第3話 それぞれの力
シリーズ第3話です。なぜ光が伝説の戦士なのか今回と次回に分けてお送りいたします。そして新たなキャラも登場します。
もう何時間歩いているだろうか、小川に沿って3人は歩き続けていた。里は下流の先にある湖の近くのため飛んでいけばすぐに着くみたいだが、先ほどの戦闘で2人ともかなり魔力を消費したみたいだ。
「光線が出せたのなら、2人のように飛ぶことはできるの?」
光は自分も2人のように飛ぶことができるか尋ねた。もしできるならばこのすぐに里につけるかもしれない、それにもし今メーバか、あるいはそれに匹敵するような生物に遭遇でもしたら、今度こそ命が危うい。
「う〜ん、…魔法伝承の儀式をせずにあれほどの光線が出せること自体私たちにとっては異常なことなの、だから"飛ぶ"ことはできるわ…私たちのようには無理だと思うけど…」
アキの言いたいことがなんとなく伝わった、まるで怪獣が発射した熱線のような破壊力を持っていたのだ。それこそ光が怪獣並みの大きさになれば小さな山ならば二つ三つ吹き飛ばせるのではないかと思ったぐらいだ。その力で飛んでみれば体がもたないことぐらい容易に想像できる。
「しかしですね、儀式もせず能力を身につけたということは、やっぱり伝説の戦士の言い伝えどおりですよ!」
ミオが目を輝かせ興奮気味に早口で語った。ミオは里に伝わる伝説を主な研究対象にしており、そのうちの一つ((異界の戦士))伝説にはかなり力を入れていたようだ。そのためメーバとの一戦が落ち着いてからはその情熱が爆発したようだ。
するとアキが足を止め、近くの岩の影に身を隠すよう促した。アキの目線の先、およそ50メートル先の森の中から何かが表れた。
「カマラね」
そう言うとミオは服のポケットから飴玉のようなものを取り出した。
「こっちに来たらこれを口のあたりに向けて投げてください」
「わかった」
これが何かを聞いている場合ではないと光は瞬時に理解した。およそ10分間、3人はカマラの動きを注視していた。
だが幸いにもカマラは3人がいる方向には向かわず、そのまま森に消えていった。
「まるでカマキリのようだけど、なんて大きさなんだ…」
「元々は手のひらに乗るぐらいの大きさしかないのだけど、異変の影響であれくらいの大きさが今じゃ当たり前になったわ…あなたの言ったかまきりもあんなすがたなの?」
「頭と両腕のカマは差異がなかったかな、ただあんなにも全身にカマは生えていないな」
「…異変の影響はすべての生き物に表れるのかしら…」
ミオがポツリと呟いた、その顔にはどこか寂しさが漂っていた。
「そういえばその"異変"というのは一体?」
「話していなかったわね、歩きながらでも構わないかしら?」
「よろしく頼む」
アキは光が聞いてきた"異変"について話しはじめた。
「異変というのは、桜花郷では魔力や呪術を持ったものや強大な力、この強大な力というのは魔力呪術のことじゃなくて権力のことね。過去の異変ではその里の権力者によっていくつかの里が文字通り消えてしまったわ…」
「他にも魔獣などの人間以外が起こすこともあるの、だけど魔物によって起こされた異変は1000年以上前に起きたものが最後ね。それ以前は毎年のように魔獣が表れては大きな被害が出ていたみたいよ」
「内戦、戦争、災害が一つにまとめられたみたいだ」
やはりここは元いた世界ではないのだと、光は改めて思い知らされた。
日が傾き、辺りが薄暗くなりはじめた頃3人は森を抜け、草原に出た。ここが北海道ならば放牧された牛がいてもおかしくないと光は思い、辺りを見回した。だが、生きている物の気配が全くしない。異常に巨大化した生物の襲撃を恐れているのだろうと光は思った。ふとアキが足を止め、傾き始めた日の方向に向け指を差した。
「あれが、私たちの里よ」
日は完全に沈み、夜が訪れた。光はひとまずアキの家であり
里唯一の神社に泊めてもらうことになった。勿論ミオも泊まるようだ。
玄関を開け、中に入ると聞き慣れた声が聞こえた。
「光か!? 無事だったのか!」
その声の主は友人の村田のものだった、その後ろから小さな顔がひょこりと表れた。
「見ての通り、俺たちは無事だ」
「よかった、怪我はしてないか?」
「ああ、大丈夫だ。ユリも泣かずによく耐えていた」
光はユリに近づき、抱きしめた。ユリも同じように抱きしめた。頬には一筋の涙が流れていた。
「それじゃ、何か作ってくるわね。 材料あったかしら?」
「私も手伝いまーす♪」
アキとミオが部屋を離れた。光は2人と会うまでにに体験したことを話した。森で遭遇したメーバのこと、アキとミオのこと、そして自分に芽生えた力のことを。
「やはりお前もか…」
光は帰ってきた返事に驚いた。力を持ったのは光だけでなく2人も持っていたのだ。
「今は夜だからできないが、俺は銃に関する力みたいだ」
村田はそばに立てかけてあった愛用のライフル銃を手に取り言った。だが見た目がかなり変化していた、まるでSF作品に出てくるようなレーザーガンのようだった。
「この見た目通り、実だじゃなく光弾やレーザーが出る。湖で試射してみたんだ。光の光線より威力は無いだろうが、それでも戦車一台は吹っ飛ばせるだろう」
「それでもすごい威力だ…」
「だがユリは俺たちみたいな攻撃系の力じゃないみたいだ、例えば…」
そう言うと村田はライフル銃を素早く解体し、バラバラにして置いた
「いくら組み立てるのが早くてもこうバラバラに置かれると俺でも時間はかかる、だがユリならすぐだ」
するとユリはバラバラになったライフル銃に指を差したと思うと、指から霧状の光が表れバラバラになったライフル銃に降り注いだ。やがて半円状になり一瞬強く輝くと、霧のように消えていった。後には元の形に戻ったライフル銃が転がっていた。
「昼間はそれぞれの怪我を治したんだ」
「回復させる力か」
「伝承の儀式もせずにそれほどの能力、やはり文献の通りだ、伝説が蘇る…」
襖を開けて1人の男性が入ってきた。
「メトさん、それじゃあの話はやっぱり…あ、光は初対面だったな、こちらはメトさん。俺たちを助けてくれたんだ、そして"伝説の戦士"についてのことも…」
「君が光君だね、初めてまして私はメトと言います」
袴を着た男性はメトと名乗り挨拶をした。身長は高く白髪の髪を後ろで縛っていた。
再び襖が開き、アキとミオが食事を運んできた。
「メト 、2人の面倒見てくれてありがとう、すみませんしばらくこの神社を任せていて」
「いや神官として暮らしている私だ、それにこれからはより忙しくなりそうだね」
「…まだ全員揃ってないけど、話してもいいかしら?」
「その方がいい、彼らの話しを聞く限り急がなければならない」
事態はそこまで切迫していたのか、そう光は思った。ユリが光に寄り添う、その顔は少し強張っており不安そうだった。
アキが今起きている異変、そして"伝説の戦士"について語り始めた…
ここは里からそう遠く無い森の中、何者かがある準備を完了していた。
「俺はお前を殺さなければならない…楽しみに待っていろよ………………光」
夜はまだ長い、しかしその者にとって時間など関係なかった。
「まずは、邪魔な物は一掃するとしよう」
その言葉に合わせ、何かがゆっくりと起き上がった。目は爛々と赤く光り鼻先のツノは怪しく明滅していた。
里に、そして光たちに危機が迫ろうとしていた…
第4話に続く
第3話いかがでしたでしょうか。書きたいことがどんどん出てきて文章が長くなってきたなーと制作していて思ってきましたがそれだけ楽しめてるなーとも思ってます。
これは関係ないのですが、上書き保存1日してなかったら結構めんどくさくなったのでこまめに保存すること大事ですね。




