魔王の戦い 1
街を助けられ誘拐されたと思っていた娘が、本当は自分のやり方に抗議する形で自ら出て行っていた。
なんてことを聞かされたら、意識を取り戻してすぐでもまた意識を失ってしまうだろう。
街を助けたのも、娘を預かっていたのも自分たちとは相容れぬ関係の魔族であったのだったら尚更であろう。
朝食を食べていたらマリーさんとアイさんが入ってきて、王様がまた気を失って倒れたと報告を受けた。
さすがに、王様の精神面を気にしてしまう。
本当は各自の客室で朝食を食べるはずが、なぜか僕の部屋に集まってきてみんなでここで食べることになった。
「私は魔王とまだゆっくり話せていないし、食事をとりながらいろいろ氷牢柱の話とか聞いてみたいからな。」
「べ、べ別に私は普段からエルと一緒に食べてるからここで食べるのっ!」
「私は、まだ王都を守っていただいたことに対してお礼も言えてませんし・・・。
あ、あとは国のことなどいろいろ話したいのです!」
「みんなピエロのところで食べるなら私もー。」
「ふふふっ。皆さん仲がよろしいですね。私もご一緒いたします。」
「いや、疲れてるでしょうからなんだしみんな各自で食べてゆっくりしましょうよ。」
僕の意見は受け付けられず、さも当然のようにここで食べることが決まっていった。
テーブルに並べられた料理。
そして、席についてみんなで食事を始めた。
それにしても黒マントが、人間大陸にまでも進出してくるとは想定外であった。
平和の象徴を手に入れて、僕から魔王の座を手に入れようとしているようだ。
マシロはこの世界に平和をもたらしたと言われる平和の象徴を必要としている。
マシロが空間転移をするには鍵が必ず必要になる。だが、あの黒マントは先に手に入れようと目論んでいる。
勇者がいない今、平和の象徴がどこにあるかわからない。
勇者が生きているのか、それとも平和の象徴は別の誰かが持っているのか。
そういえば、美味しい料理なのだが先ほどから誰も喋っていない。
チラチラこちらを見ていたり下を向いて食べていたり、誰とは言わないが完全に食事に集中していたり。
「アイさん、王様は起きそうですか?」
「あら、私が一番ですか。
うふふっ。王様でしたらそのうち起きますよ。」
一番というのは何のことだろうか。
よくわからないが、僕にとっての一番の目的は王様が起きてもらわないと魔王城に帰ることもできない。
マリーさんのこともそうだが、王様には平和の象徴を探してもらう。
「それにしても、みなさん今日は静かですね。」
「うふふっ。みんな恥ずかしがって話しかけ――」
「なっ何をっ!!」 「わ、私は別に!」 「えぇぇっ!?」
アイさんの言葉に凄い速さの反応で言葉を遮る。
すぐに食事を再開するが、誰も口を開かない。
「みなさん、何かあったんですか?」
「いえ、何もございませんよ?
魔王様、どうも恥ずかしがっているようですので魔王様から話を振ってあげてみてはどうですか?」
僕としてはいつもみんな騒がしいくらいなのに、今日はすごい静かだから確かに気になる。
いつも、しつこいくらいに絡んでくるマシロも静かだし。
「え、あーそうですね。んー・・・。
あっ、そうだマシロ。ご飯美味しいですか?」
「うん。美味しいよー。
ピエロ。はい、あーん。」
「いりません。キノコじゃないですか。」
「っち。」
彼女は恥ずかしがるような感じではないと思ったが、案の定恥ずかしがってない。
アイさんの言ったのはどういう意味だったのだろうか。
マシロとアイさん以外の他の人が恥ずかしがっているということなのだろうか




