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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第六章:覆水を盆に返すバカ
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多分もうゲームフェイズ1:隠し部屋2

 バカは慄き、むつも慄き、2人……否、1人と1魂で『どうしよう!どうしよう!』とわたわたやる。

 そんなバカとむつの魂を見ながら、海斗は『やっぱりそんな気がする』という顔で頷いた。何せ……バカとむつのリアクションが、大体同じなので!

「異能は、似ている人同士だと似やすい、んだよな……確かに、似てるかもしれねえ……」

 四郎も、何とも言えない顔でバカとむつの魂を見つめている。バカとしては、『むつ、俺に似てるのぉ!?』と、なんだか申し訳ないような気持ちになってきたが!

「似てると異能、似る……んです、か?」

「あー……ま、そう聞いたことがある。血縁だと似やすいし、似た異能同士は大体、気が合うもんだ」

 ヤエにも四郎がそうレクチャーしてやる横で、タヌキはバカとむつを見て、ふむ、ふむ、と頷き……。

「えーと、つまり、むつさんは……樺島さんと同じく、おバカ、ってことですか?」

 ……タヌキがとんでもないことを言い出した!

 が、ここで不安になっていてはいけない。こういう時はちゃんと、言い切ってしまうべきだ!

「うん!むつも、多分、バカ……!」

 ということでバカは、堂々とむつを罵倒した。むつの魂は、『えええええええ!?』とでも言いたげな様子で伸び縮みしている。それを七香が何とも言えない顔で見守っていた……。




「いや、流石にお前ほどじゃないだろう。僕自身はむつさんと話したことがないからな、全く分からないが……流石にお前レベルじゃないと信じたい。お前レベルのバカが2人も居たら、その……とんでもないことになる……!」

 が、バカが言い切った直後、『それは無い』と海斗が首を横に振り始めてしまった!

「そうだね。樺島君は一万人に1人の逸材だから」

「ねー、ちょっとぉ……それつまり、『一万人に1人より多い割合で存在していたらちょっとまずい』って意味よねえ……?」

 更に、デュオになんだか褒められ、五右衛門によく分からない解説を付け加えられた!バカは意味が分からないので、『とりあえず、褒められたっぽい!』と元気になった!バカ!

「でも、その、ちょっと似てますよね?ね?なんか、さっきからこのランタンの中の魂さん、樺島さんとリアクションが被りがちっていうか……ね?なんか似てますよね?おバカかはさておき、似てはいますよね!?」

「性格が似てるってこたあ、異能も似る可能性がちょっと高いし、赤の他人でも気の合う奴同士は結構、異能が近いことも多いしなあ……ま、お前ら、気は合うんじゃねえか?」

 ……ということで、バカは改めて、ランタンの中のむつの魂を見てみる。

 バカが覗き込んで首を傾げると、むつの魂もバカの方を見て首を傾げるように、ふにゅ、と揺れた。……やっぱり似ているかもしれない。バカはむつに親近感を覚えた!友達になりたい!




「ま、まあ、一旦戻って考えようか。えーと……?その、『樺島君だけじゃなくて、むつさんもやり直し系の異能を持っている。燕は樺島君の異能じゃなくて、むつさんの異能を模写した』っていうこと、だよね?」

 そうして、デュオが『ちょっと待ってちょっと待って』とばかり手を振りつつ、考えをまとめ始めた。

「僕は、そう思った。……どうだろうか」

「まあ……俺は、それに納得できるよ。うん。むしろ、今までなんで思いつかなかったのかな……」

 やがて、デュオは『納得!』とばかり、深々とため息を吐いて両手を挙げた。多分、『降参!』である!

「俺、燕と話していて一度も『やり直し』の話は出してないんだよね。だから、樺島君の異能を『模写』できたとは思えない。なら今回の燕が『模写』しようとしたのはもう、むつさんの異能ってことで間違いないと思う。それならまあ、筋は通るし……そもそも、『頭がいいとやり直しできない』なら、そうだよね……」

 デュオが『こんなことってある……?でもそれが一番、妥当か……』と嘆くのを見て、バカは『頭がいい人は大変だなあ』と思った。全く以てその通りである。

「……となると、『模写』の条件に、『相手に触れる必要がある』といったものがあるのかもしれないな。燕は、あそこまで引っ張らずとも、さっさと『やり直し』してしまえばよかったのだろうし……」

「或いは、むつさんの異能側に『誰かに触れている必要がある』っていう条件が付いてるのかもね……。まあ、そういう子細なところは分からないけれど」

 頭のいい人達があれこれ話すのを、バカはふんふんと頷きながら聞き、そして、碌すっぽ理解していない!

 そんなバカの肩を、四郎がぽふんと叩いた。なのでバカも四郎の肩をぽふんと叩き返して、堂々としていることにした!

 バカにはバカの役割が、多分あるので!




 さて。

「あの……それが、むつちゃん、なんですか?」

 そうこうしていると、ヤエがそっと出てきて、むつの魂のランタンを気にし始めた。

 とはいえ、この、魂状態のむつは、ヤエとは初対面である。ヤエとしても、むつだと思っていたものは実は燕だったわけで、つまり、彼女らは初対面同士なのだが……。

「あっ!むつさんが喜んでますよ!やっぱり女子同士だと落ち着くんですかね!」

 ……ヤエが話しかけると、むつの魂はぽよんと飛び上がって、そして、ふわ、とちょっと強めに光った。ずっと強く光っているのは疲れちゃうらしく、光量はすぐ元に戻ってしまったが……ふいよ、ふいよ、とランタンの中で精一杯揺れる様子は、なんとも可愛らしい。

 実際、ヤエにも『かわいい……』と好評であった。ぽよぽよ跳ねたり揺れたりしている魂は確かになんとなく愛嬌があるので、ヤエの感想も已む無しである。

「この子の異能が『やり直し』みたいなかんじ、ってことでしょぉ?……なんか、よくわかんない話だけど」

「まあ、『やり直し』とは言っても、多分、樺島君のものとはかなり違うんじゃないかな」

 デュオがそう言って、ちら、とバカのことを見る。なのでバカは、『ほげ?』と首を傾げ返した。

「樺島の『やり直し』は、文字通り本当に、『やり直し』になるんだ。……樺島が戻る地点より後に起きたことが全て、無かったことになる。樺島の記憶以外はな」

 海斗が頭痛を堪えるような顔で説明すると、全員、『意味が分からん』という顔になってしまう。まあ、バカ自身も自分の異能についてよく分かっていないので、本当に全員が『意味が分からん』の状態なのだ!

「『無かったことに』……というと?」

 七香が『せめてもう少し詳しく』とばかりに口を挟むと、海斗は『これ以上聞かれても困る』という顔でしょんぼりした。

「いや、本当にそうとしか言えないんだ。世界全てが『やり直し』になる」

「……ですが、樺島さんの記憶は存在しているのですよね?ならば、平行世界が生まれる、というようなことは」

「無い。……そう。そうなんだ。だから僕達としては頭が痛いというか……その、どうも樺島は、バカだから……タイムパラドクスも、パラレルワールドも、全く理解できないらしい。そのせいで、樺島にとっては、『全てが一続きの世界』でしかなく……そのせいで、異能の結果も、そうなるんだそうだ」

 海斗の説明を聞いて、七香は『そんなものを使わないでほしい』というような顔をしているのだが……既に何度も使っているところである!ごめん!

「えっ?えっと、でも、そうなると樺島さんの『やり直し』って、実質、樺島さん1人が過去にタイムリープできる、っていう異能じゃないですか?樺島さん自身は過去の樺島さんに会いに行けるんです?」

「無い。何故なら樺島はバカだからだ!」

「えーと?で、樺島君が『やり直し』をした後って……?その、未来は変わる、のよねえ……?そこらへん、整合性どうなってんの?」

「僕は知らないし、異能には全く関係ない!何故なら樺島はバカだからだ!」

 海斗は大分やけっぱちで説明をしてくれる。シンプルで真っ直ぐで、筋肉。正に樺島剛のような説明ぶりである!

「理解しようと思わないでくれ!ただ、『樺島はバカだから仕方がない』と諦めてくれればそれでいい!」

「納得する、とかじゃなくて、諦める、なのね?」

「海斗さんも難しいこと言いますねえー!んもおー!」

 タヌキが『難しい!』とやっているが、バカはバカなのでやっぱり諦めてもらうしかない。海斗の開き直りぶりを見て、バカは『やっぱり俺はバカ!そしてそれは、悪いことばっかでもないらしい!』と堂々と胸を張ることにした!




「……ま、いいわよ。うん。そうね?樺島君は親愛なるおバカ、ってことね?で、そうなると……ええと、結局むつちゃんの異能ってどんななの?」

 ということで、話は戻ってきたが……。

「……いや、まあ、僕にも理解できるタイプの『やり直し』は、僕も想像してみたことがある」

「海斗、そんなことしてたのぉ!?」

「そ、そりゃするだろ。僕はお前の『やり直し』を知覚することすらできないんだぞ?お前がどんなことをしているのか、想像くらいは、する……」

 バカはびっくりしたが、海斗はちょっともじもじしながらそんなことを言った!いじらしい!




「まず、普通に『平行世界』を作ってしまう異能が考えられる」

「それ、普通なんですかぁ!?やだーっ!」

 海斗が説明を始めて一発目で、タヌキがひっくり返ってしまった!タヌキがひっくり返ったなら俺も!とばかり、バカもひっくり返っておいた!

「まあ、樺島が居るから説明は省くが……これは相応にコストが高い異能だと思う。少なくとも、樺島のように『光ってから90秒後にやり直し』なんてものじゃないだろうとは思う。一時間の祈祷が必要とか、それくらいのことが無いといけないんじゃないかと……」

「そうだね。異能のコストについては俺も同意見だよ。……しかしなんというか、悪魔ってこういう異能の処理、どうやってるのか気になってきちゃったな。あはは……」

 海斗とデュオの言っていることはよく分からないが、バカはひとまず、『俺が光って90秒でやり直せるの、お手軽なんだなあ』とだけ理解した。


「他にも、『状態だけ元に戻す』ような異能も考えた」

 続いて、海斗はまた別の異能の案を出す。バカには全く分からない!

「例えば……僕が歩いて移動する。その僕に異能を使う。……すると、僕が『歩いた』時間が消えて、僕は『歩く前』に戻る……といったものだ」

「海斗ぉ、俺、全然わかんねえよぉ……」

「お前はそれでいい。お前が色々と理解してしまうと、こっちが困る」

 海斗は神妙な顔でそんなことを言うと、更に、『特定の対象だけ状態を戻す、という異能なら、時間を戻すよりは現実的かと思う』などと説明をしてくれた。

 ……そして。


「状態を戻す、か……。なら、『起きそうな人』の状態を戻して、『就寝したばかりの人』にすれば、その人を寝坊させられるのかな」

 デュオがそんなことを呟いたのを聞いて……ふと、バカは思い出した。

 そういえば、1周目の四郎は……なんだか、時間の感覚が狂っていたなあ、と。

 そしてバカは、気づく。

 あれは……時間を巻き戻されてしまったからではないだろうか、と!


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― 新着の感想 ―
考えるな、感じろ。バカ達は雰囲気でデスゲームをしている。いや色々と考えてるし命懸けなんだけど最終的に鍋パやお花見に行き着く予定なので…! 「歳の近そうな女の子がいる!」ってぽよぽよしたのかなむつタン。…
なるほど時間は遡らずに対象の時間だけ巻き戻すタイプの異能………樺島ほど大掛かりではないというか、デュオの無敵時間が対象の時間を先送る異能だと見れば普通に有っておかしくないタイプの異能よな。 ところで…
やっぱり馬鹿賢いぞ!?どうなってんだ!?
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