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ペンシルナイト  作者: 手頃羊
3話「メリケンキラー」
7/16

その1・少女 awaken

リュウが願いの石を手に入れてから数時間。

ペンシルナイトは2日目に入った。

しかし、前回から誰とも会っていない。

というより、誰にも会わないように行動している。


ブラック「おいゴラァ!」

誰もいない公園にブラックの声が響く。

とは言っても、聞くことができるのはリュウしかいない。


リュウ「うるせぇ!」


ブラック「誰か見つけたら漁夫の利で後ろからぶっ刺すくらいしろよ!」

誰か見つける度に見つからないようにコソコソ動いているため、全く戦闘していない。


リュウ「んなことできるか!」


ブラック「ヒーロー目指せとは言ったけどよぉ!他の奴を殺すなって意味じゃねぇぞ!」

ブラックに、悪い奴だけを狙うヒーローのようなものを目指そうと言われた。


リュウ「悪い奴だけやればいいんだろ!なら他の奴に出会わないようにしないと襲われた時とかやばいだろうが!」


ブラック「返り討ちにしろよ!」


リュウ「悪人じゃなかったらどうすんだ!」

暇さえあればこのやり取りになっている。


ブラック「はぁ…もういい、もうあんたには期待しない…」


リュウ「はいはいどーも。」


ブラック「しかし、都合良くは見つからねーだろ。」


リュウ「それはまぁ、そうだけどなぁ。」

数時間歩いて他の参加者は何人も見つけたが、倒してもいいような悪人は見つからない。


ブラック「もしさぁ、1ヶ月に1人みたいなペースだったらどうするんだよ。」


リュウ「………」

気まずい顔になる。


ブラック「ま、あたしは良いんだけどねー。イケメンと何ヶ月も一緒なんてありがたいありがたい。」


リュウ「あんたと数ヶ月過ごすのか…」


ブラック「別に手出しても、いいんだぞ?」


リュウ「誰が幼女に手出すか!倫理的にアウトって言っただろーが!やらねぇよ!」


ブラック「あんたの世界の言葉には合法ロリババァって言葉があってな。」


リュウ「ロリな時点で合法も何もねぇだろ!捕まるわ!」


ブラック「童貞の守護っぷりはすげーなー。」


リュウ「殴りてぇ…」


ブラック「そんなことよりさー。」


リュウ「あぁ?」

今までの会話を『そんなことより』で片付けられることにムカつきながらも話を聞く。


ブラック「さっきからこっちを覗き見してるロリがいるんだが。」

リュウの背後を指差して言う。


リュウ「もう頼むからロリとか言わないでくれ。」

と言いつつ振り返ると、トイレの建物の陰から誰かがこちらを見ていた。

すぐに隠れてたが、ギリギリ見えた。


ブラック「あたしは顔見えたけど、ありゃ間違いなく10代前半か真ん中あたりだな。」


リュウ「何が言いたい。」


ブラック「こんなところに子どもが来てるんだ。あんたなら気になるんじゃないかと思ってな。」

と言われて考えてみる。


リュウ「まぁ確かに、自分で言うのもなんだが、俺みたいなガキがここに来るのに濃い理由があるんだ。結構な理由があるってことだよな。」


ブラック「ペンシルナイトに招待される願いってのは決まってないが、招待されない願いってのは大体決まっててな。例えば学生らしく、あのゲームソフトが欲しいとか、愛しのあの子と付き合いたいとかいうような軽いお願いは入らないんだよ。」


リュウ「じゃあ俺の後ろにいるその女の子も…」


ブラック「なんかしら重い理由があるんじゃないか?ゲンゴロウのような大人だと私利私欲に塗れた汚い願いもあるかもしれんが、中学生高校生に限ってそんな汚い願い持つような奴はいないって。」


リュウ「ふーん…」


(そうだとすると、何とかしてあげたいな…)


ブラック「何とかしてあげたいとか思ってないか?」


リュウ「なんだよ。」

ズバリ当てられて少しムカッとくる。


ブラック「別にいいけどさ、もう諦めたし。頼むから死なないでくれよ。」


リュウ「当たり前だろ。俺だって自分の願いを叶えたいんだ。」


ブラック「はいはい。んじゃもう一個いい?」


リュウ「なに?」


ブラック「その女の子の後ろを尾けるように汚いおっさんがだな…」

もう一度振り向く。

また同じように女の子がサッと隠れるが、その後ろで忍び足で近づくホームレスのような見た目の男が見える。

しかも手には縄を持っている。


ブラック「どこから拾ってきたかは知らんが、少なくとも石を奪おうと殺す為に近づいてはねぇな。ありゃ捕まったらあんなコトやこんなコトを」


リュウ「させるかァ‼︎」

言い終わらないうちに持っている鉛筆をホームレス男に向かって投げる。


男「いっ⁉︎ぐぁっ‼︎」

見事ホームレス男の腹に刺さり、動けなくする。


ブラック「あ、ありゃ浅かったな。致命傷…でもないな。即死じゃない。」

するとそれに気づいた女の子がホームレス男に近く。


女の子「こんのストーカーがッ‼︎」

するとうずくまったホームレス男の後頭部を思い切り殴る。


リュウ「うげぇ…」


ブラック「うわ、あの子あんたより容赦ない。」


女の子「ふぅ…」

立ち上がり手をパンパンと叩く。


ブラック「随分と細い…いや、ありゃ運動部か何かだな。おっさんに近づく時も素早かったし。」

女の子がこちらを見て慌て始める。


ブラック「どうすんだリュウ?」


リュウ「はぁ…」

女の子の方へと向かう。


リュウ「おーい!」



女の子の元へ来る。


リュウ「大丈夫だった?」


女の子「えっと…はい!おかげで…」

ショートヘアの頭を下げてお辞儀をする。


(うん、ブラックの言う通り運動部だな。)


女の子「あ、これ…」

ホームレス男に向かって投げた鉛筆を拾い上げる。


リュウ「あ、ありがと。」


ブラック「おいリュウ。この子敵意無さそうだぞ。」

ブラックが女の子に声が聞こえないのをいいことに話しかけてくる。


(さっきのコウさんみたいに、仲間になってくれたりとかはあるのかな…)


リュウ「俺はリュウって言うんだ。」


女の子「リュウ?リュウって格ゲーの」


リュウ「そっちとは関係ないかな。俺の本名だし。」


女の子「あっ…そうなんですか。」


ブラック「この子見た目通りの男の子趣味だな。」


女の子「あたしはレンって言います。」


リュウ「レン、ね。そういえばさっきストーカーがって言ってたけど…」


レン「あぁ…この人、実はさっきも会って逃げてたんです。撒いたと思ったんだけど…」

男の死体を見る。

後頭部に何か銀色の棒のようなものが埋め込まれていた。


リュウ「なにこれ…?」


レン「あ、それあたしの武器です。」

そう言うと手を握り、見せつけてくる。


リュウ「?」

すると、手の周りが少し光り、尖った棒が現れる。

棒の両端が90°曲がり、その真ん中部分を握っている。


リュウ「うわっ!えっ、これ…」

すごく見覚えのあるフォルム。


リュウ「ホッチキスの針?」


レン「はい。これがあたしの武器なんです。」


ブラック「うわぁ…なんつーエグい文房具…」


レン「必要な時に片手に1本ずつこうやって出現させて、メリケンサックみたいに戦えるんです。ちょっと違うけど。」


リュウ「そいつはすごいなおい。」


レン「近接戦闘が得意なあたしとしては、結構合ってる武器なんですけど、近接戦闘って危険なんですよね。」


リュウ「あ、うん。」


(ちょっと絡みづらいかも…)


ブラック「おい、あんたをストーカーしてた理由も聞いとけよ。」

暇そうに地面に寝転がっている。


リュウ「あ、そうそう。さっき俺の方コソコソ覗いてたのって、なんか用だったの?」


レン「…バレてました?」

顔が赤くなる。


リュウ「まぁね。」


レン「その、リュウさんみたいに優しそうな人を探してまして…」


リュウ「俺?」

優しいと言われて少し照れる。


レン「いやほら、ここって自分以外は全員敵みたいな感じじゃないですか。だから手伝ってほしいことがあるんですけど、ヘタに人に頼めなくて…」


リュウ「あぁ…普通なら見かけた瞬間襲いかかるわな。」

少しがっかりする。


レン「それで、頼めそうな人を探してたらリュウさんを見かけて、案内人さんと言い争いしてるの聞こえたんですけど、聞いてる限り優しそうな人だなぁ、って思って話しかけるタイミングを窺ってて…」


リュウ「え、聞いてたの?あの言い争い。」


レン「はい。いや、案内人さんの方の姿と声は分かんないですけど、何となくリュウさんの言ってることから大体分かりました。」


ブラック「わーお。まさかリュウの甘えからこんな可愛い子が釣れるとは。」

ニヤニヤと笑う。


リュウ「なるほどね。それで、手伝ってほしいことって?」


レン「手伝ってくれるんですか⁉︎」


リュウ「それ目的で俺を尾けてたわけでしょ。」


レン「いや尾けてたって言われると少し語弊があるというか何というか…」

ゴニョゴニョと言い訳を始めるが、ほとんど聞こえない。


リュウ「……えっと?」


レン「あ、すいません…実はですね、取り返したいものがあって…」


リュウ「取り返したいもの?」


レン「友達と買ったおそろの色鉛筆なんです。ある人に取られちゃって…どうしても大切なものなんですけど、1人じゃあ勝てそうになくて…」


ブラック「面白い話だな。」


リュウ「取り返す為に手伝ってほしいと。」


レン「はい!」


リュウ「まぁ、良いけ」


ブラック「ちょ、待ておい‼︎」

ブラックに耳を引っ張られる。


リュウ「痛い痛い痛い!」


ブラック「あんた、引き受けるのか⁉︎」


リュウ「なんだよ悪いかよ!」


ブラック「いやだって、見返り無しだぞ⁉︎そうでなくても手伝ってほしいとか…罠だったらどうすんの⁉︎」


リュウ「いやいやいやこんな子が」


ブラック「はぁ…」

完全に諦めたような表情になる。


ブラック「もういい…期待しないって言ったもんな…」


リュウ「はぁ、えっと…」

もう一度ちゃんと立ち上がってレンの前に立つ。


レン「あ、良いですか…?というか大丈夫ですか?」


リュウ「うん。ちょっと話してただけだから。んで、お手伝いだっけ?いいよ。引き受ける。」


レン「いいんですか?」


リュウ「うん。」


レン「その…あたし見返りに何かできたりとかしないんですけど…その…」


リュウ「うーん…あのさ、その大事なもの取った人って悪い人?」


レン「え?どうだろ。少なくとも、マトモな人ではなかったっていうか…」


リュウ「それはどういう意味で?」


レン「こう…芸術以外は興味ないっていうか自分のことしか考えてないって言うか…」


リュウ「ふーん…」


ブラック「あ、あんたもしかして。」


リュウ「じゃあさ、その人の願いの石は俺がもらうってことでいい?」


レン「え?」


リュウ「君だって、願いの石は必要でしょ?見返り代わりに、その人の願いの石は俺がもらう。どう?」


ブラック「なーるほどね。意外と頭使いやがるな、あんた。」

初めて感心したかのような感じである。


ブラック「まぁそうにしても不必要なほどお人好しだが。」


レン「それで良いなら…」


リュウ「じゃあよろしく。」


レン「はい!」

固い握手をする。


リュウ「で、その人どこ?」


レン「さぁ?」


リュウ「……」


ブラック「…長くなりそうだな。」

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