9
あれからメーラブ親子を見かけた辺りを中心に捜索してみたが、1頭も会えないまま太陽が頭上に来てしまった。
空腹のままの活動で皆の疲労感も大きい。
「あの木の木陰で少し休憩をしよう。」
俺は少し歩いたところにある大木を指差す。
「やっとだー! もうアタシ疲れちゃったよ〜」
1番体力のなさそうなチカがもう根を上げている。
獲物を持っていない分、身軽なはずなんだがな…
俺たちは木にもたれかかって束の間の休息をとる。
リュウイチはさっきの失敗を引きずっているようで終始無言で、若干パーティの空気が悪い。
「チカ、水魔法で水を出してくれないか? 水が飲めたら狩場では助かる。」
「えぇー?! できるかなぁ…」
「コップがないから少しでいいんだが…」
「できるかわからないけど、やってみるね。 ウォーター!」
チカが水魔法を使うと消防車が放水するような高威力の水が出て、虹が見えた。
「「「……」」」
「ごめ〜ん! どうやって弱くしたらいいのかわからない!!」
「いや、できたらいいな、ぐらいだったから大丈夫だ。」
水筒も無い、自前で水も準備できない…
川の見つけ方もわからない…
このままではマズイ。
誰かが倒れるのも時間の問題かもしれない。
「もう少し休憩したら一旦街へ戻ろう。元々3往復するつもりで水筒も買わなかったし。」
「だけど、何の獲物も持って帰らずに街に戻っても仕方ないんじゃないか? 金がないぞ。」
「私も街に戻った方がいいと思うわ。冒険者ギルドでもう少し狩場の情報が貰えるかもしれないし。」
「私はどっちでもいいけど…」
「やはり1回街に帰ろう。俺たちは準備不足、情報不足すぎると思う。」
「…わかった。」
俺たちは一旦街に戻ることになった。
気持ち的に足取りは重い。
歩きながらメーラブに会えたらいいと思ったが、そんな幸運もなくあっという間に街の入り口の門に着いてしまった。
昨日と同じように身分証無しだったため、ユージンが来て対応してくれた。
「あれ? お前ら冒険者ギルドに登録しなかったのか?」
「実は冒険者ギルドに登録するお金が足りなくて…」
「えぇ?! お前ら金も貯めずにこの街に来たのかよ。 1回村に帰って金貯めてからまた来た方がいいぜ。この街で家なし金無しじゃスラム街に行くことになっちまうぞ。」
「それが出来たらいいんですけど、家出のような状態で出てきたので… 俺たちは魔法や剣が扱えるんですが、何か仕事はありませんか?」
「冒険者ギルドに登録もしていなかったら、どんだけ立派な剣技や魔法が使えても金にならないぜ。真っ当に稼ぐとなると日雇いになるが、大した額にならないから家が無いなら生活できんぞ? 悪いことは言わないから村に帰んな。」
「……それが出来ないんです…」
俺も帰れるなら帰りたい。
高い戦闘能力を貰ったのにこんなに苦労するとは思わなかった。
俺は歯を食いしばってぐっと涙が出そうなのを堪える。
ユカリとチカは抱き合って、リュウイチは俯いて、それぞれ堪えている。
「…ワケありかよ。それなら宿屋巡りをして同じ村出身のヤツんとこ行ってみたらどうだ? 宿屋はこの街に20軒しか無いから、宿に泊まっているなら会えると思うぞ。」
「わかりました…探してみます。」
「俺が勧めたのはドラゴン亭だ。ここからまっすぐ行って公園が見えたら右に曲がってしばらく歩いたら着くぞ。頑張れよ。」




