貴重な資源は無駄にしない
「かくして残虐なる死王グラヴィドゥは勇者に倒され、大陸に平和が戻ったのだった」
素晴らしきかな。
俺は満足しながら魔物を食った。件の死王を食った魔物だ。アンデッド系の魔物を作ったのは初めてだったので心配だったが、しっかり勇者の体にはりついて死王からその身を守ってくれた。
意外と便利だなあ、アンデッド系。
誰かに取り付かないと物理に干渉できないので弱いと思っていた。まあ、弱いけど。アンデッドには物理攻撃が効かないので、対アンデッド用に飼っておくのもいいかもしれない。
「でも上に立てるタイプじゃないよなあ」
死王くんはアンデッド系の何に希望を見出したんだろ。いや、四天までたどり着いたんだから成功してると言えるかな。逃げるのが上手そうなのは有利点かもしれない。あと、ふわっとした形のないものなので作るのが簡単だ。
「さて、次だな」
もぐもぐしながら俺は世界地図を頭に浮かべた。
「雷の扱いに慣れただろうし、大陸を救った達成感も得られた。次は修行パートかな? 広大なラッカニア大陸で蟲をちまちま倒すツアーで」
やっぱり勇者は雷だよなあ。でも剣でしか使えないっていうのもあれだから、魔法職の仲間ができて修行つけてくれたりしないかな。
「うーん、この世界の冒険者って肉体労働者って感じなんだよな。やっぱり装備品でなんとかしようか、まだ色々つけられそうだし。いやでも仲間との出会いと別れは熱い……考えておこう……」
残念ながら魔法が使える魔物というのはあまりいない。魔法は魔素を扱う技術だが、魔素をそのまま使える魔物には必要がないのだ。メラを使わなくても炎を吐き出せばいいじゃないということだ。
「ま、新大陸で新たな敵、新たな苦難。そしてまた成長、だな」
うきうきと考える。楽しい。俺の期待を超えるくらに成長して、予想外のことをしてくれないかなあ。
なにしろ魔王は退屈だ。手下に魔素を集めにいかせて、自分は魔王城で魔素食ってるのが一番いいのだ。楽しいことなんて何もない。
でも人間だったころもそうだったかな。ゲームざんまいな子供の頃の記憶ばかりがある。つまり大人になったらずっと仕事仕事仕事仕事仕事、早死した覚えはないのに、もったいないことをした。