1. 笑い上戸の王子と挙動不審の公女
※ プロローグです。
※ お気楽なラブコメですので、どうかお暇つぶしに♪
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ここはライトファンタジー王国の中高一貫の貴族学院。
二階の豪奢だが居心地の良さそうな生徒会室内──。
「あっははは、あっはははは──!」
何やらけたたましい若者の笑い声が、廊下まで響き渡っていた。
「失敬バーブラ、君がこんなに可笑しな娘だなんてねえ!」
「殿下、先ほどから貴方様は笑ってばかりいますが、私のどこがそんなに可笑しいのでしょう?」
「すべてだよバーブラ。君のすべてが驚くほどおかしい。ゲホッ、ゲホッ、ゲホ⋯⋯」
レッドフォード王子は笑い過ぎたのか咳き込んだ。
「ああ失敬!」と手元にあったナプキンで口を吹いた後、お気に入りの乳紅茶を、そのままゆっくりと飲み干した。
レッドフォード王子の落ち着きとは逆に、バーブラ令嬢は必死の形相だった。
「殿下、笑いごとではございません!お願いですから私の話を真面目に聞いて下さいませ!」
「うん、だからさっきから聞いてるよ」
「いいえ、ちっとも聞いていませんわ。よろしいですか殿下!──何度も申し上げたように私はとても悪い女です!」
とバーブラはテーブルをドンッ!と激しくゲンコツで叩いた。
その拍子にバーブラのティーカップがガッチャンと鳴った。
それでもバーブラはそんな不作法など気にも留めなかった。
とにかくレッドフォード王子に事の詳細を伝えたい、ただその一心だったのだ。
「殿下、これまでの私の悪事の数々を話せばきりがありません。涙を流した学園に通う令嬢は数知れず、生来の大悪女とは、この私ことバーブラ・ストライドを言うのですわ!」
「ぐっ……」
レッドフォード王子はますます、その青緑がかった麗しい瞳は大きくなって、形の良い口も笑いを押さえるのに必死だった。
バーブラにいたっては興奮状態冷めやらぬようだ。
増々やっきになっているのか、頬が赤いさくらんぼみたいに紅潮していく。
「どうか殿下が私を毛虫の如く毛嫌いしてくれませんと、この物語はスムーズに運びませんですことのよ!」
「ですことのよ? ククク……ほらまた君はうぷぷ……ぶははは!」
レッドフォード王子はもう我慢できず、顔をクシャクシャにして笑いだした。
「ぶはっ!バーブラ、一体どこの令嬢が『私はとても悪い女です』など呆ける?おまけに言葉づかいもおかしいぞ!」
「あらら、いけない私ったら!」とバーブラは恥ずかしそうに両手で顔を覆った。
「殿下~申し訳ありませんでございですわ!」
「ほらまた~あっははははは!」
レッドフォード王子は更に腹を抱えて爆笑した。
「うぐぐっ!」
今度はバーブラが変な呻き声をだした。
彼女の陶器のように真っ白な頬が、恥ずかしさの余り、さくらんぼから熟れたトマトみたいに真っ赤になっていく。
先ほどからこの美男美女は余興の芝居でも練習してるのだろうか?
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いやいや、このバーブラ・ストライド公爵令嬢、誠に真面目一徹だった。
多分、ひとめ彼女の姿を見たら、百人中百人ともバーブラを“最高の美少女”と口を揃えていうに違いない。
少し吊り上がったシルバーグレーの大きな瞳。
ツンとすました高く形の整った鼻。
紅も塗らないのに紅の唇。
スラリと背が高く、しなやかなスタイルで直ぐに目立つ。
それはまるで、ライトファンタジー王国の王女と間違えられるだろう──。
ちなみに王国には王子はいても、王女は一人もいない。
なのでバーブラ公爵令嬢が現在、王族の中でもトップレベルの名門貴族。
したがって事実上、この国の姫君みたいなものである。
──だが、今はどうだ!
ようやくレッドフォード王子の笑い癖はおさまり、バーブラをしげしげと見つめた。
氷の公女と、巷で言われるほどのクールビューティー。
それが、今にも赤子のように真っ赤な顔して泣きそうではないか。
ははは、これが笑わずにいられようか!
「あら、あら、どうしましょう、私ったら……またやってしまった……」
とバーブラは己の可笑しな言葉づかいを恥じて、どうしていいかわからず椅子から立ったり座ったりと忙しない。
しかもその外見と中身のアンバランスさときたら!?
バーブラが動くたびに、滝のように腰までとどく銀色に輝くハーフアップの髪が、サラサラと波打つ。
さながら銀の天の川で船をこぐ月の女神のようではないか。
そんなバーブラをレッドフォード王子の麗しい碧眼の瞳は、愛しげに眼を細めていた。
※一話お読みくださりありがとうございます。
※上の画像はくろくまくんが生成AIで作ってくれました。
とっても可愛い華やかなイラストですね。
くろくまくん、ありがとうございます。
※皆様が読んでくださったおかげで、5/14 日間異世界恋愛転移ランキングで41位にランクインしました!
ありがとうございました。
(≧▽≦)!




