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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第1章 目覚めの王国
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Chapter3-2


○賑わいと冒険ロマン溢れる街



ズーーーーーン。


唐突だが、エストレアは金欠だった。

理由はごく普通に単純。


検問での入場料と一時的な市民権の発行で持っていた路銀使い切ってしまったからだ。

残るのは三日分の食事をするためのお金しかない。ギルドの冒険者登録なんてしたら、食費合わせて到底足りないのだ。


「ま、まさかあの衛兵あそこまでがめついとは………。絶対盛ってるだろう、告訴してやる……!!」


この世界でのお金の価値は金貨を除いて各国共通である。

金貨は国ごとに違うため、価値が変動しやすい。


堕落の梟のアジトから掠めた路銀は五年前の帝国製金貨だったことがわかり、一枚を鑑定したところ(これも手数料引かれた)今の価値だと半減だと判明、エストレアが正しく暗算して渡したのにもかかわらずさらに要求されたのだった。


「あはは、災難だったね。お金貸そうか?」


「う、うむ………。いや、ありがたいがちょっと、な。」


「大丈夫よ、エレンさんは悪い人には見えないから!」


お金を融資してくれるとアンナにいわれて、エストレアは遠慮がちに受けとる。


「これも、新人さんへのプレゼントだと思えばいいよ!!返す必要はないからね、ありがたくうけとりなさい。」


ポカンとするエストレアの手にズシリと手にかかる皮袋の重み。

ウィンクして既に進んでいるジッド達の後を追いかけたアンナ。ハッとすると駆け足で彼らの後を追うのだった。




●●●



城塞都市シェアト


第二の王都と言われるほど人と活気が溢れる、魔獣に対抗するために冒険者が有志を集めて建設した城壁に囲まれた街である。


もともとは稀に大森林からやってくる魔獣の暴走パニックトレインに対抗していた町々のハンターたちが町長たちを説得して合併し、生まれたのが冒険者ギルドの始まりだ。

その会議場所はかつての領主館で、そこに本部が置かれている。


シェアトは戦略上重要な場所で度々、シェートリンド王国は隣国のファンテリム帝国やウィルゼリン周辺諸国群にちょっかいをだされていた。


そんな中、冒険者とはいえ戦力が集まるシェアトに注目が集まるのは自然の成り行きだ。

ただでさえ魔獣に対処している上に周辺国のちょっかいを出されてはたまったものではないので外から来たものには検査が行われる。といっても"見破りの水晶"と精霊を使って嘘を暴いているだけなのだが。


活気があるためか検問所には多くの商隊や行商人、旅人がいた。

先程、彼らもお世話になったばかり。


ジッドやアンナたちはエストレアの冒険者ギルドでの登録の付き添いと依頼の報告に行くらしい。


「エレンさんは確か冒険者ギルドに登録しに行くんでしょ?」

街中に入るなりアンナが尋ねてくる。


「ああ、これから冒険者ギルドに行くつもりだが?」


「なら、私たちと一緒に行きましょ、ギルドの場所分かんないでしょ?ギルドに依頼達成を報告しなければいけないから案内してあげるね。」


「すまない、恩に着る。」




●●●




エストレアはシェアトに来たことはあるがシェアトの冒険者ギルドには来たことがなかった。


そもそも来たというより領主館にいたために街の様子を知らなかったのである。

行ったことがあるのは、領内の冒険者ギルドのみだ。


冒険者ギルドは割とすぐ見つかった。二階建てで周りをギルドのフラッグがはためいていたのでわかりやすく、大きな通りの行き着く先にあったからだ。


ギルド本部は旧領主館を再利用したものらしく、所々老朽化が見られた。


「ここがシェアトの冒険者ギルドだよ。登録は受付のあの子、エレーゼさんかモナさんっていう子でできるよ。じゃ私たちは別で報告してくるね。」


「すまんな、ここで一旦お別れだ。アンナが言った通りあそこで登録できるからな。」


「なら、僕は付き添いを引き継ぎますね。さ、行きましょう。」


ナッシュが木戸を開けて、エストレアが通りやすいようにエスコート、彼女が全体を見やすいようにナッシュは彼女の背後に溶けるように入った。


「ここがシェアトの冒険者ギルドにして本部、か………!」


「はは、新人の皆はそうやって呆気にとられるんだ。恒例行事みたいなもんだから、古株の冒険者とかそれを酒の肴にするんだよ。」


ナッシュと一緒にエストレアはギルドの中へ入っていた。

ギルドに入ると酒場と兼ねるように改装しているようであちこちで酒を飲む姿が見える。


「よう!!ナッシュ!!別嬪連れてデートか?ここはデートにゃ不向きだぜ?」


「こんにちは、フレニアさん。あれ?お一人なんですか?」


「おう!今日は冒険者じゃなくて、酒飲みに来てんのさ!!ナッシュも飲もうぜ!」


陶器の大ジョッキを片手にやって来たのは暗い青緑色の髪をボーイッシュに見えるようにまとめた身なりのいい女性がやってくる。


フレニア・バーレーン。


その人は、その背中に魔力の篭った大剣を背負っている。


「フレニアさん、残念ですけど今日は彼女の冒険者手続きの付き添いなんですよ。ほら、最近ボガートのバカの件もありますし。」


「あー、あいつか。また、やらかしたらしいな?懲りねえやつだよなぁ、そのうち資格剥奪されるだろ、あいつ。」


「と、いけない。エレンさんこちら、フレニアさん。同じ女性ですからなにかあれば聞いてみるといいですよ。冒険者としてもランク銀でしたっけ?」


「先週、金に上がったぜ?上位竜ドラゴンブルーぶっ倒した報酬でな。」

「え!マジなんですか!」


(上位竜………!この人が……。)


エストレアの視線に気づいたのか、フレニアはニィッと笑うと気さくに手を振って来た。



「見ねえ顔だな。こうして、周りから見られてるのに物怖じしねえしよ。なんつーか、オーラがよ。」


陶器のジョッキをグイ、と煽るとエストレアをまじまじと観察するように見てくる。


「まるで、貴族の名高き戦乙女そっくりだ。それとも白薔薇のひよっこって感じだな?」


「…………まるで意味が分からないぞ?どういう意味だ?」


「気にすんな〜。じゃーな。」


(戦乙女とか、その通り名は………私にとって(紅諸葉にとって)、黒歴史だというのに……)



その背後を見ながら、エストレアは逃げるように冒険者ギルドの受付に足を向けた。

すでに、先にナッシュが手を振って場所はここだと示していてくれていた。




「いらっしゃいませ、シェアト冒険者ギルドにようこそ。見ない顔ですね、ご登録ですか?」


「ああ、登録したい。頼めるか?」




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