始まり
登場人物
囲島 主人公です
水野周太郎 博士です
白石百合乃 ヒロインです
「お前に、頼みがある」
この時点で僕は、嫌な予感を感じていた。
「何ですか、頼みって? また前みたく実験材料の調達ですか?」
実験材料の調達と言っても、スーパーで売ってるような物ではない。聞いたことのない名前の草やら花やら生物やら、怪しい物ばかりだ。大自然の中で一人寂しく歩くのは、なかなか辛いものだった。
「いーや。今回はちょいと違うぜ、囲島君」
部屋の中央辺りに位置するデスクの上に、その声の主は座っている。
水野周太郎。通称(というより自称)、水野博士。この学校で、教師をしている。担当科目は理科系全般。まぁ、そんなことはどうだっていい。
「勿体ぶらなくていいですから、早く教えてください。僕も勉強やら何やらで忙しいんですから」
彼、水野博士は、この第二理科準備室で日夜研究を行っている。いわば、僕はその助手のようなものだ。本当は、少し複雑な関係なんだけど。
「そんなことを言ってていいのかな、囲島君? なんだ、君は借りた恩も返せないような、鶴と真逆の存在になりたいのかい?」
博士は、時々変な言葉の使い回しをする。研究者というより、国語の先生のようで、あまり似合わない。研究者らしい喋り方というのも、それはそれで困りそうだ。専門用語だらけの会話なんて聞きたくない。
「そういうわけでは、ないですけど......」
僕は少し、言葉を濁す。
触れたくない過去。誰だってそういうのはあるだろう。僕にとって、博士からの恩というのが、まさしくそれなのだ。
「まぁ、今回はそこまで面倒なわけでもないよ。今までに比べたら、かなり楽な方だよ」
「で、結局、何なんですか?その頼みごとってのは」
本題を話すよう、急き立てる。いつもなら、ここまで時間はかからない。その事実に、少し違和感を覚えた。
「頼みごとってのは、ズバリ......尾行だよ」
そう言いながら博士は、デスクの上にある写真を取り、その手を僕の目線の高さまで持ち上げた。
「君には、この子–––白石百合乃君を、尾行して欲しいんだ」
その写真に写っているのは、どこか見覚えのある–––普通の、少女だった。
バトルまでの道は遠いです




