合流
何度目かの配信業務。
配信の度に増えるコメントの数。
コメントをたまに拾いながら思う。
俺は何やってんだか……
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「そういやさ、センって魔人化しないの?」
「確かに選手権の時以外見てないな」
「つか魔人化ってなんなん」
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魔人化か……俺もよくわかってないんだが。
「……ダンジョンのアイテムで魔物の心っていう宝石がある。それに触るとできるらしい」
他に魔人化できる人間と言えば……
確かカナタは聖獣とかなんとか言っていたな。
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「聞いたことある。めっちゃレアアイテムらしいぜ」
「ダンジョンに選ばれたやつだけかー」
「羨ましい」
「センの魔人化結構怖い」
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ダンジョンの宝箱から自分に合うものを手に入れることを、「ダンジョンに選ばれる」というと聞いた。
俺の大鎌やローブ、魔物の心も全て「選ばれた」結果なのだろうか。
しばらく魔人化についてのコメントが流れる。
使いすぎると暴走して戻れなくなる、うまく制御できるのは一握りだけ、とか。
まあ、俺が答えられることはあまりないな。知らないし。
なんならコメント欄の方が詳しいかもしれない。
……よし、この辺で帰るか。今日はこの後警察に寄らなければ。
「今日はここまでだ」
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「いつもより早くない?」
「もう終わりか」
「おつ」
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最低限の挨拶をしてダンジョンの入口でカメラを切る。
会社に戻り、近藤さんへ配信の機材を返す。
「今日は早かったな。早退して警察行くんだったか」
「ああ」
「ちゃんと時間見て動けるなら、普段から定時も気にしてくれよ?」
偶然居合わせた社長に言われながら帰り支度をする。
一応あれから時間内に帰るようにはしているが、少し物足りない気がする。
深部までしっかり探索するならばダンジョンで一、二泊は必要だからな。
会社を出て警察署へ向かう。
すっかり慣れてしまった署内の部屋には佐久間さん含む事件の捜査メンバーがいた。
それに加えて、あいつは……
「やあ。元気そうだね」
「……カナタか。なぜここに」
「あれ、聞いていないかい?僕もこの事件の捜査に協力することになったんだよ」
確か佐久間さんが新たにAランクの探索者へ協力を依頼したと言っていたな。
なるほど、カナタもAランクに上がったらしい。
「さて、揃ったな。事件についてなんだが……」
「あ、先に僕からいいかい?」
「ええ、どうぞ」
カナタが話し始める。
「僕は以前から協会からの依頼で数件、魔人化に関わる捜査に携わったことがある。そこでひとつ気付いたことが。これを見てほしい」
資料を配られる。一人の人物……研究者か?そいつに関することをまとめたもののようだ。
「この人物はノヴァリンク・ファーマに所属している主任研究者。彼の実績はすごいものだ。彼のおかげで命を救われた者は少なくないだろうね」
「ふむ……彼と事件に何か関係が?」
「ああ。彼は以前から魔人化に関する研究を行っていたという記録が残っている。彼の残した魔人化についての論文も世界的に注目を集めているみたいだね」
魔人化か。
……そういえば、以前魔物の心について調べた時にもこの名前を見た気がする。
「そして、今もなおその研究を続けているんじゃないかと僕は考えている」
カナタがこちらを見て言った。
「……魔物を使った動物実験を行っていたという記録もあるのか」
「じゃ、じゃあ、センさんを捕獲……って……」
「……」
全員の視線が俺に向く。
……俺が、実験体、ということか?
「加えて、以前見つけたライフルだが、まず海外製ということは間違いなさそうだ。そして弾薬はノヴァリンクで製造された薬剤を使用している可能性が非常に高い」
「ノヴァリンク、一体何をしようとしているのでしょうか……」
「そこで、捜査令状が下り次第、ノヴァリンクを捜索する予定だ。探索者の二人にも来てもらう。何かわかることがあるかもしれないからな」
どうやら相手は、普通の研究者ではないらしい。
すぐに分かるような証拠は表に出してはいないだろうが、調べてみる価値はある。
いったい俺を使って何をしようとしているのか、見せてもらおうじゃないか。




