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 カチャンッ


 私のポケットから何かが落ちた。

 確証はないが、帰宅し玄関の鍵を開けてポケットに入れたままの鍵が落ちたのかもしれない。

 

 ピカッ!

 

 そしてその瞬間、目の前の景色が白一色になった。

 光のような眩しさではない。

 どこまでが床でどこからが壁なのか。家具も飾りもない、ただただ白の世界。

 だが、すくにその世界には終わりが来た。

 私の視界が部屋に戻ると、自分の足元に変な違和感を感じた。

 ふと足元をみると、先ほど私が書いた魔法陣が幽かに光を発している。

 赤い魔法陣とは対照的な青白い光。

 右足の横には先ほど落としたであろう物体がある。やはり鍵だ。クマのキーホルダーが付いたものだ。

 魔法陣のちょうど中心に立つ私の足元の部分が・・・黒?

 私の部屋の床はグレーである。私の影だろうか?いや、ちょうど中心円を塗りつぶすように黒くなっている。

 靴下越しから感じる床の感触が先ほどより冷たく感じる。

 足の裏から頭のてっぺんを一瞬にして通り抜けた悪寒の波。

 それに私は身震いをして鳥肌が立つ。

 恐くなり、右足を中心円から出そうとした瞬間にわかった。

 床から足が離れない。

 そして一瞬にして床が崩れた。崩れたと表現すべきか、無くなったというべきか。

 床は無くなり、足場のなくなった私は重力という偉大な力に勝てるわけもなく当然そのまま落下する。

 足が完全に穴の中に落ちた瞬間、私は腕を中心円の外に伸ばす。

 

 バンッ


 「いたっ!」


 中心円は1メートルもない。

 なんとか肘を床にぶつけながらも、私は胸から上を残し耐えることができた。

 自分の部屋をこのような位置から見ることになり、とても不思議な気分になる。

 某有名ゲームの配管工にでもなったようだ。なかなか体験できるものではない。

 出来れば写メ・・・だなんて、私はそんなに余裕を見せている場合ではない。

 私はこう見えても一応か弱い女だ。よく風邪をひくし、実際今も風邪をひいている。体重は平均よりは軽いし身長は163、165・・・いや言いたくないが筋力はあまりない。

 この身長おかげで運動部への勧誘が絶えなかった。

 しかし、運動音痴で長距離走でも短距離走をしても私はウサギにはなることはできない。いつもカメにしかなれない、最下位争い。

 そんな私は、肘にダメージを負っただけでなんの意味のない我慢大会を数秒間行った後に、穴の中へ落ちた。

 落ちて見えた景色は黒。

 落ちる前に見えた白の世界とは違い、目のに広がる黒は目の前が壁なのかどこまでも続いているのか、それさえもわからない黒の世界。

 私の部屋の下は居間と台所であるが、ここは・・・明らかに違う。

 落ちてからほんの一瞬だったのか、それともすでに何秒か経ったのかさえわからない。

 重力というものは身体に感じておらず、今自分が落ちているのか、止まっているのかわからない。どちらが上で、どちらが下か。

 落ちた穴を探すも何も見当たらない。

 私はどうなるのか。このままここで死んでしまうのか。一つだけ後悔がある。

 母に部屋の床に書かれた魔法陣見られたら、私は怒られるであろう・・・。 



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