第5話 過去(2)
「西嶋君、どうしたの? なんでここにいるの?」
美幸の問いに西嶋はニヤッと笑って答えた。
「斎藤さんを連れ去るためですよ!」
西嶋の言葉に晃と美幸は戦闘態勢に入った。
「諸川、お前も仲間か!?」
晃の問いに、笑顔で答える諸川。その笑顔は、よく時代劇に出てくる悪代官の笑い方だった。
「そうですよ。ついこの間までは動きやすかったんですけど。あなた方の捜査のおかげで活動し難くなったんですよ」
「なかなか尻尾が捕まえられなかったのは、お前が情報を流していたからだったんだな!」
「ええ、そうですよ! 係が違ったので情報を入手するのが少々大変でしたよ。ただ、これ以上捜査の手が及ぶとこっちも不味いので、あんたにはここで消えてもらうよ!」
先ほどまでとは一変して睨み付けてきた。
諸川と西嶋は晃たち性犯罪捜査第1係が追っていた強姦や輪姦や売春、人身売買などを行っていた巨大犯罪グループの一員だったのだ。諸川はそのグループのリーダーだった。
「やれ!」
諸川の合図で男たちが一斉に晃と美幸に襲い掛かってきた。
晃は男たちの攻撃をかわしながら一人ずつ投げ飛ばした。それに合わせて美幸も男たちを晃が投げ飛ばした男たちにぶつけた。
10人程度ならすぐに片付くが、35人となるとちょっと多い。その上、男たちは武道や格闘技の経験者のようで確実に急所を狙わないとなかなか落ちないため、少々手古摺っていた。
晃と美幸は同時に一瞬だけ美咲を見た。
((美咲! 110番だ!))
美咲は2人とほんの一瞬のアイコンタクトで理解し、すぐに動いた。
美鈴たちを急いで部屋に入れて警察へ通報しようとした。
だが、諸川がさせまいとベレッタM92Fを取り出し、美咲に銃口を向けた。それに気づいた美咲は避けるために動きを止めようとしたが、この場で銃弾をよけたら美鈴たちが撃たれてしまうと思い、ギリギリで避けて美鈴たちに当たらないようにしようとした。
だが………。
バンッ、バンッ




