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異世界で世界に影響を与えて、通販をしよう!  作者: ナスカ
第二章 アリエス公爵直轄領
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第九話 レベルアップ

 隆也とソフィアはアリエス公爵との商談を終えて宿屋に戻る途中に食事を摂っていた。


 その食事中にスマホもどきが電子音を発する。


 隆也が驚いて、慌てて画面を見ると”メール”が届いていた。


 隆也はソフィアに事情を話し、直ぐに宿屋で”メール”確認する事にした。




 宿屋の部屋に入ると隆也は直ぐにスマホもどきの”メール”を開いた。


 ソフィアも横から覗き込んで二人で確認する。


『やっほ~、久しぶりだね、隆也君。

 君の活躍はちゃんと確認してるよ。

 僕の予想以上に頑張ってるようだね、関心、関心』

「なんだか無性に腹の立つ文面ね」

「やっぱりそう思う?」

「ええ、目の前にいたら引っぱたいてやりたいくらい」


『さて、今回メールした本題なんだけど、

 隆也君は活躍の甲斐あって、”ギフト”持ちに出会う事が出来たようだね。

 まあ、隆也君だけの力じゃなく、ソフィアちゃんの力もあっての事だけど。

 あ、挨拶をしてなかったね。 

 ソフィアちゃん、初めまして。

 気軽に”神様”って呼んでくれていいよ』

「この人(?)、どこかで私たちを監視してない?」

「してないと云えないのが悲しい…」


『話を本題に戻すね。

 君達が”ギフト”持ちに会ったら、

 してあげようと思っていたスペシャルなサービスを教えて実行してあげるよ。

 それはズバリ、隆也君にもギフトを授けてあげる』

「勿論、只じゃないだろうな…」

「この性格の悪そうな文面からすると、間違いないわね」


「酷いな、性格が悪いなんて~!

 でもまあ、只じゃないのは正解。

 スマホもどきの”ショップ”で買えるようになっているんだ。

 後で確認してみるといいよ。

 そしてこれはあくまで”ギフト”であって”スキル”じゃない。

 だからこの”ギフト”はソフィアちゃんに付与してあげる事も出来るんだ。

 ちゃんと選択出来るようにしてあるから確認してね。 

 じゃあまたいつか”メール”を送るよ、それまでに隆也君が死んでいなければだけどね」

「・・・」

「・・・」

「この”神様”をぶん殴る”ギフト”はあるのかな」

「ぜひ私にも付与して欲しいわ」


 

 二人は早速”ショップ”を確認してみる。


 そこには確かに新しく”ギフト”が追加されていた。


 種類は多種多様で数も多い。ただし残念ながら二人が一番欲しかった『”神様”をぶん殴る』のギフトは無かった。


 隆也は一通り見てから

「ソフィア、俺はこの『身体強化』を買おうと思う」

ソフィアにそう告げた。


 隆也はやはり自分の身体能力がソフィアと比べると著しく劣る事を気にしていた。それをポイントを使って”ギフト”で補えるのだから願ってもない。ソフィアの負担減と二人の身の安全をポイントで買えるのと変わらないのだから。


「いいと思うわ、って言うか、これはリューヤの物だから私の了承は必要ないわよ。

 ただお願いとして、私はこの『槍術熟達』の”ギフト”を貰えると嬉しいんだけど」


 これは隆也にとっては意外なソフィアのお願いだった。


 槍術を長年にわたって磨いてきた人間からすると、”ギフト”で簡単に上達するのは武人として抵抗があるかもと考えていた。


 しかしそれは隆也の間違った考えだった。


「”ギフト”は云わば神からの贈り物でしょ。

 それを否定するなら天性の才能も否定しなければいけないわよ。

 後天的に得る才能は決して恥じる物じゃない、これは常識よ」


 ”ギフト”は後天的に得る事もあるとこの世界では広く認識されている。


 つまり少なくともこの世界では邪道でもなんでもなく、ソフィアが望み、それが隆也にとっても望ましい事なのであっさりと了承して二人の”ギフト”を購入した。




 宿屋の庭に出て”ギフト”を発動させると明らかに違う事が自覚できた。


 因みに『身体強化』は発動時、元の身体能力を1.5倍に増強させる。そして『槍術熟達』は槍術の技量を1.2倍熟達させる。数値で表すのが難しい”技量を1.2倍”とはどの位か解りづらいが、その辺は信じるしかない。


 力が増したと思えば試してみたくなるのが人情だ。二人は街を出て森で狩りをする事にした。


 幸い魔獣は直ぐに発見、正確には魔獣の群れと遭遇できた。


 魔獣は黒狼で数は20頭弱。腕試しには丁度いい相手だった。


 戦いが始まって驚いた。


 隆也は体が軽く、思った以上に素早く行動できる。それだけに留まらず、素早く、正確に戦闘の判断が出来る。考えてみれば身体能力が上昇しても思考に属する能力が上がらなければ、まともに行動しにくくなるだけだ。そして判断の速さや正確さは脳が司る。その脳も体の一部だと考えれば納得がいく。


 そしてソフィアの方は槍の技術が上がっている。つまり効率的に素早く突き、払い、打つ事が出来るようになっている。これは時間をかけて少しずつ上達していくものなのだが、その時間を一足飛びしてしまったと云える。


 二人は相手の動きに合わせるのに最初こそ少し戸惑ったが、直ぐに呼吸を合わせていき、それからは魔獣の群れを圧倒するのだった。


 魔獣の群れを圧倒的な強さで殲滅した二人だったが、その時

「だ、誰か、助けてーー!」

女性の声が響き渡った。


 隆也とソフィアは顔を見合わせると互いに頷いて、その声の方へと向かった。




「いや、こないで、こないでーー!!」


 身なりのしっかりした女性が熊に似た魔獣に追い詰められ、腰を抜かしている。


 そんな人間の言葉に魔獣が従うわけもなく、飛び掛かった。その瞬間、

 ”グサッ”

飛び掛かった魔獣の脇腹に隆也のボウガンが突き刺さった。


「間に合ったか」


 二人はぎりぎり間に合ったことに安堵する。


 ただ魔獣はボウガンの矢の一発で仕留められるほど弱くはなかった。しかしソフィアが走る速度を緩めずに魔獣へと突進する。魔獣は向かってくる敵を迎撃するべく攻撃を仕掛けてきたが、ソフィアは走りながらその攻撃を払い、連続した動きで魔獣の首を落とした。


 隆也が身体強化のギフトを得ていなければ間に合わず、ソフィアが槍術熟達のギフトをえていなければここまで鮮やかに魔獣を仕留める事は出来なかっただろう。それは二人も分かっており、改めてギフトの力で自分たちの戦力が上がったと感じるのだった。


「あ、あの…」


 助けられた女性がおずおずと話しかけてくる。


 それに応じようとした隆也だったが

「駄目よ、リューヤ。

 このまま街に戻りましょう」


 ソフィアはそう言って隆也の手を引いて、女性を置いて街へ向かうのだった。


 折角助けた女性を放っておく事に戸惑う隆也だったが

「あの女性、身なりからしてかなりの上流階級の令嬢よ。

 それが何故、街の外にいるかは知らないけど、

 おそらく護衛とはぐれたから一人だったのでしょうね。

 実際に近づいてくる人の気配があったから間違いないと思うわ。

 その護衛達が令嬢を発見した時、私達の様な素性の知れない人間が居れば、

 女性を襲おうとしていた野盗と勘違いされかねない。

 上流階級の令嬢を一人にするなんて失態を犯した護衛達は必死だから、

 弁解も通じないでしょうしね」


 ソフィアはそんな分析をした。まあ、隆也にしてみれば助けた女性と護衛が合流するなら危険は少ないだろうから、問題はないかと判断した。ただ

「あの男性、リューヤ、と呼ばれていましたね。

 リューヤ様、このお礼はいつか必ず」

助けられた女性がそんな決意をしていたとは露ほども気付いていないのだった。


 そして帰ってからポイントを確認すると

「人助けはしたけど、なんでこんなに上がってるんだ?」

隆也が驚くほど、ポイントが上昇していた。




 その夜、隆也とソフィアは隆也の宿泊する部屋で明日の予定の打ち合わせをしていた。


 打ち合わせを終えると、ソフィアが隆也を見つめてにっこりとほほ笑んだ。


 その笑顔に思わず見とれてしまった隆也だったが

「え、と…、どうかした?」

そう尋ねるとソフィアは笑顔を崩すことなく

「別に。

 ただリューヤのおかげでこんな充実した日々の連続で、

 おまけに十八の誕生日にギフトを得るなんてちょっと前には想像もしていなかったから」

そう答えるソフィアだが、隆也にはその答えの中に含まれていたある言葉が気になった。


「ちょっと待って。

 ソフィアの誕生日って、今日だったの?」

「うん、十八のね」


 隆也とソフィアがパーティーを組んだ時、後一ヶ月弱で十八の誕生日だという旨の発言はしていた(第三話参照)。そして二人はもう二十日以上行動をしている。そろそろソフィアの誕生日でもおかしくはなかった。


 とは言え、この世界では貴族でも誕生日を盛大に祝う風習はない。祝っても嫡男だけで、盛大にとなるとその嫡男の成人などの大きな節目に限られる。だからソフィアも祝ってもらえるなんてまったく思ってもいなかった。


 しかし元日本人の隆也としてはそうはいかない。なんとかソフィアの誕生日を祝ってあげたい。


 とは言っても、もう食事も済ませたので、豪勢な料理とかは出しても食べられない。


(何か、何かないか…、そうだ!)


 そこで隆也は”ショップ”でバースデーケーキを購入した。


 ソフィアはホール状の見た事もな豪華な物に目を丸くしている。


「リューヤ、これなに?」

「ケーキと云って俺たちの世界では節目節目で食べる、

 ちょっと贅沢なお菓子になるのかな」


 隆也はナイフと皿も購入してケーキを切り分けようとするが、ソフィアがじっと見つめてとても切れる雰囲気ではない。仕方なくソフィアが落ち着くのを待ってから切り分け、ホールの4分の一を皿にのせて差し出した。


 ソフィアは最初の一口こそ、おっかなびっくりだったが、一口食べた後は満面の笑みでケーキを一心不乱に食べている。


「桃缶も良かったけど、これは豪華さでは比べ物にならない…。

 そういえばリューヤ、さっき節目節目でケーキを食べるって言ってなかった?」


「うん。

 大体、年に二回くらいかな」


 誕生日とクリスマス、ホールケーキはこの二回が圧倒的に多いだろう。


 それを聞いたソフィアは

「年に二回も…。

 リューヤの世界はまさか天界”?」


 ”理想郷”(第五話参照)がケーキで”天界”にレベルアップした瞬間だった。

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