その治世のせいでスラム街での暴動が発生しています。」


クワイエット公爵。

軍事に多大な貢献をした宰相も選出したこともある大貴族。元はシェードリンド王国の王弟から生まれた家柄で、アイアノス将軍と仲も良く国王陛下の信頼もその成り立ちもあり厚い。だがやはり印象的なのは社交場の花と讃えられ、時折見せる荒々しさから戦乙女と呼ばれた令嬢、エストレアだろう。


可憐でありながら、芯の入った覇気を感じ取れる姿に見惚れるものが多かった。この場にいる者の何人かは自分の息子を勧めていた記憶がある。

将来国に大きく貢献をしてくれると国王陛下やその他の大臣、はたまた周辺の小国家から嫁いでくれるのであればと期待されていただけに件の襲撃による行方不明は痛手であった。

今なお、白薔薇騎士団一個小隊が捜索を続けているが進展の気配がない。


「わかった。最後に私から報告しよう。王都周辺、尚且つ城塞都市ウルマトについてだが半月ほど前ウィルゼリン大樹海から無数の魔物の群れと上位竜の真紅の姿が確認されウルマトを襲撃したらしい。ギルド本部のあるシェアトからは竜殺しを派遣して対応にあたり討伐されたそうだ。信じがたいがね。」


「「「!!?」」」


まさかの爆弾が投下された。


「ちょっ、待ってくれ!目撃された時間と討伐された時間に差がないじゃないか?!」


「そうだな、発見されたのが討伐された時からおよそ五日前。斥候に出た冒険者パーティーを壊滅させ、迎撃に出たウルマトは上位竜ということもあり街は復興が必要なほどに被害を受けた、らしい。後ほどギルド本部から詳細が来るだろう。不味いな、今日の会議は此処までだ。次回の議題は税を上げるか、否かを問う。それまでに資料を揃えてくれ。では閉会だ。」


ガルトン卿は胸元から懐中時計を取り出し、手元の資料をトントンと揃え会議室から出て行く。






「ふう、おい。今日の会議で黒だと思われるのは何人だ?」


会議室から出て、大臣に割り当てられた応接室に入るとガルトン卿は背後の影の者に確認をする。


「二人はほぼ確実かと。モートハク公様側にいたブルース伯爵様、エイゼンバッハ男爵様です。確定はしてはいませんが容疑がありそうなのはブルック侯爵様のお隣にいらしたヴァンムス子爵様です。」


「ご苦労。引き続き調査を続けよ。」


「御意」


そのような声が聞こえたかと思うとすぐに人の気配はなくなる。葉巻をケースから取り出し火の魔法で着火し一服すると机の上に置かれた資料を眺めていた。


「今まで、甘い蜜を吸っていたんだ。そろそろツケを払ってもらおうか………。ファンテリム帝国、ベル・クラウディア帝国の戦争が再び活発化すれば飛び火しかねないからな。………守ってみせる、この国を。」


『シェートリンド王国所属大臣名簿 : 売国行為証拠証明一覧』



●●●




あれから半月ほど月日が経ち………。


「半月間、お疲れ様。あんた達のおかげでだいぶ片がついたよ。これで依頼も満期完了だね。」


「市民達を代表してこのカイアス、改めてお礼申し上げる。上位竜を倒し、その被害もありましたが………あなた方がいなければ郊外まで被害が及んだことでしょう。」



場所は、領主館客間。


交易都市ということもあり、ウルマトの領主館の内部は客間でも、いや全体的にしつらえた装飾品の数々はカイアスの確かな目で選んだ物ばかり。


磁器の壺はわずかな青みを持ち、金と青の模様のコントラストが美しく、自分たちがいる部屋に敷かれた敷物は赤を基調として宝石を編み込んだウィルゼリン大樹海付近にある小国群産のものだろう。

模様の形から、この大陸に住むエルフの仕事だろう。


窓に備え付けられたカーテンも上質な絹で作られ、防虫対策に魔法がかけられている。どれも一般人には届かぬ代物でそんなものに囲まれた一室。

普通なら、尻込みするような場違いのようなものだがエストレアは事情があったが貴族出身、他の竜殺しの冒険者も権力者の依頼を受けたこともあるはずなのでなんら問題もない。


唯一場違いと言えるかもしれない依頼を発注した女将がいるが、彼女は市民を代表としてきておりまた、女将と領主のカイアスは古い知己であるという。


ーー成る程。


「こちらが今回の依頼の報酬です。竜種討伐も計算しておりますのでお間違いのないよう………。」


トレーを運ぶメイドを目配りするとメイドはそれぞれ一人ずつトレーに乗せられた絹袋を手渡していく。

中身は金貨、それも一般に発行される金貨ではなく純金貨だ。一枚金貨の4倍の価値、一枚四万円。これより上には白金貨プラチナム虹金貨マナリナムがあるが国家運営用のお金なため市井には出回ることはない。


「そういえば………、この街は交易都市だったな。その、既に契約は終わったがこの街にはそれなりに物流があったはず。大部分が焼け、荷物は燃えたはず。であればこれほどの大金は………」


エストレアは受け取った金貨を袋越しに触ると思ったことを口にする。上位竜との戦闘は街を灰燼にしてしまうほどの苛烈さだった。

交易で儲かった成果も、何もかもが燃えたはずだ。なのに、竜を倒したというだけで純金貨入りの袋を報酬として渡してくるとは。


「ええ、たしかに。一からやり直しな程に街の成果は消えてしまいました。ーーですが、商売の街です。こんなこともあります。そう思って開き直るしかありません。それにあなた方に渡したお金は私の私金です。何ら問題はありませんよ。」


「領主様も、うちらもさっきも言ったけど感謝してるんだよ。あんたらが踏ん張って竜を倒してくれたから街だけで済んだんだよ。ものは無くなるんさ、けど、人がいれば取り返せる。商売はそういうものなのさ。」


バンバンと、カイアスの背中を叩き豪快に笑う女将さんに苦笑するカイアス。

その光景は夫婦みたいで、馴染みの間柄みたいだった。


「さて。私も予定が入っている。そろそろ来る頃だからお開きにしようか。ありきたりな台詞だが、もう一度言わせてくれ、竜から街を守ってくれてありがとう。」





ーーー


ーー




「終わったーーー!!」


「ああ、今までで一番疲れたぜ。」


「今日は帰る。師匠に呼ばれてるし。どうせ、お説教だしね。じゃあね。」


「あ、待てよ!…………ずりーな。やっぱ魔法使いだと空飛べて羨ましいわ。」


領主館の門を開けるとスイーっと小柄な体が宙に浮かびそのまま空の向こうへと消えていく。ニアスを呼び止めようとネロが声をかけるものの届くことはなく。代わりに石ころを蹴るように廊下をいじけるように歩くネロ。


「ニアスが先に帰ったかー。ま、それも仕方ねえな。」


「ふん、オルスト。あれは一人でいたいのさ。今更恥ずかしくなったんだろ。」


「そうかねえ?ん?誰か近づいて来る?………馬が五頭、足音が三人、八人?」


オルストがニアスが消えた空を見上げ、バイドが彼女の心境を図る。それに、ジッドが曖昧に相槌を打っているとジッドは向こうから、馬の蹄の音が聞こえてくるのを感じた。


「なあ、今時馬なんてここに来る意味あるか?」


「カイアス卿の客人だろうな。ああ、この街を襲った竜についてどこかの、多分王都の騎士様が来たんだろう。」



やがて、音はおおきくなり、目に見えてくる。白銀の鎧に薔薇の模様を中央に置き金髪、青髪、白髪、黒髪、赤髪……を持った女性達。

一目見るだけで美人とわかる風貌に、隊を表す旗も赤い生地に白い薔薇が咲く。武装も、白薔薇にふさわしく、槍も盾も白銀に輝き、陽に照らされて側の輝きをより一層増している。


「マジかよ、白薔薇騎士団のお出ましだ。」

「あいつら、王都警備だろ?何でこんなところにいるんだよ。」


「冒険者か。見覚えがあるぞ。竜殺しの称号持ちだな?道を開けてくれ、カイアス卿に用があるのでな。」



声を発したのは、先頭に立つ女性だ。白薔薇騎士団の第四分隊隊長、レイオネア・カーヴァリス。金色の髪は、風になびき厳格な性格と時折見せる柔らかい笑みに隊の中でファンが多い。騎士団長を務めるフローラには流石に敵わないが。


見覚えがある。というより、顔馴染みだから下手に顔を合わせると露見しかねない。それに、随分と久方にあった気がする。


「(フードを被っていてよかった………。)」


「はいはい、うちらも用が済んでるんでね、言われなくても退きますよ。」


「懸命だ。行くぞ、お前ら。」


はい!と揃った声を聞くやエストレア達の側を通り抜けて行く。

が、レイオネアは最後尾にいたフードを被っていた彼女を見ると馬の歩みを止め、エストレアを見下ろしてくる。どうしました?と部下達が聞いてくるが先に行けというと改めてフードを被ったエストレアをじっーと見る。


「なんだ?」


「何処かで聞いた声だな。ああ、聞き覚えがあるとも。だが、早とちりはいけないな。悪いと思うがフードを取って貰えるか?」


びくっ、と心が跳ねた気がする。

が、気取られたことはないはずだ。だが、いつまでもこうしているわけにはいかないだろう。


ーーどうする。


「別に貴様をどうこうするわけではない。が、気になったまで。私の馴染みのある方とそっくりな声だ。少々込み入った事情故、確認したいために、尋ねているだけだ。」


「(一か八か。こうするか。)」


ファサッとフードを取り、長い紅い髪が風に吹かれてなびく。

両者との間に1秒か、10秒か、1分か。わからないが沈黙が続く。


「……………!いや、見間違いだったらしい。失礼、こちらが一方的に尋ねてしまって。では、さらば。」


最初の息を飲むのは騎士団達が探しているクワイエット家令嬢に出会えたのではという期待。その後は、自身が知る特徴と違っていたから。


「(目が違っていた。あの方は、翡翠の瞳を持っていた。間違っても真紅ではない。よく似た別人だ。それに………)」


ーーあそこまで、鋭利な気を纏うはずがない。


レイオネアは馬を駆け部下達の元へ合流すべく彼らの元を去る。

けれど、彼らが見えなくなるまでずっと、後方を見つめて目尻が熱くなるのは何故だろう。


別人であるはずなのに、こうも確信が持てないのはレイオネアにとって初めてのことだった。



●●●





『ハアッ、ハアッ、ハアッ…………!!』


『待ってよ、お姉ちゃん……!』

『走るの!せっかく逃げられたのにここで捕まるなんて嫌でしょう!?』


『どこ行きやがった!!あのクソガキ共ォォォォォォォォ!!!』



街の裏手を走る人影が二つ。

月の光に照らされて浮かび上がるのは、小柄な子供。見た限り双子であるらしく、濡羽色のショートにやや黒ずんだ茶色毛のある肌。

妖かしく光る鬼灯のような赤い瞳は知性と隠された狂気を内包する。


何より特徴的なのは明らかに長い耳。俗に言うエルフ系統の特徴的な耳だ。

外見的年齢は11〜12歳前後。ボロボロの布を服代わりに纏い汚れた手は互いに握りしめ絶対に離れないというように。


彼ら姉弟は、見ての通り達の悪い奴隷商人から売り手に引き渡される寸前で偶然脱出に成功しこうして街の中の路地裏を駆け抜けていた。

商人の下にいた彼らは満足な食事にありつけず、種族的特徴故、頑丈すぎる枷をつけられていて力任せに砕くこともできなかった。

今なお、飾りになっているが手首にはその枷が付いていてぶら下がる鎖がジャラジャラと音を立てている。


ここは、路地裏。または、スラム街。表には表の支配者があるようにここにはここのルールがあり縄張りでもある。


『ハアッ、ハアッ、ハアッ!!』


「おーおー、どこ行くんだ?お嬢ちゃん、お坊ちゃん?」


角を曲がった姉弟はそこでたむろっていた柄の悪い男たちに見つかり立ち止まってしまう。急がないといけないのに………と後ろを常に警戒しつつ前を見なければならなかった。


「お前ら、脱走した奴隷か?引き渡しゃ端金になるかもなぁ?」


『っ!?』


身構える姉弟。冗談じゃない、なら、ここで……そう思考し、行動に出ようとした時一人が奥にいた誰かに声をかけた。


「ボスー、どうしましょうこいつら。外に放り出します?」


「………。」


奥からは、彼らの3倍はあろうかという2メートル超えの高身長、筋肉質な男。ここ、路地裏を統制するボスを務める男であり奴隷など多くを売り飛ばしたりした。


「んーー、逃げ出すってことはよほど酷え商人だったわけだ。おまけに枷なんかつけちゃってよぉ〜。ま、枷はしょうがねえ、だってダークエルフなんだからな。」


力任せに彼らのボロボロのフードを剥ぎ取ると人間たちの目にはさっき上げた特徴が写り同時に厄介なやつが来たと言わんばかりに警戒心をむき出しにする。

逆に路地裏の住人はダークエルフであると知るや危険物を見るかのように若干引き気味だ。


「おう、お前らこいつらは脱走奴隷だ。なら、クラトンとこの売り場に連れてけ。まだ、子供だしな。ダークエルフ特有の怪力も十分に引き出せんだろ。」


『っ!』


「おう、逃すとでも?お前らが逃げてきた商人からは助けてやるが奴隷だったら俺らのルートから入ってもらうぜ。それがここでのルールなんでな。」


鉄を編み込んだ猛獣捕獲用の網を持って来させ勢いよく姉弟に投げつける。暴れるたび、網はより複雑に絡みつきやがて、団子のようになって動かなくなった。

出来るのは、声を出すことと僅かに身じろぎすることくらい。


『は、離せっ!!』


『や、やだっ!!』


「く、子供でも十分怪力じゃねえか!一人に五人で抑えろ!!」


『んーー!んーーーー!!」』


二人は、路地裏の住人達に連れていかれて闇の中へと消えていった。

後に追いかけてきた小太りな男が、双子を見なかったか?と銀貨数枚渡してきて情報を聞いてきたが、端金数枚で応じるつもりはないらしくリーダーの男は「知らねえ。ここに来てもいねえし衛兵の所でも行ったんじゃねえか?」と答えなかったという。


小太りな男はみすみす商売道具に逃げられて歯ぎしりしながら路地裏の元来た道へ戻っていった。その後、その商人を見たものはいなかったという。


その商人が、引き返す時にリーダーの男は口元がニヤけていたことはついぞ知ることはなかった。






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