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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第六章:覆水を盆に返すバカ
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ゲームフェイズ2:『8』強者

 ……そうして、タヌキは生垣から救出された。タヌキはしんなりしょんぼりしていたが、七香はくすくす笑っていて、非常にご機嫌である。

「今ならいける気がするわ」

 そんな七香がそんなことを言うものだから、タヌキのみならず、バカもびっくりした!海斗もびっくりしている!七香が……あの七香が、『今ならいける気がするわ』などと言うとは!びっくり!

「えっ……えっ!?何が!?なんで!?どうして!?」

「あなたが笑わせてくださったもの」

 七香はくすくすしながら目を細めて、足元のタヌキを見下ろす。ご機嫌だ。非常に、ご機嫌である。

「え!?本当に!?……アッ!?これ、笑わせたんじゃなくて笑われたってヤツです!?」

 一方のタヌキは、『ああーん!』と嘆いているが……そんなタヌキを見て、七香は益々ご機嫌なのであった!




 さて。

 そんな、『今ならいける気がする』という七香の言葉を信じ、バカ達は揃って『8』の部屋へとやってきた。

 この中で一番ソワソワしているのは、間違いなくバカであろう。だってバカは、ここで酷いことが起きたのを何度も見ているから。

 ……が、その次にソワソワしているのは、多分、タヌキである。タヌキはタヌキで、『七香さん、大丈夫ですかねえ……』と、心配そうにソワソワタヌタヌやっており、落ち着きが無い。

 が、そんなバカとタヌキはいざ知らず、七香は颯爽と歩く姿も美しく、『8』の部屋へと優雅に突入していくのだった。


 そして。

「あら、悪趣味だこと」

 七香が不敵な笑みを湛えて『それ』を眺める。

 ……『それ』は、天井から降ってきた、黒っぽい、虹色っぽい、よく分からない色の物体であった。バカは、『アスファルトの水たまりの上に石油零した時っぽい!』と思った。

 が、そんなよく分からない物体は、見る見るうちに姿を変え……七香そっくりに化けた。

 そして、七香そっくりに化けた何かは、数度、手を握ったり開いたりしてそれを眺めて、『ああ、自分の体はこんな具合か』とでもいうかのようにそれらを確かめると……本物の七香へ視線を向けて、無表情のまま、その手を振り下ろす。

 ……途端、偽物の『見えざる手』が、本物の七香へ襲い掛かった。

 タヌキが『キャーッ!』と悲鳴を上げる中、バカは『俺の出番か!?』と身構え……しかし。

 ……ふ、と七香は笑った。

 そのまま、すい、と左手を持ち上げると……自分の頭上へ降ってきていたのであろう、偽物の『見えざる手』を、軽々と受け止める。

 すると……七香は左手を持ち上げたまま、その手を軸にするようにして、ふわり、とターンした。

 品のいいワンピースドレスの裾が揺れ、さながら踊っているかのようにさえ見える優雅さであったが……七香の目は鋭く偽物へ向けられ、そしてその右手は、ぐっ、と力強く握られている。

 そして。




 タヌキが、『キャーッ!』と歓声を上げる中、七香の『見えざる手』の右ストレートが、偽物を盛大にぶっ飛ばしていたのであった!

 天晴!




「気分がいいわ」

 七香は首を振って、少し乱れた黒髪を背中へ流した。が、その表情のなんとも満足気なことといったら!

「すごいですね!すごいですね七香さん!いやあー!かっこよかったです!」

「そう。ありがとう」

 タヌキに褒められ、七香は満更でもなさそうに笑う。優雅だが、好戦的な笑みである。……これを見て、バカは、悟った。『七香って、戦うの好きなタイプなんだなあ……』と。多分、メンタルが戦闘向きなのである。格闘技とかやらせたら、きっと強いのである!

「……うん。樺島君は必要無かったね」

「うん……俺、筋肉とタックルしかねえのに……役に立てるところ、なくなっちゃうよぉ……」

「あー……樺島君、既に大分、役に立ってると思うよ。元気出して」

 デュオはちょっと複雑そうな顔で七香を見ていたし、バカはバカで、『七香が強いと俺が役に立てない……』とちょっとしょんぼりしていたが……だが、何はともあれ、これでバカ随一の懸案事項であった『8』の部屋は、無事に攻略されたのであった!おめでとう!




 さて。そうして、『8』のカードを拾ってきたタヌキが『はい!燕さん!どうぞ!』と燕のポッケにそれを『もすん!』と突っ込んだところで。

「俺も役に立ちてえなあ……なんかいいとこ、ねえかなあ……」

「……そもそも、何番の部屋が残っているんだ?」

「そうだね。ここで一旦、確認しようか。ええと……」

 バカ達は早速、『今、何番のカード手に入れたんだっけ!』という情報をまとめることにした。

「燕!カード出してくれ!」

「ああ、うん……」

 ……とはいえ、これを確認する方法は簡単である。とりあえず燕のポッケに入っているカードを全部見ればよい。それだけでよい。とっても簡単!

「ええと、2、3、4、5、7、8、12、13、15、16、17、18、21……全部で13枚だね」

「もう脱出しようと思えばできちゃうんですねえ……アッ、しませんよ!大丈夫ですよ、燕さん!そんな顔しないで!ほらカードしまってしまって!ね!」

 確認が終わったら、タヌキがせっせと燕のポッケにカードをしまった。燕は、『なんで人のポケットにものをつっこむんだ……』と、何とも言えない顔をしていた!

「残っている部屋は、0、1、6、9、10、11、14、19、20、の9つか。よし、樺島。どこに行く?」

「え?えーと……」

 海斗に聞かれて、バカは『えーと……』と思い出す。

 ……0番の部屋は、デュオが『思っていた通りになる部屋』と言っていた。が、バカは直接見たことが無いので何とも言えない。頭脳派達に相談してからにしたい。

 1番の部屋は、確かパズルだ。海斗が1人でも大丈夫な部屋、ということだったが、バカが入ってもまるで役に立たない部屋であろう。

 そして、6番は……。

「『6』の部屋は、ちょっと危ないんだよなあ……」

 バカは、思い出してちょっと身震いした。そうだ。あの『6』の部屋では……怖い事故が、あった。

「エッ!?危ない部屋ですか!?どういう!?」

「かわいい女の子がいっぱい出てくる……」

「……それ、危ない部屋なんですか!?」

 タヌキが頭の上に『!?』と浮かべている横で、バカは『そうなんだよぉ、危ないんだよぉ』と大いに頷き……。

「うん。その女の子達から林檎貰って食べちゃうと、部屋から出られなくなっちゃうんだよぉ……」

 そう説明すると、タヌキはちょっと考え……首を傾げた。

「……それ、樺島さん、出られなくなったこと、あります?」

「ううん、俺は無い。でも五右衛門が出られなくなっちゃったこと、あった……」

「あ、アタシぃ!?なんで!?」

「ヤエっぽい子が居て、断れなかった、って……」

 五右衛門が『ああ……分かったわ。そういう部屋なのね……?』と頭を抱えた。ヤエがちょっと申し訳なさそうな顔をしていた!

「あと、デュオが入ると、たまそっくりの奴が出てくるから……」

「……それは危険だね」

 更に、デュオもちょっと険しい表情で『流石、悪魔のデスゲームだな……』とぼやいた。とはいえ、デュオはこういうのには慣れっこなのだろうが……でも、バカは全く慣れっこでないので、やっぱり、たまそっくりの子が出てきちゃったらちょっと嫌である!


 だが。

「あら。私、一度その『つぐみ』さんがどんな方か、お目にかかりたいわ」

 上機嫌も上機嫌、更に、戦闘の興奮が加わったか、七香は非常に乗り気であった。『今ならいける気がする』は伊達じゃないのである。

「……成程な。危険な部屋だね、本当に……」

「次の部屋は『6』ということにしましょう」

 デュオが更にぼやいているが、七香はどこ吹く風である!デュオでは歯が立たない!

「あのーう、樺島さん。そのお部屋って、入った人の好みドストライクな女の子がいっぱい出てくるんです?じゃあ、七香さんが入ったら、七香さんの好みの女の子が出てくるんです?」

「え?……わかんない。七香が入ったら、男が出てくんのか……?どうなんだ?」

 一方、タヌキは素朴な疑問をバカと共有して、2人揃って首を傾げている。答えは出ない!

「燕さーん、結局、どういう仕様になってるんですか?」

「そっか!燕なら知ってるのか!教えてくれー!」

 ということで、早々に諦めた2人は燕に向かって『どどどどど』『ぽぬぽぬぽぬ』と駆けていく。燕は『うわ』という顔であったが、ちゃんと律儀に考えて、答えてくれた。

「……異性愛者なら異性が出てくると思う。五右衛門さんみたいな特殊な事情が無い限りは、好みの相手が出てくるんじゃないか。俺が作った部屋じゃないから詳細は知らないけど……」

「あー、燕が作りそうな部屋じゃないよねえ、聞く限りでは……」

 真理奈は『成程ねえ』などと言って頷きつつ、ふむ、と首を傾げた。

「ねえねえ。七香さんじゃないけど……ちょっと、気にならない?」

「……わざわざ事故の可能性を増やさなくてもいいと思うけどな」

 燕は『真理奈まで……』というような、実に頭の痛そうな顔をしていたのだが……七香が強けりゃ真理奈も強い。特に、燕には強い。

「だって、気になる!燕が入ったら、どういう子が出てくるのか見てみたい!」

「えっ」

 終いにはこんなことを言い出すので、燕は只々、『どうしろっていうんだ』という顔をするしかない!

「よし!行こうよ燕!」

「行かない!」

「なんでぇ!?」

「なんでも!」

 ……そうして、『行こうよー!』と引っ張る真理奈と、『行かない!』と踏ん張る燕が生まれた。両者のパワーは拮抗している。バカは心の中で、『のこった!のこった!』と行司さんになりつつ、2人の引っ張り合いを眺めていたが……。


「……ん?どうしたんだ?戦車」

 そんなバカのところへ、戦車がからからとやってきた。そして、バカを、くい、くい、とエレベーターの方へ連れて行こうとする。

 更に、バカが『おや?』と思っていると、戦車は……何故か、四郎のところに行って、四郎に対しても同じように、くい、くい、とエレベーターの方へ押すのだ。

「……んだ、こりゃ」

「戦車、俺達皆を『6』の部屋に連れて行きたいのかなあ……」

 なんでだろうなあ、と思いつつバカと四郎が首を傾げていると、戦車は『我が意を得たり!』とばかり、くるんと回って喜んでいる。

 そんなこんなでいると、皆が『なんだなんだ、戦車が回っているぞ』とばかり、やってきたので、バカは皆に戦車の意図を説明した。即ち、『どうやら、戦車は俺達を6番アルカナルームに連れて行きたいらしい』と……。

「戦車が行こうって言ってるんだから、皆、付き合ってくれねえかなあ……駄目?」

 そうしてバカも、かわいい戦車の為に皆にお願いすると、乗り気ではなかったデュオや燕、そして海斗あたりも、『戦車の意図は気になるよね……』『何かあるなら、見ておいた方がいい、のか……嫌だけど……』『まあ、戦車の頼みなら……』と、渋々賛成してくれたのであった!

 ありがとう、戦車!




 ということで、バカ達はなんとか全員、2つのエレベーターに分かれつつ、『6』の部屋へと突入したのだが……。

「……アタシ、気づいちゃったんだけどぉ」

 五右衛門が、ちょっと遠い目で草原を見回して、言った。

「全員同時に入ったら、どれが誰のどういう好みなんだか、全然分かんないわよねえ……」

「アアーッ!五右衛門さん!それはもっと早く言っていただきたかった!」

 ……草原には、見渡す限り、沢山の人や人じゃないものが、大勢いる。彼ら自身も、『なんで我々、こんなに多いんですかね……?』というような顔をしているところではあるが……とにもかくにも、未だかつてないほどの大人数なのであった。

 その数……大雑把に計測して……500人である!

『恋人』どころの騒ぎでは、ない!

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― 新着の感想 ―
まさに 現代の 女帝……!!!お見事です、七香様!!!
そう言えばかにたまちゃんは無機物ボディにたまちゃんの魂入ってたし、四郎さんが野生のショベルカーに何の疑問も持ってなかった……。 この戦車ちゃんたち、中に誰かの魂入ってたりします???
恋人というか、お願いを断れない人物が多分に混ざってそう! 私お子様にお願いされると結構やわらか戦車。
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