8-42 平和は遠く
レイが目を開けると、知らなくもない天井がそこにはあった。複雑な文様の施された天井絵は、記憶に間違いがなければオーマットの王宮と一致する。柔らかな絹の感じからすると、ベッドに寝かされているのだと判断。傍には人の気配がした。
レイは声を上げて、その人物を呼び留めようとしたが、喉から出るのは掠れた呼吸音だ。砂漠を歩いたかのように喉が渇いていた。だが、その人物は異音に気が付き振り返った。
「ご主人さま! 起きたんだ!」
横合いからした喜色の声に視線を向ければ、そこに居たのは栗色の髪を揺らしたレティだった。翠の瞳を喜色で濡らし、彼女は装備を解き、普段着にエプロンを着けて、盥を手にしていた。
彼女は水の入った盥を置くとそのまま、レイの胸元に飛び込む。
「良かったよー! 目覚めてくれて本当に、良かったよぉ!」
眦に涙を溜め、全身が弛緩し、自分に身を委ねている所を見ると、相当心配を掛けていたのだなとレイは申し訳なく思う。一方で、彼女の重みで息が多少苦しくなるのだが。
そのまま、レイの鼓動を体で感じるようにレティは身を投げ出すこと三十分。ようやく満足したのか、心が落ち着いたのか、レティは起き上がり服の乱れを整えて、水差しを用意してくれた。レイは上体だけを起こし、何度か喉を潤してから話を始めた。
「ここはね、オーマットの王宮だよ。ご主人さまったら、十日も眠ってたんだから、心配したよ」
「十日。本当にそんなに時間が経ったのか」
今は秋の上月に入ったよ、とレティが説明する横で、レイは記憶から死のイタミを思い出した。太陽のような高温が体を焼く感覚に身が震えてしまう。それを味わったのは、自分以外には目の前の少女だ。
「レティ。……体の方はどうだい。ポラリス、『機械乙女』の一撃を浴びたんだよな。あれから十日も経ったけど、大丈夫だったかい」
「……今の今まで眠っていた人が気を使わないでよ。おかげさまで、こっちは大丈夫だよ。最初は驚いたけど、ミストラル様のお蔭で元気になったんだから」
自分の薄い胸をはるレティはおどけて言うが、そんな並大抵な言葉で片づけられるようなイタミでは無いのはレイも知っていた。おそらく相当な苦痛を感じたはずだ。それに、イタミを乗り越えた後、待っていたのは仲間の不在という心細い状況の筈だ。
死んだという事は理解できても、どうして死んだのかという理由が曖昧なのは逆に不安を掻きたてる。ミストラルならその辺りもフォローしてくれたに違いない。
「そうか。あとで、きちんとお礼を言っておかないとな。……それで、リザ達はどうなんだい。僕と同じでまだ眠っているのか」
「ええ、っと。ご主人さま。自分に何が起きたのかは理解しているのかな」
レティが探るように尋ねる。十日も眠っていた割に状況を把握していると思しきレイを訝しむような視線を向けていた。それに対して、レイは正直に答えた。
「コウエンから話を聞いたんだ。黄龍を倒した事で、僕らはレベルアップ酔いになったんだろ。多分、あの戦いに参加した人たち全員が黄龍の経験値を得たんじゃないかな」
「ああ、そういう事なんだ。だったら、話は早いかな。ご主人さまの読み通り、黄龍討伐に向かった全員が経験値を大量に獲得して、一気にレベルが上がったの。その中で気絶したのは、《ミクリヤ》のメンバーだけで、後はみんな耐えたんだけどね。それで、気絶したご主人さまたちを連れてマクスウェル様たちが戻ったのが、五日前。シアラお姉ちゃんは三日前に起きて、エトネは昨日。それでご主人さまが今日、目を覚ましたの」
「ちょっと待ってくれ。それじゃ、リザはまだ」
「うん。あっちのベッドに眠ってるよ」
エトネが場所をずらすと、横のベッドが膨らんでいることに気が付いた。視線を上に向ければ、リザが眠れる森の美女よろしく、身じろぎもせずに眠っている。枕元には、彼女の装備品一式が置かれている。
「リザ、リザ、エリザベート!」
名前を呼んでも反応は無い。
まるで、死んでいるかのような穏やかな姿に、レイの胸中は言いしれない騒めきに襲われる。
「リザは目覚めないのか。もしかして、レベルの壁にぶつかって」
「ううん。そうじゃないの。レベルアップ自体は成功しているの。だけど、意識はまだ戻ってきてなくて、眠ったままだって。ご主人さまと同じ状態だよ」
「そう、なのか。……何時頃、目覚めるのかな」
死の危険が無いと分かり、レイは安堵の吐息をするも、レティの表情が優れない事に気が付いた。
「レティ。どうかしたのか」
「お姉ちゃんを診てくれた人曰くね、何時目覚めるのか分からないって。今日なのか、明日なのか、来週なのか、来月なのか。ご主人さまも、他の皆も同じ事を言われたんだ」
ぽつりと呟く少女の横顔は焦燥に彩られていた。よくよく見れば、頬がこけ、肩が細くなっている。もしかすると、自分たちが眠っている間も休む暇もなく看病を続けていたのかもしれない。そんな少女に対して、レイは手を握る。驚くレティに力を注ぐように、強く、しかし優しく握りしめ、
「大丈夫だよ。僕やシアラ、エトネが目を覚ましたんだ。リザだってすぐに目を覚ますに決まってるよ」
根拠のない言葉である。
だけど、それがレティに掛けてやれる最善の薬の筈だ。効果はあったのか、レティがうっすらと笑いかけてくれた。
すると、腹の虫が騒ぎだした。考えてみれば十日間、何も食事を取っていない事になる。
「お腹、ペコペコだよね。ちょっと待っててね、何時でも食べられるように準備しといたんだよ」
言うと、レティは部屋を飛び出してしまう。病室代わりの王宮の部屋に、レイとリザは取り残されてしまった。レイは体を横に回して、素足のまま絨毯の上に立つ。
途端に、違和感を抱く。
十日間眠り続け、栄養が不足しているから感覚がおかしくなっているのだろうか。それとも急激なレベルアップによって、体の感覚がくるっているのだろうか。自分の体が、自分の物と認識できない。持ち上げた腕が、果たして自分の腕なのだろう。
(どっちにしても、数日はリハビリに務めないとな。今までの感覚で体を動かしていけば、どっかしらで狂いだすはずだ。その辺の誤差を詰めていかないと、戦闘なんてとんでもない、とんでもない)
前の経験を思い出しつつ、レイは隣のベッドに辿り着くと、膝を折り曲げた。
目を覚まさないでいるというリザを気遣い、音を立てずにベッドに寄りかかり、眠ったままの少女を見つめた。
凛とした美しさを携えた少女の寝顔は、穏やかで平和そのものである。考えてみると、ダリーシャスと出会った時からこれまで、戦いの連続だった。時折、休養の時間もあったかが、あれは次の戦いまでのインターバルのような物で、今回のとは違う。
レイ達は目的を果たしたのだ。
ダリーシャスを故郷に連れ帰り、紆余曲折はあったものの彼を王にした。ついでとばかりに黄龍を倒す羽目になったが、それでも目的を果たしたのだ。ナリンザの願いを叶えた事になる。
リザが目覚めないのは心配だが、自分やシアラ達はちゃんと目覚めたのだ。いずれ、彼女も目覚めるはずだ。それまではこの穏やかな時間を噛みしめるように待てばいいとレイは思う。
激闘を潜り抜け、ようやく掴んだ平穏だと胸を張って言える。
そんな静寂を破る様に、レティの声が張り裂けんばかりに響いた。
「あー! ご主人さまったら、ベッドから抜け出すんじゃないの! それに、寝こみのお姉ちゃんを襲うなんて……ごゆっくりー」
「ちょっと待って! ごゆっくりとは何だ、ごゆっくりとは! 扉を閉めて外に行こうとするな!」
「大丈夫、大丈夫。ミストラル様から、男の子のそういう事については、この十日間で一通り学んだから。三十分ぐらいあれば、十分だよね」
「十分って何が!? いや、言うな! 僕らが居ない時に、あの人はなんていう教育をしやがったんだ!」
「なにって、せ―――」
「―――レティ、《黙って》!」
「もごもご」
右手の甲に刻まれた奴隷紋が、レイの命令に反応してレティの意思を無視した行動を取らせる。荒い息を吐きつつ、レイは部屋に置かれた椅子へと移動して、腰を下ろした。口を塞がれたレティは持ってきた料理を机に並べ、反対側の椅子に腰かける。
レティが持ってきたのは、麦をドロドロに煮詰めた、おかゆに似た消化に良さそうな品だ。匙を取り、一口入れれば、薄味ながらも滋養のありそうな食事が喉を通る。思っていた以上に空腹だったらしく、レイは皿を持ち上げ、無我夢中で掻きこんだ。
皿の底が見える頃になって、ふと、対面に座るレティを見れば、彼女は手を振り、身を捩り、奇怪な動作を繰り返していた。何かを訴えかける強い視線に晒され、思い出した。
「あ、ごめん。《喋っていいよ》」
「ぷはぁ! 酷いよ、ご主人さま!」
黙るようにと命令を下したまま、それを解除せずにいた。レティは体を目一杯に使い、それを気づかせようとしていたのだ。
放置されて事を捨てたレティは腕を組み、そっぽを向く。そんな彼女に、レイは低頭して謝る。
「ごめんってば。あと、食事、美味しかったよ」
「ほんと! ……あ。そんな事で許すほど、安い女じゃないから」
ぷいとそっぽを向くレティに、少女の幼い仕草にレイはついつい頬を緩めてしまった。
「なによ、ご主人さま。そんなに楽しそうにして」
「いや、平和だなと思ってね」
何気なく放った言葉に、レティは首を傾げた。レイはこれじゃ、言葉が足りなかったかと思い、付け加えた。
「ダリーシャスと出会ってから、彼を国に連れて帰り、そして王になってもらうと張り詰めていたからね。それがこうして一段落着いたから、平和だなって思ったんだ」
すると、レティは得心いったように頷き、しかし表情は厳しくした。
緊張した面持ちから、レイは自分の中で警鐘が鳴り響くのを感じていた。これは、何かよくない事が起きている。
「……あのね。ご主人さまが眠っている間に、状況が変わったの。デゼルト国と帝国の間で戦争が始まったんだよ」
レティの言葉にレイは愕然とした。
どうやら、平和の二文字はまだ先の事のようだ。
王宮内の一室。
集まった者達が銜えるパイプから煙突のように紫煙が昇り、ダリーシャス・デゼルト王付き従者のラシード・ナキには居づらい場所だった。しかし、ダリーシャスの取次という重要な役目を任された以上、彼の傍を離れる訳にもいかなかった。
集まった諸侯や部族の長らが作戦図を囲み、喧々諤々の議論を交わす中、扉の隙間が開き、外の女中が滑る様にラシードの方へと近づいた。
議論の妨げにならない様に耳元で囁く女中。その内容に、琥珀色の瞳が喜色に彩られた。直後、ラシードは表情を引き締めたまま、ダリーシャスの元へと進む。
「何用だ」
「陛下。レイ殿が目を覚まし、陛下のお目通りを希望しております」
一瞬、ダリーシャスの双眸に喜びが浮かぶも、彼はすぐさまその感情を隠した。
彼は王子では無い。既に王なのだ。
この難局を打破するために、死力の限りを尽くさねばならない。そんな時に私事を優先する訳には行かなかった。
「軍議の最中だ。面会はその後に回せ」
「畏まりました。……私が、お話を伺いましょうか。おそらく、戦争についての事かと」
「ふむ。では、任せる」
頭を下げたラシードは王の元を離れる。そのまま少年は過熱する軍議を背に部屋を退出。女中の案内の元、レイが待っている控えの部屋に足を踏み入れた。
部屋に居たのはレイとレティだ。まだ本調子ではなさそうな主を気遣い、レティが甲斐甲斐しく世話をしている。
「レイさん! 目を覚ましたのですね。良かったです」
「ああ、ラシード君。心配を掛けたようで済まなかった」
立ち上がろうとするレイを二人で押しとどめると、ラシードは片膝を突いて頭を垂れた。急な態度に目を白黒とさせるレイにラシードは思いのたけを告げた。
「《ミクリヤ》のレイ殿。そしてレティ殿、並びにここには居ないリザ殿、シアラ殿、エトネ殿に、深く感謝の言葉を。貴方達が居なければ、こうしてダリーシャス様が国王になる事も、黄龍の脅威から国が救われることもありませんでした。ナキ家当主として、何より、この熱砂の大陸に住む民としてお礼を申し上げます。本当に、ありがとうございます」
それはラシードの素直な気持ちからの感謝の言葉だ。
正面からの言葉にレイは首を横に振った。
「僕は、そこまで大した事はしていない。ローランさんを始めとした《神聖騎士団》の皆さんにサファさんが居たから、此処まで来れたんだ。それに、ナリンザさん。彼女が生きていれば、こんなにややこしい事態にはならなかったかもしれないだろ」
「ややこしいというのは、帝国との戦争の事ですね」
「ああ、そうだ。その事でダリーシャスと話をしたいのだけど」
「申し訳ありません、陛下は現在軍議の為に重鎮の方々と。それが済み次第、お会いになるとの事です」
ご容赦くださいと頭を下げるラシードに、レイは寂寥感を抱く。
これが王子と王の差なのだろう。王と為った以上、彼の双肩には民の命があり、その判断は民の運命を変える。軽々に行動できなくなったのだ。
「うん。分かったよ。その代りだけど、僕が眠っている間に何が起きたのか、話をしてほしいんだ」
分かりましたと了承したラシードは椅子に座り、レイが眠っていた十日間の事を語り出した。
「順を追ってお話しします。神前決闘があのような形で幕を引いた直後、帝国軍は北上し、撤退を開始しました。当初、ガヴァ―ナの港町に戻り船で帰国するのかと思われていましたが、彼らは驚くべき行動に出たのです」
言うと、ラシードは女中に紙と筆を用意させ、軍議の席で問題となっている概略図を描きだした。
「ガヴァ―ナよりも北西に位置する、この山間の砦。ここは、隣国との軍事路となっており、防御の要として、互いの領土側出口に砦を築いています。そのデゼルト国側の砦、スカンダ砦が帝国に占拠されたのが、折しも黄龍討伐の報せが届いた頃でした。時を同じくして、ガヴァ―ナの港町も封鎖に失敗し、帝国の増援が上陸したとの知らせが届き、十日前の時点で我が国は北方の主用地を二つも失いまいした」
「砦には守備隊とか居なかったのか」
「無論、居りました。ですが、彼らは突如として現れた二人の魔人に敗北。生き残った僅かな兵が、魔水晶でそのことを知らせるも、以後音信不通です。おそらく、もう。……伝えられた報告から分かった敵の容姿からすると、六将軍第五席、六席の二名かと」
「それじゃ、六将軍の第五席、第六席が帝国と合流したのか。それにもう一人、クリストフォロスも合流した可能性がある訳だ」
ゲオルギウス一人でも、あれだけ場を掻きまわされたというのに、それが三人も揃ったとなればまさしく悪夢だ。ラシードも頭が痛いとばかりに歯を噛みしめ、話を続けた。
「それから六日後。オーマットを離れた帝国軍一万は、先にガヴァ―ナ、スカンダ砦間を防衛している増援部隊五万と合流し、砦に篭りました。それを受けて、追撃部隊である元アフサル王子麾下の二万五千は陛下の指示により、砦から五シロメーチルの地点で防御陣地を形成し、帝国の部隊が南下しない様に見張りをしています。正式な戦端が開かれたわけではありませんが、現在帝国との関係は最悪に等しいです」
「アフサルが支配していた地域がそのまま帝国の物となったような物か。それにしても六万の軍勢か。帝国も本腰を入れてきたね」
六万という数字にレティが呻いた。レイも帝国の兵士が普通の兵士よりも強い事は知っていた。それだけに六万という数字が、実像以上に膨れ上がってしまう。
「帝国との戦争は避けられなかったのか。僕はてっきり、ダリーシャスは外交で事を収めようとしていたのだと思ったけど」
「その認識で正しいです。陛下は公式、非公式、第三国経由で帝国に対して接触を果たそうとして、しかしどれも失敗に終わりました。結局、ガヴァ―ナが陥落したことを内部から突き上げられて、開戦の方向に話しが進んでいます。現に五日ほど前に急遽動員された二万の兵が。そしてこれより第二陣として三万の兵が合流する予定です」
戦争。
それも人と人の戦争だ。
モンスターの暴威に抗うために戦うのではなく、所属している国の都合によって人同士が血を流す、生産的活動とは真逆の、消費の極地だ。
平和な時代に生まれたレイにとって、それはモニターや他人を通してでしか知らない、フィクションのような重さの無い存在。だが、軍靴の足音が背後から聞こえてくると、生々しさを感じられずには居られない。
「それと陛下は軍議が終わり次第、此処をお立ちになり、前線に赴きます」
「何だって! 戦場に立つというのか!」
「いえ。前線司令部より、指揮を執られております。それでも危険なのは変わりありませんが、しかし、場合によっては政治的な判断を即座に下さないといけません。現在、前線では魔水晶による
連絡が遮断されており、首都に居ては対応が遅れてしまうのです」
「だからって、自分から戦場に向かうなんて。そんなの、危なすぎるだろ」
「危険なのは承知しているとも、レイ」
開け放たれた扉から飛び込む雄々しい声に、室内の三人は一斉に振り向いた。そこに居たのは、ダリーシャスだった。軍議が終わったのか、廊下の向こうから大勢の足音や論争の声が聞こえ漏れている。
旅装とも、正装とも違う、王に相応しい品格のある装いをしたからか、ダリーシャスの纏う雰囲気が十日前と違っていた。威厳ある王の雰囲気を物としていた。
立場が人を作るとはまさにこの事だ。
まるで別人のようだ。
だが、雄々しき王の風格が持続したのは数秒だけだ。ダリーシャスはレイを見つめると破顔し、そのままタックルを仕掛けるように抱きついたのだ。
「心配したぞ、レイ! 其方、目覚めるのに十日も駆けるとは寝坊助にもほどがあるぞ! やきもきさせおって、不敬だぞ! 縛り首だぞ!」
物騒な事を口にするが、そこにはレイを心配していた事の感情が透けて見えた。ひとしきり抱擁を終えると、ダリーシャスはレイの正面に立ち、
「《ミクリヤ》のレイ。そしてレティ、此処に居ない、リザ、シアラ、エトネ。貴殿らには大変世話になった。俺は其方らの功績を生涯に渡り忘れないと誓う。国がこのような状況でなければ、式典の一つも開きたいのだが、それは少々待っていてくれ」
「分かっているよ。戦争が始まったんだろ。それで、アンタも行くと聞いたよ」
「うむ。だから、助かったぞ。其方が目を覚まさなければ、俺も気が気でなかった。あとはリザが目覚めるのを祈っておる。あとの事は、ラシードに任せておくつもりだ。何かあれば、こやつを―――」
「―――ダリーシャス。僕も行くよ」
ダリーシャスの言葉を遮って告げると、途端、ダリーシャスの橙色の瞳が鋭い光を放つ。
「レイ。其方、何を言っておるのか分かっているのか」
「君を一人で行かせるつもりは無い。僕も―――」
「―――そうでは無い!」
今度はダリーシャスがレイの言葉を遮る番だった。大音声が部屋を震わし、そしてダリーシャスは悲しそうに呟いたのだ。
「人との戦争なのだぞ。……其方は人を殺せるのか?」
読んで下さって、ありがとうございます。




