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いつも読んでくださってありがとうございます!

お食事中の方はお読みにならない方がよろしいかと思われます。ご注意ください。





・・・絶望しかないぞ。


やっぱり下僕ABの口車になんぞ乗るんじゃなかった・・。おい、次会ったらビンタじゃ済まんぞ、往復ビンタだからな。


どうみてもクロード様のイイ人なセイラさんに向かって、張本人のクロード様は『ここでの生活については、慣れているセイラに教わるのがいいだろう。女同士仲良くしてやってくれ』と言い置いて護衛の方々とさっさと行ってしまった。遊び人と思っていたけど、本命に浮気相手の世話をさせる鬼畜男って先ほど認識を改めました。


なんなの?!空気読めないの?!イヤ、やっぱり私に嫌がらせするために連れてきたって事か!絶対そうだよ!あんな明らかにねんごろみたいな女性が居ながら、私にプロポーズとかオカシイもん!うわあああ騙された!


今からでも逃げ出せないかと城門を振り返ると、ゴゴゴゴゴ・・・みたいな不吉な音を立てて閉まるところだった。だ、ダッシュすれば間に合わないだろうか?!

と思っていたら両腕をがっしりと掴まれた。メイド服姿の屈強なご婦人二人に捕獲されとる。屈強なご婦人てすごいよね?!砦仕様のメイドさんなのかな?!


「ニーナ様?とおっしゃいましたか?我々はセイラ様付きの侍女でございます。クロード様からお世話を頼まれましたのでお部屋にご案内いたしますね?」


「アア・・ソウデスカ。ヨロシクオネガイシマス・・。ところでそのセイラさんはどちらへ・・?」


侍女さんたちが真っ黒な笑みを浮かべて言った。


「セイラ様はクロード様のご乱心にショックを受け貧血を起こされました。自室でお休みになるそうです。我々がちゃああんとあなた様のお世話を致しますので、ご安心くださいませ」


有無を言わさず引きずられるように連れて行かれた。下僕AB!もう姿が見えないけれど約束は無効じゃないからな?!覚えてやがれ!




どんな部屋に通されるのかと思ったら、ずいぶんと豪華な客室を与えられた。唖然として部屋を見渡しているとまたもやがっしりと腕を掴まれ浴室へ引きずられていった。


「ああ汚い。何故こんな小汚い娘をクロード様は・・」


「セイラ様があれほど尽くしておられたのに・・どうして・・」


おい、聞こえてるってば。侍女さん達は呪いの言葉をつぶやきながら私を裸に剥いていく。あのーせめて一言もらえます?そのままずいぶんと荒っぽくバスタブに放り込まれた。ガシガシと、犬を洗うように丸洗いされていく。もうこちらの意見を聞く気もなさそうなので黙ってされるがままになる。


・・・なんで拉致られた挙句悪役まで押し付けられなきゃいかんのか。私この場においてなにひとつ悪い事してないと思うの。


「あの・・セイラさんという方はクロード様の・・アレですか?・・恋人ですか?」


勇気を出して侍女さん達に聞いてみる。まずは情報収集、それから対策を練ろう。

質問したとたんに侍女さん達の手に力が入る。あ、痛いです。私の腕は雑巾じゃないからそんなに絞り上げないでください。


「セイラ様はフィーデル伯爵令嬢です。ニーナ様よりお立場は上です。言葉に気を付けてください。こちらへはお兄様のグランド様が騎士として派遣されている為、視察を兼ねてご滞在されています・・というのは表向きの建前でして、クロード様をお慕いするセイラ様がお父上に頼み込む形でなんとかこちらへの滞在が許された形です」


「クロード様もセイラ様をとても可愛がっていらして、お二人の仲睦まじいお姿を屋敷の使用人からクロード様の配下の兵士に至るまで温かく見守っていたのです・・・セイラ様は奥ゆかしい方でいらっしゃるので、恋人だなどと公言していませんが、誰もが認める仲なのです。それを・・いきなりこのような形で裏切られようとは・・・」


侍女さんが代わるがわる強烈な恨み言を言ってくる。重い、重いよ事情が。そしていい加減私の腕を雑巾絞りするのは止めてくれ。


まーでもそんな事情のところにいきなり私みたいなのが来たらそりゃ恨まれるよね。

なかなか進展しない甘酸っぱ~い二人の仲を突然引き裂いた悪女が私って認識でOK?


よし、そんな悪役を無償でやってやる義理はないので、セイラ様とやらに全てぶっちゃけて逃がしてもらおう。




「あのー誤解があるようなので、セイラ様とお話しする機会を頂きたいのですが、お会いできますかね?」


私にドレスを着せている侍女さん達に問いかけてみる。ぎりりっ、とコルセットの紐を締め上げながら侍女さんは私に言った。


「・・・セイラ様に何をなさるおつもりで?事と次第によっては・・」


「苦しいです、アバラが粉砕骨折しそうです。あのーだから誤解があるって言ってるじゃないですか。私はクロード様と結婚なんてしないですよ。クロード様にからかわれただけです」


そうですか・・?と疑わしげな侍女さんズでしたが、なんとかアバラはへし折られずに済んだ。そして無駄に着飾らされた私は侍女さんズに連れられ大きな広間に通された。そこにはお召し替えをしたクロード様と、その腕にすがるセイラ様が私を待っていた。


「―――クロード様?本当に婚約なさるのですか?男爵令嬢では身分が・・」


「どこか適切な爵位の元へ養女にしてもらうさ。陛下も早く身を固めろと仰っていたところだしな。問題ない・・・ニーナ!待っていたぞ!美しいな・・そのドレスも良く似合う・・」


クロード様が私に駆け寄り腕を広げる。ちょ、抱きしめようとしないでください。慌ててバックステップで飛び退り距離を取る。空振りした形のクロード様がむっつりと怒った顔になった。それを見たセイラ様が私に怒った。


「クロード様に対しなんと失礼な態度を!あなたは淑女としての躾をなにひとつされていないのですかっ?!」


え、ええー?!怒られるの私?!でも今クロード様に抱きしめられたそれはそれで非難轟々だったと思うのよ?理不尽!・・コレなにしても不正解なんじゃない?


「はあ・・失礼いたしました。淑女ではないもので・・どうぞわたくしのような野生児は放逐してください。馬さえ貸していただければ今すぐにでもここを出て行きますので」


「ニーナ!そのような事・・私が許すと思うか?まだそんなことを言うのか君は・・」


あっやばいクロード様の瞳が禍々しい!そんなクロード様の様子をみてセイラ様はまた涙目だし、控えている侍女さんズは阿修羅と化してるし、なんという四面楚歌。


「まあ、よい。その件はまたあとで話そうニーナ。まずは食事をしよう。ずっとまともな食事が出来なかったと聞いたからな。今日はゆっくりディナーを楽しもう」


そう言ってクロード様は先に席に着く。だいぶ離れたところに座ろうとしたら侍女さんズに強制的にクロード様のはす向かいに座らされた。セイラ様は定位置なのかクロード様の隣にちょこんと座る。うーんもう夫婦席だよねそれ?早くセイラ様の力でこのトチ狂ってしまったクロード様の目を醒まさせてほしいもんだ。


クロード様の合図で食事が運ばれてくる。確かにまともな食事は随分と久しぶりだ。移動の際に携帯食を食べたくらいだ。美味しそうなスープが目の前に置かれ私は行儀悪くごくりと生唾を飲んだ。テーブルマナーは家庭教師がついていたので問題ないが、侍女さんから配膳係の人まで私のアラを探すような目で見てくるので非常に食べにくい。柄にもなく手が震えそうになりながらスプーンを取ってスープを掬う。


ん?

んん?

何か入っているぞ?

スープの具に紛れて何か、絶対スープに入ってちゃいけないものが入っている気がするぞ。


私はマナー違反にならない程度にスープをかき回す。


・・・・・・。


うん、子ネズミ。


スープの海を子ネズミさんがおよいでらっしゃる。

ばっと顔を上げるとカチッとセイラ様と目が合った。彼女がこちらを見てうっすら笑ってるのが見えた。すうっと目線だけで周りの人々の顔を見ると、皆私の様子を観察している。


再びスープに目を落とす。


ああ、みんなコレを私がどうするか反応を楽しみにしているのねーうんうん、みんながグルのドッキリ大作戦なんだね!わかるわかるー。


ってゴルァ!悪質すぎるわ!


ああ、デボラ叔母様の可愛い嫌がらせが懐かしいな・・。

私はなんと遠いところに来てしまったのだろう。


ジタバタとスープのなかでもがく子ネズミをみながら私は途方に暮れていた。




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