Chapter2-5
「総員、戦闘用意!!!」
数は30あまり。一匹でも成体ではエストレアの前世では軽自動車ぐらいの大きさに匹敵する。
それが、30の群れが下から駆け上がるように、ジッド達を獲物として見定めたようだ。
場所はさほど広くなく、結果として密集することになる。
「うわぁ、囲まれた………。」
「怯むな、目を離すなよ、離したら終わりだぞ………!」
「調査と魔獣討伐で調査中で同時にこなさないといけないなんて……メンドくせぇな。」
互いに背を預けて、いつでも向かい打つ準備は出来た。
アンナが杖を、ジッドがミスリルのバスターソードを、ドランは、布を拳に巻いて口で縛る。
ナッシュは低姿勢で腰にぶら下げているナイフに手を添えて。
飛びかかった一匹をジッドが一刀両断にすると、アンナが五発の火球を放ちそれぞれ直撃する。
落ち着け、こういう事態に陥ったら………!とそれぞれどう動くべきかメンバーは頭はクールに、体はホットにして冷静に動き出す。
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「いい朝だ、今日か明日にはシェアトにはつきたいところだな。さて、おや?」
洞窟のあるところから降って森のひらけたところまで歩くこと数刻前。獣を匂いを嗅ぎつけて茂みに入ると魔獣が複数群がっているのが見えた。
その中心には何頭かの一体あたり軽自動車ぐらいの大きさの狼が寝そべり子供と思われる若い狼がいた。
エストレアは茂みから注意深く観察するとそれがなんだかを知ることになる。王都お抱えの教師から教えてもらった身近にいる危険な魔獣に確かなかったか?
危険度ランクD”群体鋼毛狼"。単体なら差ほど強くないランクDだが群れともなるとランクはBにまでになる危険な魔獣と聞いたことがある。
「多いな、そういえば今の時期は………。」
教えてもらった中には、群体鋼毛狼は春の終わりと冬の初めに求愛行動をするために群れが周囲の群れを統合して一斉に求愛活動をするのだそうだ。
ランクAやSなど高ランク帯の冒険者なら魔獣の群れなど蹴ちらすことなど造作もない。
しかし、無視を決め込むにしても、この先行くためには次々現れる魔獣をどうにかしないといけないし、かといってこの時期に過敏になっている魔獣を刺激すると厄介でもある。
「どうしたものか…………。ん?剣戟の音、か?」
茂みからどうしたものかと動きあぐねているとキンキンと金属がぶつかる音を拾う。
加えて、目の前の群体鋼毛狼。
誰かが襲われているーー?
エストレアはそこから跳躍して一気に駆け出した。
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いま、俺たちは絶望の淵に立っていた。
今回、城塞都市シェアトから受けた山火事の調査という比較的簡単な依頼だったのだが‥‥…いざ現場に向かえば実際には恋の季節を迎えた30や40では効かないような数の群体鋼毛狼のオスの群れに囲まれていた。
「しくったな、すまんアンナ。こんなことになるなら受けなきゃよかったなと思うんだ。」
「ううん、ジッドのせいじゃないよ。誰も予想できないよこんなこと。」
飛びかかる群体鋼毛狼をバスターソードで斬り伏せるジッドが愚痴をこぼすと、魔法使いであるアンナがフォローする。
‥‥どうやらこういう危機的状況でも普段通りイチャつけるようである。たしかにこういう展開はあるにはあるが‥‥殴り飛ばしているドランのこめかみに青筋が浮かんでいる。かなり、イライラしているらしい。
「おい、そこのバカップル!!イチャついてねぇでとっとと倒せバカ!」
「「イチャついてなんかないっっ」」
人それをイチャつくという。
僧侶らしく回復をしたりしてこの場を維持したり、殴り飛ばして近づけさせまいと奮闘する中なのにドランはジッドとアンナのいつもの甘ったるい展開を見てしまい、辟易してしまう。なので口調が悪くなるのは間違いないと思われる。
「はぁ、はぁ、『火球』!!』
「おい、無茶すんな!!魔力足りるのか!?」
「だ、大丈夫、だから!それよりも、みんな『祈りの光よ、我が傷を癒したまえ治癒』!!』
長く奮闘していたがあまりにも数が多すぎた。
最初に限界を迎えたのはアンナだった。
回復の魔法や攻撃の魔法をバカスカ撃てば魔力切れを起こすのは必然。
魔法使いにとって魔力が切れて魔法が使えなくなるというのは致命的だ。
「ちくしょう、数多すぎだろ!どんどん増えてくるぞ!どうなってやがるんだ!」
「マズイです、アンナさんが!!魔力切れ起こしました!!」
ナッシュがナイフで受け止め蹴り飛ばし、ジッドが跳躍して大上段から叩き切る。そんな中魔力切れを起こして息を切らすアンナに複数接近するのをジッドが察知し
「くそっ、アンナ危ねぇぞ!!」
警告し、声を発するがアンナは魔力切れで加えて膝をついたために動けそうもない。
アンナは絶望の顔をした。
(ごめんなさい、ジッド………!!)
最愛にして幼馴染のジッドに謝りつつ、思わず目を瞑った。
しかし、いつまでたっても痛みはこないことに疑問を覚え瞼を開けると、声が聞こえる。
それは、アンナにとって詠唱のように聞こえた。
『紅流剣術、戌の型なれば………!』
線状の果てまで貫けぬものなし。
儚き光で敵を撃つ。
『蛍光、飛沫槍』
真紅の髪をなびかせて少女が衝撃波と共に剣の刺突が群体鋼毛狼をまとめて吹き飛ばす瞬間だった。
砂煙と共に人影が皆に露わになる。
赤茶色のローブに身を纏い、おそらく、ミスリル製の具足、小手。
ローブの下にはありきたりな皮鎧で、これまた見事なロングソードを携えている。
その目は、飢えた獣のように時節赤く揺らめく翡翠色の瞳。
その瞳が、ジッドらを見て、群体鋼毛狼を見る。
ジッドは少女がチャキ、と長剣を構えたのを見た。それは剣士である自身でも見たことない構えだったからだ。
左足を前に出し、剣を持った右手を耳の辺りまで上げて、左手を軽く添えた独特の構えだ。
「今のうちです!!アンナさんを!!」
ナッシュに促されてアンナを介抱していると、彼女は問うた。
「助太刀はいるか?」と。




