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旅の者(魔王)  2

人間と魔族の大戦の時に、コレットさんは街を焼かれ両親を亡くし捕虜として魔王城に連れて行かれた。元々身体が弱かった彼女は心臓に持病を抱えていた。

 労働を強いられたが出来るはずもなくすぐに倒れてしまった。監視兵が鞭で叩こうとしたところ、


 「おい。俺の部屋掃除をする人間がほしい。ちょうどいいからそいつを連れて行く。」


 と、その時の魔王であった僕の父が彼女が鞭で叩かれる直前で連れて行った。

自室の部屋を掃除させようにも、持病を抱えていたためにまともに掃除が出来なかった。

当時の人間の技術では、その病気をまだ治すことのできなかった。腕利きの魔法使いに依頼すれば治るかもしれなかったが、それには莫大なお金がかかるために彼女はずっと苦しんできた。

彼女は持病を抱えお金がなく治療できないことを説明しそのために掃除も洗濯もままならないと言うと、父は彼女を抱え上げるとベットに運び無理やり横にさせた。

彼女はどうにか逃げようとしたが、父はすぐに魔法を使い腕と足の自由を奪い動けなくした。思わず泣き出した彼女に対して、父は躊躇することなく服を破いて肌を露わにさせた。

魔族に捕虜になった時からいつかはこうなるのでは、と思っていたため彼女は覚悟を決めた。

泣くことを止め、身体に入れていた力を抜いて呼吸を整えた。目を閉じて、


 「どうぞ。」


 そう言った彼女に対して、父は笑い出した。

笑い声が終わり、やはり少し怖くなってきた彼女は薄く目を開けると、父の姿がすぐ近くまで来ていた。

胸の辺りに手を伸ばしていて、父の手が肌に触れそうになった。

その時に、父の手が急に輝きだした。

その光は、光のはずなのに眩しくはなかった。肌に近かったためにその光からは眩しさではなく温もりを感じた。

すぐに消えた光。そのあと、父は布団を彼女にかけるとメイドに服を用意させた。

用意されたメイド服に着替え、父は自室の掃除を命じた。

もう一度、持病のことを言おうとしたが聞く耳も持たず労働を強制した。

掃除を始めた少し経っても胸に痛みや苦しさは来なかった。掃除や洗濯をすればすぐに胸が痛くなり苦しくなっていたはずなのに、なぜかその日は何も起きなかった。

翌日も翌々日もその次の日も、そのまた次の日も。

父に問い尋ねると、


 「俺は魔王だ。治すことなんかできるわけがない。お前の命を消そうとしたら、間違えて病気を消しちまったのかもな。」


 笑いながら歩いて行った父の背中に、彼女は深々とお礼をした。

メイド仕事にも慣れようやく一人前になった頃に、大戦は終わった。

捕虜だった人間は解放されたが、彼女には帰る街も家もなかったために魔王城で働きたいとヒツジに頼んだ。

 しかし、人間を恨む魔族も少なくないために王都に人間との話し合いに行くときに彼女も連れて行った。

王都から少し離れた丘の上に小さな家を建てて、彼女はここで新しい人生を歩みだした。


彼女から聞いた昔話である。

今朝到着し、アリスとマシロが人間の服を選んでいる最中に彼女から聞いた。

僕は、擬人化し魔王という正体を隠して転移したのだが彼女はすぐに気が付いた。

 『懐かしいにおいがした』と言っていた。

今では、持病があったのが嘘のように元気である。

 持病があった時にずっと勉強していたために頭は良く、今は物書きの仕事をしているらしい。

めずらしいことに彼女は、魔族に対して偏見の目がない。街を燃やされ、両親を殺されたはずなのに。

「殺されたのだったら魔族も一緒だし、魔族の街だって燃やされてた。」

彼女みたいな人たちばかりなら、魔族も人間も上手く助け合って生きていけると思う。


「まったくー。結局アリスちゃん抱きつかせてくれなかった。」


「誰が抱きつかせるかッ!」


「二人とも、服汚れているよ。せっかくコレットさん用意してくれたのに・・・。」


「いいのよ。まだまだ服はたくさんあるんだから。娘が出来たみたいで楽しいわ。

まずは手を洗って昼食食べましょう。」


「はーい。」


人間の食事は魔族とほとんど同じだった。ただ野菜が多いことが違う位である。

そして、食事をしながらマシロのことを説明した。

ここに来た理由も明確になるし、何か情報があれば聞きたかったからである。

彼女は、マシロが異世界から来たことに驚いていた。人間の本に異世界の想像の話があるそうだが、本当に存在するとは思ってもいなかったらしい。

それを踏まえて勇者の所在を聞くものの、魔王を倒してからまったく勇者の話は教会でも街でも出ていないらしい。やはり王様に聞くのがよさそうだ。

だが、今の王様はあまりみんなから好かれていないようで少し前に騒がれた魔女狩りを推進し男尊女卑の思想を広めているそうだ。

やはり作戦通り、僕が勇者でマシロとアリスが付き人という設定で行くのが妥当だろう。

勇者の格好で一応来ているが、あとの二人はただの人間の娘。これでは僕がどこかからたぶらかしてきたようにしか見えないが、まあ仕方ないであろう。

王都を少し観光がてら、コレットさんに案内してもらい見て回る。

魔都のように人が多いが、王都のほうが祭りのように賑わっていて市場がたくさん連なっている。

娘が出来たみたい、と喜んでいたコレットさんは本当に楽しそうでアリスもマシロも楽しそうに話している。顔などは似ていないが和気藹々と楽しむ様子は、正に家族のようだった。コレットさんも若く見えるために母親というよりは三人姉妹に見える。

城の入り口を確認し、家へ戻るとマヤとドリーが出迎えてくれた。ドリーは、相変わらず三姉妹のほうに一目散に駆け寄っていくところが男としての本能であろう。正直言うとちょっとうらやましい・・・。

僕のところにもトコトコと、マヤが近寄ってきてくれた。僕もしっかりモテてて嬉しい。相手は犬だが。

夕飯は夕方から作りはじめ、まるでパーティーさながらの料理が並んだ。

何年振りかに飲みたくなったと言って、コレットさんはワインを飲み始めた。


「で、エル君は正直に言ってどっちが好きなの?」


と、酔い始めたようでだんだんとマシロの様な感じになってきた。

先ほどまでは清楚な綺麗な女性だったのだが、だんだんとイメージが崩れてきた。

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