目次 次へ PR 1/31 1.祈り 神殿の屋上に佇む華奢な人影。 長い黒髪と赤い衣を風にそよがせて、海の彼方を見つめている。 山から沸き上がる霧が流れて来て、視界を覆ってゆく。 黒い瞳に映る水面の煌めきは、雲間に隠れた星のようにその光を翳らせた。 彼女は両手を空へ掲げ、祈りの言葉を唱(うた)う。 山よ 風よ 海よ 大地よ 魔素の源たる精霊樹よ この国の守りが満ちて いつまでも精霊と共に有りますよう 「そして、サフィが幸せに暮らせますように――」 最後にささやかな声で追加した言葉こそ、一番感情が籠っていた。