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103/394

103.アトは思う。ケルベディウロスたちは会話する。

ケルベディウロスの言葉に、アトは、ただ頷いた。

アトには、何を行うべきで、何を控えるべきなのか、何も分からない。

自分は一体、今、何をするべきなんだろう・・・?

アトはぼんやりと思った。


ケルベディウロスが、語り出していた。

『我輩は、ケルベディウロス』


もし。自分が。

先ほどケルベディウロスが呟いたように、自分の運命が、あの世界の、あの白い人の、像を、壊す事だったのなら・・・?



ケルベディウロスが呼びかけている。

『真なる世界の、大いなる右腕』



もしかして。ケルベディウロスが、『壊して欲しい』と自分に一生懸命に頼んだ“時間を止めている仕掛け”というのが、あのたくさんの像で。

ただ、運命のままに、僕が行ったことで、壊れた・・・僕が壊したなら・・・?



不思議に深く響くケルベディウスの声。

『小さき世界においてはローヌに深くかかわる者』



でも、そんな、運命。そんな酷い運命、僕は・・・。嫌いだ。

それを運命というのは バカげてて・・・。



ケルベディウロスの語り掛けに、反応が出る。

「えっ!?」



バカだなぁ、僕。運命なんて、人の決めた運命なんて、信じないって、思ってたのに。それなのに、こんな事になって、運命なんて言葉を考えてる。



初めの反応は母の声。

「ケルベ!? ケルベディウロスなの!?」



アトは、外からの声を聞きながら、自分の内側で考え続ける。


運命。

運命だと決められているなんて 変だよ。運命だとか、運命じゃないとか、そんなのは関係ない。どこにも運命なんてものは無い。

ただ、自分が出来る中で行った事が 今に繋がっているだけで。



手鏡から、声が大きく届く。それは母の声。自分を心配している母の声。

「どうしてケルベが!?」


今 僕がここにこんな風に居るのは。運命なんかじゃなくて。僕が、そして周りが、それぞれ行動した結果で。

だからこそ。

僕が、することは・・・?


“ちゃんと、謝りましたか? アト様”

傍で告げられたかのように、言葉がアトの耳に蘇った。

アトはハッとした。

昔、キロンとケンカした時に、庭師のサルトから言われた言葉。



ケルベディウロスが、母に応える。

『サリシュ、よく聞くが良い。安心しろ、お前の息子、イシュデン=トータロス=イングスは、今ここに居る』



・・・でも。

でも。違う。まだそうじゃない。そこじゃない。

僕は。

そう、隣にいる、パンデフラデ=トータロス=プラムだって、同じだ。

僕たちは、自分たちが何かをしたのかさえ、分かってないんだ。



「どういうこと!? ケルベ!?」



でも 白い人は僕たちが壊したと思ってて・・・。でも僕たちは、分かってない・・・。



「どうして!? あの子に、アトに・・・何かしたの!?」



説明を しなくちゃ



「ケルベディウロス、だと・・・!? お前は・・・!!」


そして、本当に、何があったのか。自分が何をしたのか。何が起こったのか。

僕は、向き合わなくちゃ。



「クォルツ!! お前が・・・!!」

「うわあぁああっ、ちょ・・・ヤリ!! 止めてってば、怖すぎ、トートセンクっ!!」


***


セフィリアオンデスは、急上昇しようとしたトートセンクの左足首をガシっと掴んだ。

「落ちつけッ!! トートセンク! 空、空、空!」

トートセンクの背後、上空に見るヤリの群れが、また不気味に音を反響させている。


「現実見なよ! 落ち着けってば!! アンタが、ここでヤリ落としたって、相手にも届かないし何にもならないし、それどころか、この場所確実にもうダメになるよ!!」

ていうか、アタシも死ぬよ! 寿命尽きて逝くのはいいけど、断ち切られるのは勘弁!!


石から不思議な深い声が聞こえる。

『エクエウ。真なる世界に残っていたとはな』


ガローン!!

「ギャァ落ち着けってば!!」

耳のすこぶる良いセフィリアオンデスにとって、音の威嚇は大変な脅威だ。

思わず左足首を掴む手に力を入れた。

ら、

ぶーん。

痛かったのだろう、トートセンクは、セフィリアオンデスを振り落とそうとして左足を大きく揺らした。


「うぉ!! おおぉおお」

すでに宙に浮かんでいて、セフィリアオンデスは、振り落とされないようにさらに手に力を込めた。


ぶーん、ぶんぶん。

「おー・・・」

なんか、面白いね、この動き。


「手を離せ、セフィリアオンデス」

「・・・」

中空で、トートセンクとセフィリアオンデスは睨みあう。

そんな中で、あの青い石から、また声がした。先ほどトートセンクが地面に叩きつけてしまったため、少し距離があるが、声はよく届く。

『お前は、真なる世界に干渉した者たちか? セフィリアオンデス』


セフィリアオンデスは、自分を中空から放り出そうとするトートセンクに金茶色の大きな瞳でもってガンをつけつつ、耳を澄ました。

「アンタ、何者?」

『我輩はケルベディウロス。真なる世界に生きる者。お前は、我輩たちを、真なる世界から締め出した者なのか?そのトートセンクというエクエウと手を組んだ』


「・・・えーと・・・」

セフィリアオンデスは考えた。

ケルベディウロスという名は、どこかで聞いた。聞いた覚えがあるのなら、きっと、この世界の“第五世界の鉱石の王”が語った歴史の中で聞いたはずだ。

ということは、きっと、代表的な存在、ある程度力がある者。

そして、このトートセンクの反応からして、敵側の存在なのだろう。


トートセンクが、怒りに震えている。

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