952 居心地のいい場所
「まあ、そうなるわよね。ラヴィにとって、ヘウンデウン教っていうのは、もしかしたら居心地のいいところだったかもしれないし……あ」
そこまで言って、彼のほうを見る。アルベドはそこまで気にしていない様子だったが、今のは完全に失言だなと口を閉じた。
ごめんという意味を込めて頭を下げれば、アルベドの視線は私から外れる。
ラヴァインは、アルベドに振り向いてほしくてこれまでいろんなことに手を染めてきた。アルベドはそれを許容してきたわけじゃない。彼載っていることは間違っていると声を大にしてでもいうだろう。私だって、ラヴァインがヘウンデウン教にい続けるということなのか知っている。ヘウンデウン教にいればこれからも法を犯し続けるだろうし、彼の倫理観がさらにねじ曲がっていくはずだ。ラヴァインは自分に欠損があることを知っている。心の欠損、人を愛するという方法が世間一般とズレているのだ。
彼がヘウンデウン教に身を置き続けることは彼にとっていいことではない。アルベドは、彼のことを気にしていないと言いつつも、彼のことを特別気にかけているのだ。兄としてなのか、家族としてなのか。はたまた彼の中に何かしらの感情が他にあるのか……私には彼が何を考えているかまでは分からなかった。人の心の内側なんてそうそう覗けるものじゃない。
「ごめん、今のは完全に失言だったわ。ラヴィが心地いいって感じているかどうかはわからない……けど、あそこに身を置き続けるしかなかった彼の……同情なんて彼には必要ないのかもね。同情をしてほしいわけじゃないだろうし。言葉が見つからない。口、閉じたほうがいいかもね」
「……お前なりにいろいろ気にしてんだろ。初めこそ、お前も突っかかられてたじゃねえか。俺のせいで」
「アルベドのせいっていうか……」
彼が、悪役ルートの隠し攻略キャラだと知ったときは確かに驚いたが、もうそれを受け入れてしまっている。ラヴァイン・レイは単にアルベドの弟という属性ではなく、一人の人間として私は見ているのだ。彼と共闘したこともあった。今だって、彼は記憶を取り戻し、ヘウンデウン教の内部からどうこうしてくれようとしている。
今は逃げるのが難しいかもしれないが、彼の技量があれば、ずっと身を隠し続けながらならあるいは、他の方法をとれば脱退もできないこともないかもしれない。
それは、彼がどう受け止めるか次第だけど。
「まあ、居心地がいいって思わなきゃそこにいねえのもまた事実だな。強制じゃねえんだし」




