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人権






クソヤロー・レイシスに『俵担ぎ』という大変不本意な格好で連れて行かれた先は、食堂のような部屋だった。

そりゃ、ごはん食べるんだからそういう場所だろうと思ってたけど、何か無駄に豪華で広いからあんまりそんな感じがしないんだよね。

部屋の中央にある長いテーブルと煌びやかなイスがかろうじて此処が食堂だと主張している感じ。

それ以外、家具らしい家具がひとつもないから完璧にスペースの無駄遣いだと思うんですけども、人の家にいちゃもんつけるのもあれなんで黙っておきます、はい。






「うひょー、すっごいご馳走ッ!!」






目の前に並べられた数々のお皿に芸術的に盛られた料理は、今までお目にかかったことのない豪華なものばかりだった。

こっちの世界の食べ物がどんなだか不安だったけど、見た目的には私の世界のとあまり変わらない。

変わらないといっても、今までテレビの中でしか見たことなかった高級フレンチやイタリアンのようなものですけども。

匂いだけで軽くごはん三杯はいけそうであります!






「ねぇ、本当に食べていいの?」






魅惑的な料理の数々から視線を外し、目の前―――といってもテーブルがでかいからかなり離れてるんだけど―――に座っているレイシスにお伺いを立てた。

このご馳走、もとはレイシスのものだったからね。






「…ああ。食欲がないからお前にやる」


「こんなご馳走を前にして食欲がわかないなんて…!」


「ご馳走?我は毎日同じようなものを食べているぞ。普通の食事だろ」






こんなご馳走を毎日!?

しかもそれが普通の食事だと!?

金持ち、恐るべし…!






「食べないのか?」


「食べますッ!!」






この先一生食べられないかもしれないご馳走を目の前にして、食べないバカが何処におると言うのですか!?

お許しも出たことですし、私はバカではないので食べますよっ!

ではでは、いっただっきまーすッ!!






「…カリン」


「ふぁい?」






ギャッ、このお肉超うまいッ!

厚さ5㎝はあるんじゃないか?ってくらい分厚いだけあるね。

もちろんお上品に切り分けたりなんてしませんよ?

分厚いお肉はかぶりついてこそ、そのおいしさを実感できるのですッ!!






「行儀が悪い」


「ふぃにしないふぇくふぁふぁい」






ありゃりゃ、気にしないで下さいって言ったのに気にしてるよあの顔は。

眉を顰めてものすごく鋭い視線でこっちを見てくるんですけど。

せっかく綺麗な顔してるんだからもっと違う表情すりゃあいいのに。






「…異世界人とは皆このように行儀が悪いものなのか?」






むむ、その言い方はまるで異世界人差別ではありませんか!

世界は違えど同じ人間。

差別などしてはなりませぬぞ。






「ふゅふぁふいふぃふいふぃふぃふゅふぁ…」


「食べるか話すかどちらかにしろ」






ならば私は躊躇うことなく黙りますぞッ!

ご馳走を後回しにしてまで話すことなどないですもんね。

ややっ!このパン…香ばしくておいしい…ッ!






「…まるで動物だな」






なぬッ!?

差別を飛び越えて今度は人権無視ですかこの人!

それともこの世界には人権ってもんがないんですかね?

だとしたら何て恐ろしい世界…!

あ、このスープとってもクリーミ―でうましッ!






「…ルディ、この小娘は本当に異世界人だと思うか?」






小さな溜息を吐くと、レイシスは傍に控えていた金髪の女の人に問いかけた。

目の前のご馳走に気をとられていて今まであんまり気にしてなかったんだけど、彼女もレイシスに負けないくらいの相当な美形さんなんですよ、これが。

年齢はたぶんレイシスと同じくらいかな?

翡翠のような透き通った緑色の瞳が特徴的な端正な顔。

ひとつに括られた背中までまっすぐに伸びた見事な金髪は蜂蜜のように艶があってとってもおいしそ……って、いやいや!素敵、の間違いでした!






「その可能性は充分高いと思います。この娘の服装は近隣諸国のどのものとも違いますし。何より陛下の寝室に突然現れたというのがにわかに信じられません。陛下の寝室の防御魔法は他国の魔法を用いてもそう容易くは破れるものではありませんから。けれどあの伝承にしるされている通りのことが起こったとすると、陛下の寝室の防御魔法を破ったことも納得できることです」






何だかよく分からないこと言ってんな~。

相変わらず魔法だとかなんとか言ってるし。

ほんと、此処って異世界なんだなあ。






「そうだな…。とにかく、よくわからんコイツを放り出すわけにもいかない。国に災厄をもたらされても困るしな。監視下に置くに限る」


「そうですね」






どうやら何か決まったようですな?

レイシスと金髪さんが何か頷きあってるし。

それにしても、美形二人が並ぶと絵になるな~。

人形みたいに完璧だもんなあ、二人とも。

そんな美形達を眺めながらご馳走を食べている私……うふふ、なんて贅沢ッ!!






「おい、カリン」


「ふぁい?」


「お前の処遇についてだが―――」






おおッ!

ついに私の処遇についての話ですねっ!

あ~、どうか解剖という線だけはありませんようにッ!

穏便な方向でお願いしたいですッ!!






「我のペットとしてこの王宮に留まることを許そう」


「………ぺっと?」






あれ?

この世界ってマジで人権無いんですか?









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