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大魔王降臨  4

「はい。自己紹介が遅れました。僕は現魔王城当主です。

 名前は『ピエーロ・エルドリア・ログフォンス・マケロニオ・フロモルカ・ジャグリック・タンポーポ・ルド・オンガラスタイア・ダモン』と言います。」


 「ちょ、ちょっと待って。あんたの名前にいろいろツッコみたいところがありすぎて混乱してきた。

 長くて覚えられないし、ピエーロにダモン、タンポーポって・・・。」


 長くて覚えられないのは仕方ない、周りの給仕でフルネーム言えるものは少ない。

そして『ダモン』に食いついたのは『~だもの』と言う意味の崩れた言い方『ダモン』と同じなどと言うことだろう。

 『タンポーポ』は・・・とくに思い浮かばない。


 「ファーストネームの『ピエーロ』から『魔都ピエルモ』がきています。」


 「貴方魔王だったの・・・。全くそうは見えないんだけど・・・。」


 正直僕は、身長も高くもないし身体もがっしりしていないから、よく言われるので慣れている。

 ・・・とはいってもストレートに言われると、さすがに内心グサッと弱い部分に刺さる。


 「ははっ・・・よく言われます。魔王なのに武術も魔法もからっきし苦手で、唯一人に誇れるのは白魔法の回復系は得意なんですよ。」


 「魔王が回復系が得意っていいの・・・。」


 「失礼ですが、なんとお呼びすればいいですか?」


 「私は、ヤマダ マシロ。 魔王の好きにしていいわ。」


 「ではヤマダ様、とりあえず執事のところに行きましょう。」


 「なんか固い。しかも魔王ともあろう男が、人間を『様』扱いも変じゃない?

 普段はマシローとかヤマちゃんって周りからよばれてるから、そっちでいいよ。」


 「そうですね・・・。では『マシロ』様でよろしいですか?」


 「だから『様』なんかいらないって。そのままでいいよ。

 貴方のことは簡単だけど『ピエロ』にしましょう。こうすれば、少しは友人のように見えるでしょう。」


 「『ピエロ』・・・。僕はあだ名と言うのは今までなかったから新鮮です。

 さて、ご案内しますよ、マシロ。」


あだ名はあまり言われ慣れていないから、少々照れてしまうが親近感を覚える。

 窓の外は、明るさはまだ残っている。だがもうすでに夕日は地平線に沈み、夜が今か今かと出番を待って山の陰にでもいるかのようだ。。

 よくわからないことだらけで僕も彼女も戸惑っている。

 とりあえず彼女を執事のところに連れて行き、執事と三人で考えることにしよう。部屋を出て執事を探す。

 僕よりも頭が良くてたくさんのことを知っている執事なら、どうすればいいか思いついてくれるだろう。



父はいつも仕事のことばかりで、僕の相手をしてくれなかった。

 父は毎日毎日この部屋に、朝から晩までいた。構ってほしくて仕事中に来たこともあったけど、部下と話をしたり誰かが来たりしていて僕には挨拶すら返してくれなかった。

 だからいつの間にか僕は、父がいつもいたこの部屋が嫌いになっていた。

父が亡くなって窓からの景色を見に来るようになった。でもその時には、話したかった父もいないし、ここにはもう誰も訪れなくなっていた。

 ここでこんなに誰かと話したのは、いつ振りだろうか。


 「そうだ。 とりあえず私がさっきまで使っていたこれ頭に巻いてください。」


 「ん、なにこれ? 何に使うの?」


 「先ほどまで裏庭の草むしりしていて、その時に使っていました。

 マシロには角がないので魔族には見られないかと思います。この城にいる魔族たちは人間を見たことないものもいたりします。そのために、驚いたりもしかしたら恨みを持つ者がいるかもしれませんので。」


 「なるほど・・・。 一理あるわね。さすがは腐っても魔王ね。」


 あまりほめ言葉になっていないが・・・甘んじて受け取ろう。

 僕は人間を何度か見たことがあるが、仕えているものは見たことがないものもいる。

 父が倒されてから人間との交流は皆無だから。元々、父の時から一方的な交流はほとんど無かったようだが。

 父が倒され、領土を取られ魔大陸のみが住処となった今、人間に会うことはほぼない。

 人型の魔族もいるが角や爪、尻尾や羽など本物の人間とは様々な違いがある。


 「魔王様、こんなところで如何なされましたか?」


 「やあルシファー。 ・・・・あ、と、特に何もないよ。」


 「ん、ピエロ? どうしたの?」

 

 「おや、こちらの女性は?」


 あまり人が通らないルートを、あえて選んだはずなのに・・・。

 どうしよう。

ルシファーは頭も腕もいい。まだ若いいがとてもしっかりしていて、僕も尊敬している。

 執事に相談してから周りに報告しようと思っていたけど、それよりも先に部下に会ってしまった・・・。

 ひとまずここは、


 「あ、えーっと・・・ああ、まずこの方はルシファーといって魔王軍の戦士長です。武術も魔法も長けていて、大戦争の時まだ13歳だったのに大活躍した英雄です。」


 「そんなことないですよ魔王様、恐れ多い。

 どうも初めまして。ルシファーと申します。よろしくお願いします。」


 「私は、ヤマダ マシロと言います。よろしくお願いします。」


 「これはこれは。綺麗なお嬢様ですね。

ちなみに、魔王様とはどういった関係ですか?」


 これはまずい。

 ルシファーは大戦争で人間と戦っている。それに絶対的強さをもった父を心から尊敬し、慕っていた。その父を倒したのが人間だから、もしかしたら恨みがあるかもしれない・・・。

 ここは様子をうかがいつつ慎重に――


 「私とピエロ・・・じゃなくて魔王は友達で、私自身は人間で」


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