Chapter3-5
「ふう、さっぱりした。」
風呂上がり。ホカホカと温まった体を夜風が吹き付けて気持ちいい。
着ていた、というよりあの洞窟から拝借した装備や服を風呂屋に預けて支給してくれた服を着て出て来たのだ。
この世界、この街では風呂を営業する店では客が着ている服を預かり、綺麗にしてくれる制度がある。
つまり、一種のクリーニングである。
預けている間は、預けた先から服が支給されそれを着て生活する。預けた服は二、三日あれば綺麗になっているのでそれほど時間もかからない。むしろ、この世界の衛生基準的には早い方だったりする。
一方、支給された服は白を基本とした古代ギリシャの女性衣装、ペプロスに似た服である。
短くたくしあげており、冒険者である女性には活発に動けるようこうした軽快な着つけがされている。
また、今は夜なためか風が吹くと寒いため上着等も貸してくれる。
「エレンさんって、体つきいいですよね、羨ましい…………。」
ジーっと見つめられているのを感じ視線の先を見れば同じ格好したアンナが食い入るように見ている。
この服装は、意外と肉体のラインが出やすくこの歳にしてはかなり成長しているエストレアの漏れ出る体つきは一苦しい。
「ばっ、食い入るように見るな!上着もっと借りれば良かったかな………。」
やがて、自分とエストレアの体をまじまじと見つめ続けその手をエストレアの見事な双丘を鷲掴む。
「エレンさん?……………それ、分けてくれませんか?」
「血走った目で近寄るな!!え、ええい、捥ごうとするな!痛いから!!」
「許せないんですよ!!こんなに大きい人見てると!!モナさんとか!ジャーフルさんとか!!胸の大きい人は羨ましいどころか殺意がふつふつと煮えたぎってくるんです!!」
掴みかかったアンナを振り解くべく、けれど力を出さぬよう加減しながら抵抗するものの………もはや執念とも言えるほどアンナの力は凄かった。
「あーもう!!知らないわよ!!お願いだから!離れて!!」
「いやです!!この双丘もぎ取るまで離れません!!」
「周囲を気にしろ!!」
わずか二軒隣にかかわらず到着するのにかなりかかることになった。
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「何があったのかわからんけども。取り敢えず向こうのお手洗いで服直してきな。その格好じゃお客さんにゃ目の毒だよ。」
「「はい。」」
ようやく恰幅亭に戻ったエストレアとアンナはある恰幅亭の女将に咎められるほどに服が乱れに乱れており、エストレアは汗だくで着崩れて見える白い肩とうなじが艶めかしい。
そして、エストレアほど乱れていないが、アンナも露出した二の腕が、背後の三日月の光を受けて美しく光る。
それを台無しにするほどに顔はホクホク顔だが。
着直して、二人して戻ると、すでに彼女たちの席がジッド達に確保されていて彼らのテーブルには料理が並んでいる。
どうやら、待っていてくれたらしく、ジッドが手を振ってここだぞー、と手振りで呼んでいる。
席には、ジッド、ナッシュ、ドランが座っているが、見慣れない人物が二人、男女が座っていてエストレアをまじまじと見つめている。
見つめ返すと二人は手を振って会釈してくる。
「おや、来たね。そら、すでに出来たから熱いうちに食べるんだよ。そして、ジッド坊、残すんじゃないよ、わかったね?」
お盆にのってきたのは二人前はあるんじゃないかというくらいの分量の料理たち。冒険者御用達の宿なのか料理の量は多めのようだ。
「そらあ、残すわけないじゃないですか!」
「ジッドおめぇ、毎回調子にのって残したの忘れたのかよ?」
‥‥‥ジッドは前科持ちのようだ。それも毎度の事らしい。呆れた様子でドランがため息をつく。
「う、今日こそ食い切ってやる!ウオオオッッッ(ガツガツ(ウプッ))」
いわんこっちゃない。というよりかきこむから食い切れないのでは?と思うのは気のせいだろうか?しっかり噛んで食べればいいのに‥‥バカなのだろうか。
「「「バカだな(ね)(ですね)(さね)」」」
「う、それより、………水、水、水ぅ!!!」
順にドラン、アンナ、ナッシュ女将が声を揃えた。というより心を読まないでください。
涙目になって水を求める叫ぶジッド。他の皆が笑っているところを見るとこれもいつものことなのかな、はたから見れば弄られているだけだろう。
「ふふ、仲がいいのだな、君たちは。正直羨ましいよ。」
エストレアはかつての自分にああやってふざけあう友がいた。今は世界が異なるために会うことはない。
するとアンナがエストレアの腕を掴み自分たちの席へ移そうとした。
「ん〜〜〜、ならエレンさんも混ざろうよ、女将さ〜〜ん、エールちょーだい!」
「あいよ、待ってな。」
程なくして人数分のジョッキが運ばれてくる。この時に飲んだエールはエストレアの中で出会った時のスープと同じくとても美味しかった。
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「初めまして、ジッドから聞いているわぁ。私はガペット、ガペット・ランドールよぉ。んーーー、なんて可愛らしいのかしらぁ、お人形さんみたいねぇ。」
「初めまして、エレンさん。同じジッドから聞いてます、アグニル・ベレアです。アグニルと呼んでください。同じ女性として仲良くしてくれるとありがたいです。あ、一応レンジャーを勤めさせてもらってます。」
まず驚いたのが、会話だとわかりにくいが男が下手な女口調でいわゆるオカマ、筋肉隆々としている男がオカマ口調だと口をあんぐりせざるを得なかった。
もう一人は、これまた珍しい亜人の兎人の綺麗な女性だ。切れ目の瞳はクールな雰囲気を出しつつ友好的な雰囲気も出す。
白い兎耳がピクピクと動き、グラスを煽る様はとても綺麗だ。
「っグホオ!?ゴホ、ゴホ!?何よこれ!!誰よ!私のグラス、火龍吟醸酒じゃない!!」
ぐい、と煽った直後に火が吹くくらいに真っ赤にした顔でブーー!!と吹き出したアグニルが。
「あ、それ私ぃ、ヒック………!」
「誰だよ!ってか、お前かよアンナ!!火龍吟醸酒なんて頼んだバカは!!金欠にさせる気か!」
アンナに珍しくきつく言うジッド。確かにアンナに非があるだろう、自業自得である。
なおどうでもいいことだが火龍吟醸酒というのは火を操ることに特化した竜種の鱗を寝かせる前の酒に一枚入れて寝かせたもので、ウォッカと言わないがかなり度数は高い上に希少な酒なために値段も相当高い。例を挙げるとすれば、ぐい呑み一杯で銀貨50枚、日本円で5000円である。つまり半金貨と言っても差し支えない。
なぜなら、魔法酒であるから。魔法酒は魔力回復の効果がある上に魔法の媒介としても使えるからだ。
ぐい呑み一杯で半金貨とは‥‥これいかにだが、効果を知ればなるほどと思う。
「あらま、いつのまに。アンナ、あんた後で払いなよ?うちの秘蔵の酒いつのまに持ち出したんだい?」
奥では、隠していた酒を持ち出された女将がアンナを見てやれやれと肩をすくませていた。
「うーーん、もっと飲むのよ!!ジッドのバカぁ!!私だって成長するはずだもん!!えい!」
「ば、ここで脱ぐな!!おい、手伝え!!」
いいぞー、やれー!とヤジが飛び、酔っ払い半裸になったアンナをこれ以上脱がせまいと羽交い締めにするジッド。
ほろ酔いになったドランも手を貸さずに頑張れーと応援するだけで一切手を出さない。
火龍吟醸酒を少し飲んだアグニルは未だ赤い顔でぐったりしていて、ナッシュが濡れたタオルで介抱し、ガペットは………酔った勢いなのか男をナンパし始めた。
今世でも、前世でもこんな賑やかな形は見たことなかった。大人になれば、飲み会等で見られるのか、いやしたら捕まるだけか。
そう、心の中でつぶやいてやれやれと混沌とした中心に向かって収集をつけるべく歩き出した。
「逝くか。」
最後の文は誤字にあらず。




