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 「はぁー。てか、幽霊が好きなら心霊写真同好会行けばいいのに。

 なんでうちの同好会来たんだろなー。あの子。」


 右手には赤色のチョーク。手慣れた手つきで自室の床を汚す。

普段この床には母の趣向で買った、ピンクとオレンジ色のカーペットが敷いてある。

 正直言うと母の好きなピンクなどは私はどうも苦手だ。

 なんというか、フワフワしたというかキャピキャピしたような感じが昔から苦手だ。

 出来ることなら黒やグレーといった落ち着いた色のほうが好みである。

 だが、趣味・・・いや『魔術』・『魔法』をやるときには、その母好みのカーペットを退けてごく普通の床と対面する。


 「だいたい、あの子『近代西洋儀式魔術ってなんですか?』って、そんな初歩的なことも知らないでよく入ろうと思ったわね。

 ちょっと胸が大きいからって・・・。ゴホゴホッ。」


 『バカは風邪をひかない』それが正しいのであれば、私はバカではない。

 現に、一昨日あたりから風邪をひいている。

 いや待てよ、『夏風邪はバカが引く』とも言われている・・・。

 

 9月も中頃。真夏のあの溶けてしまいそうな、茹だる様な暑さに比べれば幾分か涼しくなってきた夕方。

 しかし外ではまだまだ夏は終わらせない、と言わんばかりに虫達の大合奏が続いている。今月いっぱいはアンコールで止まないであろう。

 スズムシが前奏を始めればコオロギがそれに乗る。そして、タイミングを見計らったかのようにセミがソロパートを歌いだす。

 

 大学から自宅に帰り、イチゴオレを飲みながらせっせと準備に勤しむ。

 窓から入る、心地よい風と夕方の日の光。

 パタパタと風と戯れる二つのカーテンは、片方は黒を基調とした物でもう一つは白いのレース物。

 窓の外には西日とビル群によって広がる陰の世界と、自室の壁に作られた私の影。

 それはまさに映画のワンシーンに出てきそう光景で、私の気分もこの部屋の空気も一層盛り上げてくれる。


 「あとは最後にこれを書いて、これで・・・よし。 できた、完成!」


 私の自室の床に広がる赤色の模様。丸に四角、いろいろな文字。

 端から見ればミステリーサークルとも、ラクガキにも見られてしまう。だがこれは歴とした『魔法陣』。

 

 たしかにオカルト研究会の中でも、ミステリーサークルとか心霊写真とかをやっているひといる。 

だがどう考えてもそのようなものは幼稚で稚拙で、非現実的なものだ。

しかし、『魔術』や『魔法』はそのようなものとは断じて、決して、全然違う。偉大で荘厳で神々しい崇高なものである。


 「・・・と言っても、ほとんどそっち系の人ばかりだから、顔出さなくなったなー。」


 一体私は何をしようとしているのかと言うと、それは・・・『魔王』を召喚するための儀式を行うところだ。

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