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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第1章 目覚めの王国
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Chapter3-1


○いざ、城塞都市シェアトへ





ゴトゴトと、馬車に揺られて出立すること朝日が昇るおおよそ朝の8時ごろ。


荷台にエストレアと魔力切れから回復したのか毛布をかけて昨夜のスープをすするアンナが互いに対峙する。


「昨日は助かったわありがとね。ええと‥‥なんて呼べば?」


「エレンだ。たまたま通りかかってな。無事で何よりだ。」




エストレアと言いそうになったが、それを堪えて偽名を名乗ることにした。何せ自分は養子であったが貴族、それも公爵家であったため本名を名乗ればバレてしまうからだ。


加えて、クワイエット公爵家といえばこの国では知らぬ人などいないくらい有名だ。


初代クワイエット公爵家当主アルザー・クルセリア・サー・クワイエットは時のシェートリンド王国国王ザクラム二世の子であるアルザー第3王子であったという。武勇に優れた将であったものの政には才はなく第1王子が即位後侯爵令嬢と婚約、公爵家を立ち上げた。


なお、クワイエット公爵家は四つある公爵家のうち新しい爵家であるため政治ごとに対する発言権は他と比べ弱い。今の国王であるアグラエィン王が即位する前から養父であるアーノルドと懇意であるというだけで他を寄せ付けていないだけだ。


「そういえば、貴方達は依頼だと思うがなぜここに?」


「先日、小規模ではありましたが山火事がありまして。その原因を調べていたんです。原因は放火、盗賊団のアジトに油を巻かれて火を放たれたんですね。岩山の中腹部だったので火の周りがひどくはありませんでしたか………。」


「ゴホッ?!あ、いや、気にしないでくれ、続けて。」




激しくむせるエストレア。訝しげだったが気にしないことにしてナッシュは続けた。


「で、ここまで突き止めたはいいんですけどなにぶん調査が主だったことであそこまで規模の群体鋼毛狼に囲まれてしまい……エレンさんが来てくれなかったらどうなっていたことやら………。」



なるほど、と思う。放火の犯人も自分だ、などというつもりはないがともかく群体鋼毛狼に囲まれたことで誤魔化せたはず、と思っておこうとした。


取り敢えず、今の件は後で聞き返されるはずなので別の話題を振る。



「私はシェアトに向かう予定があるのだが、貴方達は………?」



エストレアがシェアトに行きたいというとジッド達は顔を見合わせると陽気に笑う。


「なぁんだ、僕らシェアトの冒険者なんですよ。その顔からすると冒険者志望者かな?騎士団っていったら先に納得しそうでしたよ。」


「君を見ればなんとなくだがまだ、15歳だと思う。その頃になれば皆冒険者の駆け出しの頃だ。まあ、規則で15歳からじゃないとなれないんだよ殉職率高えからな。」


「昔はそうだけど、今は違うでしょ!!駆け出しは余程タチ悪い先輩に当たらなければ引率されるよう手配されるし、正規兵上がりのギルド職員も見てくれるじゃない!!」


エストレア自身、育った領地にある冒険者ギルドを覗いたことはある。


領内の冒険者ギルドだけだから一概に言えないが前世で異世界モノ、いやここが異世界なのだから不思議なものだが。それの小説を慎也から借りて読んだイメージであるいわゆるならず者の謀る場所、強かな集団ではなかった。


どちらかというとビジネスマンに近い。冒険者としてのランクが高ければ、王都の国王陛下、公爵などの階位の高い貴族との面談も多いため常に綺麗にしていると言っても過言じゃない。


「森を抜ければ、後は街道を道なりに進めばシェアトはすぐですよ。そうですねぇ、四ノ刻半ぐらいには抜けると思うのでお昼過ぎにはシェアトですね。」


ゴトゴトと馬車は必要最低限整備された大森林の道を進んで行く。


(何事もなければいいのだが…………。)


荷台の隙間からエストレアは昇る太陽の光を見ながら取り敢えず休むために目を瞑るのだった。


側には、昨夜なめし終えた討伐された魔獣の剥ぎ取り素材の毛並みがふんわりと手に馴染む安心感に癒されて馬車は進んでいく。




●●●





「もう少しで、シェアトです。」


「んぅ………………?」


何刻すぎたのだろうか、すっかり寝てしまっていたエストレアの耳に御者を務めるナッシュの声で目が覚めた。


「ふふ、寝顔可愛らしかったですよ?」

「そ、そう言われると恥ずかしいな。」


バッチリと寝顔を見られた。いや、目をつぶっていて、春風と陽の光でうとうとしてしまったのだから仕方はないか。

問題なのは、休むために荷台に乗ってきたジッドとドランに寝顔を見られたくらい。女性らしい感性が大部分を占めて少し、恥ずかしい。


「皆さん、見えてきましたよ、拠点に!!」


布の窓を開ければナッシュが教えてくれた通り、前方に壁で囲まれた街が見えていた。馬車と目的地には平原が広がり、わずかながらの開墾された畑が見える。距離的には二時間もないだろう。









近くまで来ると城塞都市シェアトの大きさは舌を巻く。王都にも引けを取らない、クワイエット領の領城に近いくらいの高い防壁、素材は煉瓦で、渋い赤みが味を出している。

城門には2名からなる衛兵が立っていて、入るための手続きをしている。


時節衛兵が交代するため何人かが時間ごとに変わるのだろう。


「ん〜、やっとついたね。街に入ったらどうしようか?」


「アンナ、ついたらギルドに報告だろうが。浮かれるのもいいが勤めを果たせっての。」


「ぶ〜〜〜、ジッドのせっかち!ドランはどうするのよ!!」


「残念でした、俺はその包装してある素材を届けんのさ。いつものウィーゾフのおっさんのところさ。」


わーーん!!とジッドに首根っこ掴まれて連行されていくアンナを見ながら正直頬を掻くことしかなかった。

道中、聞くところだと魔獣も追い剥ぎもなく平和に行進できたのかと。


まあ、仮に襲われたとしてもエストレアとしても、彼らにしても問題なく対処できると思っている。


というのも、こういう場合、経験からくる予測がいかに精密かにかかってくるのだがリーダーであるジッドの身のこなしやオーラはエストレアの贔屓目なしでもかなりの練度だ。


他のメンバーであるドランやアンナもかなりの修羅場をくぐり抜けてきたのだろうと思えるほど平時の落ち着きが板についているからだ。

昨日はどうなのかといえば、名目が調査だったということと群体鋼毛狼の恋の季節になるための群れ形成がすぐ近くにあったという誤算が重なった結果だ。


馬車内でアンナから聞いたところ本来はあんな浅いところに群れは作らないらしく、遭遇してようやくそういう季節でもあった、と思い出したらしい。


馬車から降り、馬車は列の最後尾に並ぶ。


「じゃ検問に行こうか。といっても前に3台手続きの列があるから準備だけしてくれ。」



門の向こうは、活気に満ちた声が響き、見えるだけでも人が行き来しているのが見える。


ここから、エストレア(わたし)の新しい明日が待っているーー!!




次回からシェアトの中へ。


うむ、スヤスヤするTSっ娘エストレアの顔を妄そryイメージすると可愛いんじゃぁ………。



おや、誰か来たようだry………………

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