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水中世界のデレリクト  作者: 雪峰
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第4話.いざ水中探検!

「ういろう! 見てくれ!」

「キュイッ!」

「これが俺の免許証だ!」


 俺はダンジョン署から受け取ったばかりの二種類の免許証をつきつけた。

 B級探索者免許と、モンスター管理免許。

 ういろうが短いヒレをぱたぱたしてお祝いしてくれる。かわいい。


「これでいよいよダンジョンに行けるな」


 俺は探索者アプリを開く。自分の探索者情報の確認や、各種手続きが行えるアプリだ。

 起動すると、何件かの通知が既に来ていた。俺はそのうちのひとつをタップする。


================

【レベルアップ通知】

おめでとうございます!

あなたの探索者レベルが上がりました。


Lv.1→Lv.55

スキル:水中活動Lv.1→Lv.2

パッシブ『水中睡眠』を獲得しました。

================


「おお? レベルもこれでわかるのか」


 というか、スキルもレベルアップしてる!

 水中睡眠が地味にありがたくないか?

 睡眠中だけは水中活動できないっていう弱点が、既に解決しちゃったよ。


 続いて、テイムしたモンスター情報を見る。


================

【管理モンスター情報】

登録名:ういろう

種族:レヴィアタン

性別:不明

レベル:不明

スキル:不明


詳細:下記へお問い合わせください

■お問い合わせ先

ダンジョン署お客様サポート:XXX-XXXX-XXXX

ダンジョン署モンスター課:XXX-XXXX-XXXX

================


 ほとんど不明じゃん。でも、モンスターに共通することとして、人間と同様の食事が可能なのと、定期的にダンジョンへ連れて行って体内に魔素を保つ必要があると説明を受けている。

 東雲さんは、レヴィアタンに関する情報は確認中と言っていた。問い合わせしたところで今はそれ以上の情報は得られないだろうな。


「ういろう、ダンジョン行って何がしたい?」

「ピキュ~ン?」


 探索者としての活動内容は、一応申請する必要がある。

 申請は後から行うこともできたので、とりあえずダンジョンに潜ってみて出来そうな活動にしようと思っていた。


 B級の探索者に許可されている範囲での一般的な活動としては、モンスター討伐やアイテムの採取、生成などだ。


 中にはそれらを配信するダンジョン配信者もいるらしいが、内容には厳しい規制がかけられている。

 配信に限らず、ダンジョンについての情報の発信はかなり厳格に統制されてるんだよなあ。

 きっとダンジョン黎明期に色々トラブルがあったんだろう。


 ネット上にアップされた真偽不明のダンジョン情報は、AIが感知すればすぐに削除されてしまう。

 それでもアップする人は後を絶たないから、いたちごっこではあるんだけど。


 ちなみに現在人気の配信コンテンツは、下層のキラーハリネズミ湧き場を定点カメラでひたすら垂れ流すやつらしい。

 キラーと名前がついているが、じっと動かないことが多く、攻撃しなければ決して反撃してこない扱いやすいモンスターだ。

 とはいえ針で刺されたら全然死ぬけど。安全圏から眺めるぶんには癒されるビジュアルのようだ。


「とりあえず、あの遺跡を探索してみようか!」

「キュッキュィ!」


 探索者免許を取得できたとはいえ、それだけで生活安泰というわけではない。

 ういろうを健やかに養うためにも活動頑張るぞ。


 まずはういろうと出会った遺跡付近を探索してみよう。

 景色が綺麗だったから、潜るだけでも楽しみだし。


 なんか、そわそわしてきた。成人してからこんな風に何かを楽しみに思うなんて、初めてのことかもしれない。


「ういろう、行くぞ、いざ水中世界へ」

「キュイイィィ~~ッ!」


 免許証に指紋を当ててかざし、部屋の水溜りダンジョンの封印を開く。

 こうして俺たちは未知の水中へと飛び込んでいくのだった。



 見渡す限りエメラルドブルーの景色が続いている。

 地底の砂が白く発光しているおかげで、立ち昇る泡が光を反射し幻想的に踊る。


 遠くには、ここは異世界なんだなあ、と実感するような不思議な漂流物が漂っている。

 昔、名画とかで溶けた時計の絵を見たことがあるけど、あんな感じの雰囲気だ。


『ピキュイイッ』

『綺麗だな、ういろう』


 ういろうは俺の隣にぴったりくっついて優雅に泳いでいる。

 水中から魔素を取り込んでいるのだろうか、地上に居た時より動きがのびのびとして気持ちよさそうだ。

 

 ういろうと出会った遺跡は、前回訪れた時と変わらず、入り口から下へ下へと潜った場所にあった。


『もう既に懐かしいな』

『キュイ』


 遺跡はいくらか砂に埋まっているが、建物としての形は保っており中に入ることも出来そうだった。

 

『ここ、何の建物だったんだろう』

『キュ~?』


 感覚としては古代史の教科書で見たことがある、海外の神殿みたいな雰囲気があった。

 大きな祭壇みたいな場所があって、そこから繋がるように倒壊した扉がいくつか。

 

 壁には海藻みたいなものがたくさん張り付いていて、それが光を発しているから建物内は地上の昼間みたいに明るい。


『お~、この海藻って採取できるのかな?』


 俺は探索者アプリを開き、光る海藻に端末を向ける。

 これはC級以上の探索者が利用可能な機能で、ダンジョンで見つけたアイテムや素材を写真に写すとデータベース上から該当する情報を案内してくれる。


================

【素材情報】

登録名:スイセイゴケ

希少度:D


採取:可

ダンジョン外への持ち出し:可

毒性:なし


備考:水中でしか生息することができないため、水の外への持ち出しは非推奨

================


『うーん、持ち出し可だけど水につけてないとダメってことか?』

『ピキュウ』

『そんなに珍しいものでもないみたいだし、他にも色々探してみるかあ』


 俺が辺りを物色しようと壁から離れた時のこと。


『……ん? ういろう、何か聞こえた?』

『キュキュイ!』


 気のせいじゃない。

 遺跡の外からゴボゴボという音が聞こえる。

 ボロいユニットバスで栓を抜いて水が一気に流れる時のような音。


『なんだ?』

『ピキュウウウウウン!!』


 モンスターだったら警戒しようと、俺はそっと入口に身を潜めて外を覗く。

 ういろうが俺の前に飛び出して威嚇するように高く鳴いた。


『うわ……! あいつら魚ゾンビじゃん!』

『キュウウウウ……!!』

 

 上半身が腐った人型で、下半身が魚の姿のモンスター。

 ういろうと初めて出会った時に俺が襲われかけた奴だ。


 そんな魚ゾンビが十数匹の群れを成して、何かを追っているようだった。

 追われている”何か”は遺跡に逃げ込もうとしているのか、こちらに向かって突っ込んでくる。


『お、女の子!?』

 

 追われているのは人間の少女だった……上半身は。下半身は魚だったが、魚ゾンビのような濁った鱗ではなくオーロラカラーのようにきらきらと揺らめく美しいものだった。

 真珠飾りで飾られた長いラベンダーブルーの髪は、全力の遊泳で乱れている。


 女の子は両腕を胸の前でクロスしながら泳いでいた。何か抱えているような姿勢だった。

 状況がよくわからんが、魚ゾンビは俺を襲おうとしたモンスター。

 いったんそっちを倒す! この女の子が何者なのか、俺らに敵意があるか無害なのかは後で考える!


『ういろう、頼めるか?』

『キュウウッ!』


 ういろうの姿が白く発光する。ドラゴンに変身か……!? と思ったが、ういろうは丸っこいクジラ姿のまま連続して閃光のブレスを打ち出した。


『キュッ! キュッ!』

『きゃあっ!?』


 女の子が砂の上に伏せる。ういろうの放つブレスは一匹、また一匹と魚ゾンビを倒していった。

 やがて閃光と音が止んで、水中は静寂に包まれる。


『す……すごいぞういろう!! でも何で、今回は変身しなかったんだ?』


 そういえば探索者のパートナーになったモンスターは、探索者とレベルがリンクすると説明を受けたような……。

 もしかして、俺の探索者レベルが上がったから、ういろうの使える力も上がってるとか?


『よしよし、ういろうお疲れ様』

『キュウ~~!』


 労わりを込めて額を撫でる。ういろうは得意げに尻尾を上下させた。


『それで、あの女の子はどうしよう……?』

『キュ~?』


 見た目通りに捉えるなら人魚だけど、ここはダンジョン。モンスターが女性の顔をして人間を罠にかける、なんて可能性も否定できない。


 そもそも、女性には気をつけろと俺の陰キャ本能が叫んでいる。

 俺みたいな社交性のないぼっちが女性と絡んでマトモな結果になるわけがない! 勘違いして距離を詰めまくって女性側にトラウマ植え付けるか、騙されて食い物にされるか。前者の方が俺が加害者になる分だいぶ嫌だ。


 俺が葛藤していると、その女の子は砂の間から起き上がってゆっくり水中に浮上してきた。

 何が起こったのかと周りを見渡しているようだった。


『モン!』

『怪我はない? ツルギちゃん』

『ブモモン』


 女の子は胸に抱えた何者かと話をしている。すごく小型のサメ……かなあ? 遠くて詳しくは見えない。


『あーーっ!』


 と思ったら、女の子と目が合った。こちらに向かって全速力で泳いでくる。


『ねえ、キミが助けてくれたんでしょ!』

『え? いや、俺がというか、ういろうが、というか……』


 俺は一歩引いてういろうの背中側に回る。

 ういろうは俺と女の子の間で不思議そうにくるくる回っている。


『わ! お喋りが通じるの!? すごいすごい!』


 女の子の表情がぱあっと明るくなった。

 さっきまでモンスターに追いかけられていたので髪はだいぶ乱れていたが、それでも清潔感を失っていないほどの美しさだった。

 ああ、綺麗な人は髪ぐちゃぐちゃでも綺麗なんだな……。


『モンスター以外の生き物、初めて見ちゃった』

『え、あの』

『私、シーシャ。こっちはお友達のツルギちゃん。ねえねえ、あなたたちは?』


 キラキラと輝く瞳に詰め寄られて、俺はしどろもどろに自己紹介をした。

 美少女で陰キャにも人懐っこいってホントに存在するのか!? 信じていいのか!?

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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