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復讐の鐘が鳴る時  作者: 柊なつこ
一章 荒れ狂うは雷の刃
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作戦会議

次回から戦闘に入ります

急いで戻り、ナターシャの家の扉を開けようとすると家の中からナターシャとはまた別の少女の声が聞こえてきた。


「こら暴れるな!」


「はーなーせー!」


少女はナターシャに拘束されているのかしきりに離せ離せと喚いている。


二人は不思議そうに顔を見合わせながらゆっくりと扉を開け、応接室へと歩いていった。


「帰ったか! っく! いい加減諦めて私に協力しろ!」


「何で私達がお前の面倒事を手伝わないといけないんだよ!」


「だからさっきから言っているだろう。これは私の事でもこの国の事でもない世界の危機の関する事なのだ! 断るにしても私の話を聞いてからにしろ!」


「どうせ断るから聞いても無駄だもん!」


到着すると二人が目にしたのはナターシャと同じほどの背丈の少女はわきの下から腕を回し必死で逃すまいと抱きつくように押さえつけている光景だった。

必死な形相で押さえつけるナターシャ、喚きながらジタバタと暴れまわる少女。

そして、ナターシャに拘束されている少女と同じ顔をした二人の少女が向かいの椅子に座り、それを眺めていた。


「あの......只今、戻りました」


「ああ、ちょっと待ってくれ! この、おい! お前達も座ってないでこいつを落ち着かせろ!」


「あらー賑やかでいいじゃないー」


「はぁ、......ストレルカ座れ」


「えー」


「この状態じぁ何も話が聞けないだろうが。言っただろう、人の話を断るのならまず話を聞いて、ちゃんとした理由を定時してから断れってな」


「......んーわかったっ! ナターシャすまなかったな!」


ストレルカはライカの言葉でナターシャの腕の中で暴れるのをやめると素早くライカの隣へとポスンと飛ぶように座った。


「はぁ、はぁ、......お前達も座ってくれ」


ナターシャが息を整えながらボスンと座り込み隣のスペースを叩いている。


「ナターシャ様。もしかしてこの人たちは聖騎士の?」


「そうだ。おい、お前たち挨拶しろ」


「ライカだ」


「ベルカでーす」


「ストレルカなのだ!」


「ルーク、です」


「マリアです」


「自己紹介が終わったところで話を進ませてもらおう」


座っている人物の顔を見渡し、少し間を空けると口を開き話し始めた。


「まずは、ルーク。腰に下げてある物をこいつらに見せろ」


ルークは言うとおりに差してあるトリエラを鞘ごと引き抜きテーブルの上に置く。

すると、三姉妹の顔は一気に強張り、部屋の空気がピリピリと振動し始めた。


「おいこれは」


「そうだ。お前たちの想像しているようにこれは十崩器。雷の邪神が封印されてある雷魔刃トリエラだ」


「何でこんな場所にこんなものがあるのだ!」


「黙れ!」


ストレルカが魔剣を指差しながら大きな声で問いただす。

しかし、ライカはそれに一喝すると手で拳を作り、ストレルカの頭に振り下ろした。


「いだっ!」


「何で十崩器がここにあるか。何て聞くのは馬鹿がする質問だ。確かに邪神の力は強大だが今は封印されている。そんな物の為にめったに周りに頼らないナターシャが態々、私達を探してまで協力を頼んだりしないだろう。つまり問題はこの十崩器ではなく、十崩器に関係すること......そう例えば他の邪神の封印が解けたとか」


「あらあらそれは大変ねー」


「いたいた。痛いのだ! 何で私は叩かれたのか!?」


「お前は少し黙ってろ。話が進まない」


「うー」


「ちゃんと静かに座っていられたら好きな食べ物買ってあげるわよ?」


「ほんとうか?! よし、だまっているのだ!」


頬を膨らましながら不満を訴える妹にベルカはライカの変わりに宥める。


「......話が逸れた。それで私の予想は正しいのか?」


「大方遭っている。しかし、その封印から開放された邪神が唯の邪神じゃない。......ガルバルディアだ」


「確か、虚無牢に入っている筈だ。あれは神の上の存在が造った代物。幾ら、邪神の親玉とてあの封印は解除できない筈なんだがな」


「今考えることは其処じゃない。問題はもうすぐその親玉がこの雷魔刃を奪いに来るということだ」


「......なるほど。合点がいった。それで戦力として私達を呼んだわけだ」


「そうだ。既に緊急の方法で手紙を送った。他の聖騎士が到着するまで私達はこの魔剣とこの二人を守らないといけない」


「魔剣をガルバルディアから守るのは分かるがその子供を守る意味は?」


「ガルバルディアとその契約者にルークが持っていることがばれている」


「一応聞いておくがその子供は契約はしていないのだな?」


「話はしたようだが契約はしていない」


「なるほど。こいつには契約者としての適正があるようだ」


「どう言う事だ?」


ルークの問いに答える。


「普通契約者ってのは自分からその十崩器に呼びかけて契約を持ちかける。もし失敗すれば死ぬ。しかし、極稀に相手から契約を持ち出されることがある。それが適正のある人物、適正者ってことだ。まぁ、成功しても一生お尋ね物だがな」


「そうなのか」


「その話はさておいてー。こんな街中で戦闘になったらー。町の人たちが危ないんじゃないのかしらー」


ベルカが再び話を戻し、疑問をナターシャにぶつける。


「戦いは今夜だ、私が首都に手紙を送ったとしても国民に知らせるまでの時間を要するだろう。そんなギリギリの時間帯に知らせたら間違いなく混乱が起きる。それに、この都市にはガルバルディアとその契約者が潜んでいる。下手にことを荒立てたら気付かれてしまう。今はもう昼だ、唯でさえ迎え撃つ時間がないなかでさらに時間を削る可能性があることは絶対矢ってはいけない愚策」


「そんな......」


「卑劣と思うだろうが私達の考えなければいけないのは目の前にいる人を救うことではなく世界中に生きている人を救う方法だ。今ここで災厄の邪神を逃がし野に放たれでもしたら再び神代の時代に逆戻りになってしまう」


ナターシャの非情なその言葉に思わず口を押さえ驚きを隠せないマリア。

その言葉に補足するようにライカが話す。


「そう......だよな」


これが現実とルークとマリアは噛み締め、しょうがないことなのだと割り切ろうとしている。


「そうは言うが悪い話だけではないぞ。被害は抑えるよう立ち回るし、援軍の聖騎士が到着すれば転移の魔法で人の住んでいない場所に戦場を移すことが出来る。それにさっきお前達二人が手紙を持っていく時にエレオス様と対話した」


「何? 神と対話が出来たのか?」


「向うから話しかけてきた。と言ってもあちら側も何者かに妨害されていて殆ど話すことは出来なかったがな」


「それは珍しい」


ライカが珍しいと言った理由は、よほど世界に危機が迫っていなければ神との対話を行うことは出来ないからである。

しかも、そういった場面で対話を行うのはいつも聖騎士側であり神から対話を求めてくるのは極めて稀。

いや、少なくとも今までライカが聖騎士と言う位についてから数百年そういったことは一度もなかった。

だから驚くし、向こう側にから話しを求めてきたと言うことはそれだけ危機が迫っているということだろう。

こちら側(下界)だけではなくあちら側(天界)も......。


「神々の間でも何かが起こっているらしい。これは今回の件と関係がある可能性が高いと考えている」


「つまりだ、私達はその契約者を逃がさないように戦い、他の聖騎士が到着するまで時間を稼げばいいのだろう」


「端的に言えばそうだ。私は守りと援護を担当する。お前達は攻撃を担当してもらう。それと、契約者が居る場所も分かっているから私達は先に囮としてそこに向かう。お前達は屋根の上からその建物を囲み、逃げれないようにしてくれ」


「分かった。一応、魔力遮断のマントを着ておこう」


「ストレルカちゃーん、起きてー」


「ぐうぐう......むにゃむにゃ......は? んー。起きたのだ! 話は終わったか?」


「あぁ。これから戦いの準備だ」


そう言うとライカは席を立つ。

それに合わせるようにベルカも立ち上がり隣で寝ていたストレルカの肩を叩き、起す。


「場所と諸々の詳細はこの紙に書いてある。読み終わったら燃やしてくれ」


「分かった。行くぞ二人とも」


「晩御飯か!?」


「阿呆。これから戦いの準備だ。それに、まだ日が高いだろう」


「でもお腹空いたのだ!」


「準備が終わったら何か食べましょうねー」


寝ぼけ眼のストレルカを引き釣りながら扉を開け三人は外へと姿を消した。


「......さて、お前に言っておかないといけない事がある」


「何でしょう?」


一度、ティーカップを傾け、喉を潤すと静かにテーブルに置く。


「まずはマリア、お前は私から離れるな。今回の戦いは普通の戦いとは違う。言うなれば神と神の戦い。一度、私から離れてしまえばお前を守れる自信はない。つまり、私から離れればお前は死ぬ。分かったな? 私から絶対離れるな」


「は、はい」


搾り出すように声を出すマリアを尻目に視線はルークとテーブルに置かれている魔剣に向く。


「ルーク、お前もマリアに言ったように私から絶対離れるな。それともう一つ。絶対そいつとは契約はするなよ」


「何でだ? 邪神と契約すれば戦う力が手に入るんだろ!?」


「私は何度か契約した者達を見てきた。......確かに得られる力は強大だ。しかし、ライカも言っていただろう? 『契約していたら一生お尋ね者』ってな。一度してしまえば破棄する事は出来ない。たとえ人を守るためにその力を欲したとしても禁忌に触れる者は何人も神は許しはしない」


「でも!「でもはない! 絶対だ!」――ッ! クソ!」


「お前は妹を天涯孤独にするつもりか?」


「お兄ちゃん......」


「......分かってる。契約はしないよ」


両手を握り締め自分の無力さに痛感しているルークの服の端を引っ張るマリア。

荒げた息を整えテーブルに置かれてある魔剣を腰に挿し直した。


「話は終わりだ。昼食を食べて目的の場所に向うとしよう」


戦いはもう直ぐだ。




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