Chapter2-6ーChapter end
「助太刀はいるか?」
そう問うた彼女にポカンとしていたが、意味を理解するとすごい勢いでうなづいている。
ようやく、現場にたどり着いたときには魔力切れを起こしたと思われる腰を抜かした魔法使いの少女に複数の群体鋼毛狼が飛びかからんとしていた。
よってエストレアがとった手段は腰の長剣を高速で引き抜き、左足を軸にして発勁の応用を利用した突き技、『紅流剣術・蛍光、飛沫槍』で吹き飛ばすことだった。しかし、吹き飛ばすだけではなく周囲の個体も巻き添えにしてしまった。
「わかった。離れていてくれ。少し、荒っぽくする。」
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新たな獲物と勘違いしたのか飛びかかる群体鋼毛狼。それを体を少しずらしてやり過ごすと尾を掴んで地面に叩きつける。
ズン!!という鈍い音と共にわずかに地面が陥没し、ヒビが起きる。
叩きつける際のダメージは握力で決まる。遠心力や重さも関係するが、大部分は握力だ。
この世界の魔法には、身体強化の魔法があるので魔力に長けていれば筋肉モリモリの化け物になる必要はない。
巻き添えになってないか確認するために後ろを振り返り尋ねた。
「そうだ、助太刀するといったが、その良かったか?乱入する形だったが………」
「あ、ありがとうございます。で、でもまだ沢山います。あ、あの‥‥その‥。」
どうやら無事だったようで安堵を伺えた。
「気にするな。それよりこれを片付けるのが先だ。」
チラッと見る限りまだ沢山いるようなので、殲滅に移行する。
しかし、エストレアが一歩踏み出したときには群体鋼毛狼は怯えた声を出し逃げ出そうとしていた。
当然逃すつもりはない。
腰を低く落として、つま先で蹴るとあっという間に逃げる群体鋼毛狼の群れに追いつき突入する。
『紅流武法:天駆』
『天駆』とは走る距離を点で捉えそれを1/1000にまで絞り込み、走破すること。これにより限界を超えた走りが実現できる。ルーツは中国拳法の修行、あるいは一流の武人が会得する縮地がモデルと言われているが詳しくは知らない。
群体鋼毛狼との距離を詰めると回し蹴りを当てながら、その反動を利用して長剣を一閃、真っ二つだ。蹴られた個体はミンチになりその衝撃波で逃げた個体も巻き添えになる。
「なあ、身体強化の魔法でもあんなことできるか?」
「無理だろ、少なくても俺らではよ。あー、でもギルドマスターなら出来るかもなぁ。」
「出来るかもしれませんね。だって、ギルマスってパンドラ戦役に人類側で参加してたんでしょ?なんでも、身の丈三倍の大斧で無双してた、って噂ありますし。」
彼女、エストレアが来たことで群体鋼毛狼の注意は彼女に向けられていたこともあり、彼らが苦戦していたこの戦いはエストレアの介入でことなきを得た。
しかし彼らはそしてエストレア自身も知らないことだが群体鋼毛狼の群れの一部、ある程度経験を積んだ実力のある群体鋼毛狼はエストレアの吸血鬼という存在を恐れ逃げ出していた。
「見事な剣さばきだな、どっかの騎士団見習いか?王都の白薔薇の新米とか。」
「どうでしょう、白薔薇ならもっといい装備しているかと。けど、女性騎士は白薔薇しかいませんからね。訳ありなのは確実でしょう。」
「ドラン、ナッシュ、アンナを頼んだぜ。あの子の助太刀してくる!!」
「あ、おいバカ!!ちっ、おいナッシュ、ポーチからポーションを浸したタオル寄越せ、それと………」
ジッドは一人で奮闘している彼女を見て自分たちだけ都合が良すぎると思ったのかバスターソードを持って加勢に出ていく。
残されたナッシュとドランは魔力切れを起こしたアンナに野戦治療を施すべく群体鋼毛狼が視界に入らない場所へと移動し、治療を開始した。
「はあっ!!!」
都合26体目。見た目の割に俊敏で、名の通り鋼鉄に比類する体毛のおかげで自身の持つ長剣だと技量と力任せでも斬り伏せれないため駆けつけてからまだ殲滅させれてない。
ーー未熟だ。
紅 諸葉ならばこうだったと思うが、この体はエストレアであり、紅 諸葉ではない。あくまで、紅 諸葉はエストレアが死にかけた時その意識と混ざり合った複雑な個性であるためだ。
自身の価値観や、知識、経験は紅 諸葉のもの。けれど、肉体はエストレアという少女の体だ。
吸血鬼という種族としてのチートじみた身体能力があっても肉体が知識、経験に追いつかないのだ。
「ゼリャアァァァァーーーーッッッ!!!!」
掛け声とともに群体鋼毛狼がバスターソードに押しつぶされてひき肉と化す。
そのまま返す刃で横一閃、切れはしなかったが、大きくまとめて吹き飛んでいく。
「よ、都合ついたから合流したぜ!!」
肩に剣を担いでこちらによって来る彼にエストレアはにこやかに笑う。
「貴殿に問いたい。どちらが先に多く倒すか賭けをするか?」
「んあ?賭けになんねえよ、それじゃ。向かって来るならともかく逃げ腰じゃなぁ……。」
「野暮だったか。七面鳥撃ちじゃ意味がないか。」
「七面鳥とかよくわからんが、まあ、腕は確かだし協力を敷く、って事で。」
互いにどこかわかるところがあるのか拳と拳をコツン、とぶつけて互いに剣を一閃、二人でこの場において獲物として狩られた群体鋼毛狼は全滅した。
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「終わったか。すまない、駆けつけておきながら……。」
「何言ってんだか。むしろ俺たちは感謝の言葉しかねえっての。あ、自己紹介が遅れたな俺はジッド、ジッド・スウェード。ランク銅の冒険者だ。よろしくな、ぁあだだだだぁ!?」
討伐が終わり、片付けや調査のまとめを終えて全てが終わる頃には日が傾き日没寸前。
夕焼けを見ながらエストレアの背後に人の気配を感じて振り返ればバスターソードを背負った青年がいた。
大柄な手を差し出して握手を求めて来る。それに応じ握り返すと前世なら腕がもげるんじゃないかってくらいにブンブンと振ってくるものだから思わず腕を極めてしまった。
「何をやってんだリーダー。まあ、駆けつけてありがとな僧侶のドランだ。そこのちんまくて女見てえのがナッシュ「死にてえのか、ものぐさ坊主。」毒吐くけどな。それと………。」
チラッとドランは馬車の荷台に寝かせられた少女、アンナを見るとポリポリと、頬を掻く。
「あの子がうちの魔法使いでアンナつーんだがあんたが腕を極めてるアホの幼馴染さ。魔力の使いすぎで魔力不足で寝てる。後で紹介するさ。他にもギルドに仲間がいるんだがそれも後だな。」
「私も遅れたな。エス……エレンと呼んでくれ。」
「そっか、じゃあエレンも流石に夜間に動くのもあれだろ?飯食うか?」
極めから解放されたジッドはエストレアに夕飯の提案をする。無論、回答はーー
ぐうううううぅぅぅーーー。
エストレアの腹の虫の声が物語っていた。
「ハハッ、正直なやつだな。ナッシュが飯作ってるから行こうぜ!!」
「あ、ちょっと待て!!引っ張るな!」
恥ずかしいのか少し顔が赤くなっているエストレアの腕を掴んですでに野営の準備をしているナッシュやドランの元へ引っ張っていくジッド。
この夜に食べたスープは何処か暖かった。
エストレアの偽名、というか略称をエストからエレンに変更しました。
どうですかね、内容は濃くなってますか?




