ゲームフェイズ2:『11』リベンジ
『11』の部屋は、やはり特に変わりない。でっかい天秤があって、片方には頭蓋骨、片方にはカードが載っている。
そして、その天秤を見張るように、でっかい剣を持った像が立っているのだ。
「わー、懐かしいなあ」
「懐かしい……という感覚になるのか、それは」
「うん!最初にここに来た時は、海斗が『カードを取る海斗と一緒に、俺が頭蓋骨を落とせば大丈夫』って言ってたんだけど、俺が頭蓋骨、粉砕させちゃって、上手くいかなくってぇ……」
「……そうか。まあ、お前のことだからな、力んだら頭蓋骨ぐらい、粉砕できるか……」
海斗は『頭蓋骨を素手で咄嗟に粉砕……』と何とも言えない顔をしつつ、天秤をしげしげと見つめた。
バカも、『改めてみるとでっかい天秤だあ』とにこにこである。大きいことは良いことだ。キューティーラブリーエンジェル建設の社訓にもそう書いてある。
「えっと、でもな、この像、近づいて、先に剣を貰っちゃえば大丈夫なんだ!そうすれば安全だから、いっせーのせ、に成功しなくっても大丈夫だぞ!」
「そうか……なら、安全だな」
バカは、『さあ!早速、この像からでっかい剣を貰うぞ!』と意気込む。
……だが。
「……なあ、樺島」
ふと、海斗が言った。
「その……最初に失敗したののやり直しをしたいなら、付き合うぞ」
「え?」
バカは、きょとん、とした。何せ、理解が追い付かなくて。
「あ……いや、その、別に気にしてないなら、いいんだ。ただ、なんとなく、お前が……頭蓋骨を粉砕して失敗した、というのを、少し後悔しているんじゃないかと、思って……別に、気にしていないならいいんだ。僕の勘違いだし、そもそも、わざわざ危険を冒す必要も無いことだし……」
一方の海斗は、きょとんとするバカを見て、慌てて何やら言い募る。
それを眺めつつ、バカはゆっくりと、海斗の言葉を咀嚼して……。
「あの……海斗ぉ。俺、『いっせーのせ』のリベンジ、やってみたい。いいかなあ」
そして、バカは思ったのだ。
1つくらい、『正攻法』で勝利してみたいなあ、と。
「……うん。分かった。やろう」
海斗は、ちょっと笑って頷いてくれた。それを見て、バカは『ああ、やっぱり海斗は俺の相棒だあ!』と嬉しくなる。
「た、ただし!失敗したら当然、お前が僕を守るんだぞ!いいな!?」
「うん!大丈夫だ!責任はちゃんと取る!よーし!準備運動だ!床をめり込ませる屈伸!」
「普通に屈伸しろ!」
バカは嬉しくなって、めこめこめこ!と床をめり込ませながら屈伸運動を始めた。この後は伸脚秒速20回である!
ということで。
「準備運動で部屋を破壊するなこのバカ」
「ごめぇん……」
『11』の部屋の入口付近は、見事、バカの準備運動によってメキメキに壊れている!だが、バカは『俺はあの像に近付かない!』とやりながら準備運動していたので、像はまだ、動いていない。安全!
「じゃあ……ええと、僕がカードを取って、お前が頭蓋骨を払い落す……または、持ち上げて取るんだな?」
「うん。いっせーのせ、だぞ」
「分かった。合図は僕がやる。いいな?」
……バカと海斗は、それぞれの天秤の皿の前に立ち、それぞれに頭蓋骨とカードとを見つめている。
一度は、失敗しているチャレンジだ。バカは大いに緊張しながら……しかし、今回はいける気がしていた。何故だか分からないが……大丈夫だ、という気持ちで、目の前の頭蓋骨を見つめる。
「じゃあ、いくぞ……」
海斗の声を聞いて、バカは身構えた。……そして。
「いっせーの、せ!」
バカは海斗の動きに合わせて動き、頭蓋骨へ手を伸ばし……その頭蓋骨を、粉砕することなく、持ち上げたのだった!
頭蓋骨を持ち上げてすぐ、バカは『海斗は』と、海斗の方を見た。もし像が襲い掛かるようなら、すぐさま海斗を守りに行かねばならないのだから。
……だが。
「……やった、のか」
海斗は海斗で、その手にカードを持ったまま、バカを見つめていた。
像は、動かない。
「……やった」
喜びがじわじわと湧き上がる。バカは……バカと海斗は、なんと、この部屋を正攻法で突破することに、成功したのである!
「やったあああああ!リベンジ成功だぁああああああ!」
「よかったな」
海斗は海斗で、ほっとした顔で笑っていた。……海斗は、バカが心残りなんじゃないか、というただそれだけのために、わざわざ危険なことに挑んでくれたのだ。バカは改めて、海斗への感謝が止まらない!
「海斗ぉ!ありがとな!ありがとな!」
「まあ、お前がこんなに喜ぶんだから、挑戦した甲斐はあったな」
海斗は笑って、ん、と拳を突き出してきた。……なのでバカも拳を突き出して、グータッチである!やったぜ!
「さあ、戻ろう。まだ部屋があるんだろう?」
「うん!行こうぜ!次はどこがいいかなあ……」
こうして足取り軽やかに……ちょっと浮きつつバカ達が出ていった後、天秤を守る像が『おめでとう!』とにこにこしていたが、それは像のみぞ知ることである!
「……俺、でっかい剣、貰ってくるの忘れた……」
「……まあ、いいんじゃないか。大きい剣、持って帰ってもしまっておく場所が無いだろう」
「あ、そっかぁ……うん、じゃあ、いいことにする……」
ということで、『思い出した!』とやってしょんぼりしていたバカも納得し終えたところで、エレベーターは丁度、大広間に到着した。
「あっ!おかえりなさーい!……あれ?でっかい剣は?」
「しまっておく場所が無いからいいことにした!」
「そっかぁ」
大広間では皆が待っていてくれたので、バカは早速、『海斗とな!同時に天秤から頭蓋骨とカード取るやつやってな!成功した!』と自慢して回った。説明がドヘタクソであるが、皆、バカが大喜びであることだけは分かったので、『よかったね』『おめでとうございます!』とお祝いしてくれた。皆、優しいのである!
「えーと……じゃあ、次はどうする」
「残ってるのは、1、9、10、14、19、20……あと0、かな。……0は最後に回した方がいいかもしれないけれど、まあ、他はもう順番に行こうか」
そうして、さっさと次の部屋の相談を始める。まあ、ここから先は、バカが役に立ったり立たなかったりする部屋ばっかりだ。気楽にいこう!
「そうだな。ええと、『1』の部屋は……」
「海斗が1人でも大丈夫な部屋だ!あと、俺が全然役に立たねえ部屋!」
「……パズルか何かか?まあ、そういうことなら僕がやろう」
最初に行くことになるのは、『1』の部屋だ。ここは、海斗が『僕1人でも大丈夫かどうか確認したい』と言って、1人でパズルを解いた部屋だったが……。
「ねー、燕はそのパズル?みたいなの、答え知ってるんじゃないの?そしたら、すごく速く解けない?」
「いや、答えは知らない」
「えっ、そうなんだ……。そっかあ、じゃあ、海斗さんにお願いした方がいいかぁ……」
……真理奈が、燕相手にそんな話を始めてしまったので。
「……俺も解けると思うけど」
「あ、そうなの?じゃあ、海斗さんと燕と、どっちが早い?」
更に、真理奈が、そんなことを言い出してしまったので……。
「それでは、これより始まります!頭脳派3人による、『魔術師のパズル競争』です!さあ!真の頭脳派は誰なのか!それが本日ここに、決定することとなります!」
……『1』の部屋の、問題の前では……3人が、何とも言えない顔でスタンバイすることとなったのであった!
「さあ!海斗さん!燕さん!デュオさん!準備はよろしいでしょうか!」
「……ああもう、好きにしてくれ……」
「……これ、意味、無いと思うけど」
「まあ……俺達、なんだか期待されてるみたいだからね……あははは……」
タヌキの軽快なMCに反して、挑戦者3名……海斗と燕とデュオは、なんともやる気のない具合である。特に海斗と燕は、非常にげんなりしている!
「頑張れー!燕ー!」
「海斗!海斗!海斗!」
……が、それぞれの相棒が、ものすごく楽しみに目を輝かせているため。燕は真理奈を見てため息を吐いて諦め、海斗はバカを見て頭を抱えて諦めた!
「では!位置に付いて!よーい!どん!」
……そうして、タヌキの合図を聞いて、3人は一斉に、パズルを解き始めた!




