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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第六章:覆水を盆に返すバカ
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多分もうゲームフェイズ1:隠し部屋

「……ったく、容赦ねえなあ」

「生憎、疑い深くてね。……ああ、四郎さん、助かったよ」

「いきなり『氷でナイフを作ってくれ』って言ってきた時には何事かと思ったけどな」

 バカがぽかんとしている前で、四郎が苦笑いしながらデュオに肩を竦めてみせた。

「言っといてくれりゃあ、俺がやったんだが」

「あー……ごめん。俺、『疑い深い』んだ。本当に。あなたの腕を疑ってるわけじゃないけれど、信じきれないのは確かだな」

「ま、それはそれでいい。ある種、裏表の無い奴ってこったろ?それはそれで悪かねえよ」

 四郎の評価に、デュオも苦笑いしていたが……やがて七香がそっと来て、少し心配そうにデュオに色々と尋ねては、デュオから返事を貰って、そして安心した様子でこくんと頷いていた。

 ……と、そんな中。

「あの……なんで、燕のこと、殺しちゃったんだ……?」

 バカがそう、おずおずと聞いてみると、デュオは『えっ今ので分かっていなかったのか!?』という顔をした!デュオのみならず、全員がそういう顔である!

 嗚呼!またバカだけ、置いてけぼりになっている!




 ということで。

「あー……恐らく、異能を使おうとしていたと思うよ」

「え……?異能……?」

 早速、デュオが説明してくれたのを聞いて、バカは、こて、と首を傾げた。バカには難しい話である。

「多分、彼は既に一発逆転の異能を『模写』していたんじゃないかな」


「一発逆転……めっちゃ強いやつ、ってことか!?」

「まあ、そうだ。僕達全員をすぐさま行動不能にできるような異能か、はたまた、窮地を脱するための異能か……。さっきの異能の発動の様子を見る限り、樺島の『やり直し』そのままではなさそうだ。……樺島。お前、『やり直し』の時に光るんだったな?」

「え?うん。俺、光る……」

「……となると、さっきの燕の異能は……『模写』の発動だったのか、はたまた、既に『模写』した誰かの異能だったのか……」

 海斗はちょっと悩んで、はあ、とため息を吐いた。

「……僕らの知らない異能が出てきた可能性も、ある」

 ……どうやら、事態は極めて深刻であるらしい。




「まあ……なんか、使おうとしてたよな。空気が変わった、っつうかよ」

 四郎が『あーこりゃどうしたもんかね』と頭を掻く。

「俺は、さっきみてえな発動の仕方する異能を知らねえ。……この場の誰かのモンか?」

「アタシじゃないわよ。アタシの異能、コレだもの。もう見せたと思うけどぉ……」

 四郎が呼びかけると、五右衛門が『じゃきん』と、自分の手を鋏にして見せてくれた。滅茶苦茶かっこいい。バカは目を輝かせて拍手した!五右衛門は『コレ、褒められるとなんか……うーん、悪くない気がしてきたわ』と、何とも言えない顔をしていたが……。


「七香さんは、サイコキネシスのような異能だったか」

「ええ。『見えざる手』を生み出し操ることができます。手の強さや大きさは、感情の強さに依存するとか」

 七香の周りで、ずん、と空気が重くなるような気配があって……それから、デュオが浮いた。

「あっ……今、これ、小百合さんが持ち上げてる……?」

「ええ。……このように、凪いだ気分の時であっても、成人男性を持ち上げる程度のことはできます」

「おおー……つまり七香をめっちゃ笑わせると、七香1人で山も解体できるかもしれねえ、ってことか……」

「あのぉー、樺島さーん。七香さんをめっちゃ笑わせるタイミングがあったら、是非その時は私もご一緒させてくださいね……?大笑いする七香さん、ものすごーく、気になるので……」

 七香の異能が披露され、そしてタヌキとバカは固く握手しあった。バカは七香をめっちゃ笑わせてみたい。大笑いする七香、見てみたい。くすりと笑うだけで珍しい七香が大笑いするとしたら、一体何が起きた時だろうか。そしてその時、七香の異能はどれほどまでに強いのだろうか。バカはワクワクソワソワした!


「あー……その、ヤエさんの異能は?もしよかったら、教えて欲しいんだが……」

「あ、私、は……」

 海斗がヤエに呼び掛けると、ヤエは少し戸惑った様子だったが……。

「……あの、こういう、かんじ……です」

 にょき。

 ……海斗とヤエの間あたりの床に、にょき、と草が生えた。

 更に、葉っぱの間から、ふるん、と蕾が顔を出し……ぱふ、と、咲く。

「おおー!菫ですね!かわいーい!」

 小さな紫色の花を付けた菫を見て、一番喜んでいるのはタヌキである。やっぱりタヌキはお花が好き!

「あの、こうやって、花咲かせられます。元々植物の枝とか種とか葉っぱとかあったら、もっと大きくできる、みたい……?あと、私のも、七香さんと一緒で、気分で植物の大きさとか、成長速度とか、変わるみたいです」

 タヌキがあんまり大喜びなものだから、ヤエはちょっと照れて、ちょっと嬉しそうに異能の説明を続けてくれた。尚、その間もタヌキはひたすら、『うおおおおお!菫、いい!この素朴さ!この可憐さ!すごくいい!うおおおおお!』とやっている。ちょっと変な生き物である。バカはタヌキにまた一目置くことにした……。




 さて。

「で、まあ、四郎さんの異能は『氷結武装』で、デュオの異能は『無敵時間』、樺島は『やり直し』で、僕は『リプレイ』だ。タヌキは……」

「『謎収納』です!ほら!こんなかんじに!」

 ……タヌキが、ぽんぽこ!と元気に、謎の空間から色々出して見せてくれた。どんぐり、紙コップ、割りばし、ダンベル、シャカシャカチキンの粉、タンポポの綿毛……色々ある!

「……そして燕の異能が『模写』だったとして……さっきの、空気が変わるようなかんじは、まあ……全くの未知の代物、だな……」

 そうして全員分の異能が明らかになったところで……海斗が頭を抱えた!

「……幸いにして、『誰の』異能を模写したのかは推測できるよね」

 だが、デュオがそう言って、燕の近くに転がりっぱなしだったランタンを、そっとつまみ上げた。

「むつさん。さっきの燕は……君の異能を『模写』したのかな?」

 そして、ランタンの中のむつの魂に向かってデュオが話しかけると……。

「あっ、揺れてますねえ!かわいいですねえ!……え?これ、なんて言ってるんです?」

「いや、特に何も、喋ってはいないみたいだけれど……」

 ……デュオに話しかけられたむつの魂は、困ったように、ふる、ふる、と横に揺れるばかりである。

 それを見て、デュオもタヌキも首を傾げていたのだが……。

「あの、むつ、もしかして自分の異能、知らねえんじゃねえか?」

「へ?」

 バカがそう気づいた途端、むつの魂は、『その通り!』とばかり、ぴょこぴょこ跳ね始めた!どうやら、バカの考えが大当たりであったらしい!




「……確かにな。『異能の説明書き』を読まないと分からない異能なんて、山ほどあるだろう。そして燕が、むつさんの説明書きを奪ってしまったなら……」

「本人にすら、異能が分からない、と。……参ったな」

 デュオと海斗が頭を抱える。タヌキも『そんなことが許されるんですか!?』と尻尾を抱えてごろんごろんしている!バカはタヌキを撫でた!フサフサである!

「……樺島」

「ん?」

 そうしてバカがタヌキのお腹をフッサフッサと撫でていたところ、海斗が、ちょこ、とバカの脇腹をつついてきた。

「その……当然だが、僕はお前の『やり直し』の場面を見たことがないんだが……お前は『やり直し』をするとき、ああいう風に空気が逆巻くような、そんなかんじになったことがあるか?光るだけか?」

「え?」

 バカは、海斗の問いについて考える。……だが、思い当たるものは何も無い!

「俺、やり直す時はいっつも光るけどぉ……空気が動いたことは、無い、と思う……」

「……そうか」

 海斗は『お前の異能の効果がああいう風に出ていたなら、納得がいったんだが……』と、また悩み始めた。

「なら、燕が樺島の異能を『模写』していた、という可能性は捨てていいだろう。だが、そうなると……やはり、むつさんの異能を使った、という可能性が高い、よな……?」


「……むつさんの異能は、一体何なんだ?」

 海斗の視線の先では、むつの魂が、ちょっと困ったようにふらふら揺れていた。




 バカは考える。

 今までの『やり直し』の中でも、むつの異能が何か、という話題は何度か出ていた。そして……。

「『全員眠らせる異能』じゃないか、って、前の海斗とデュオは言ってたぞ」

 バカは覚えている。たしか、むつの異能は『眠らせる異能』じゃないか、という話だった。

「全員、眠らせる……?ああ、そうか、まあ、それなら確かに、分からないでもないが……」

「それなら確かに、この状況でいきなり使っても、状況を打破することができる、か……。いや、でも……」

 海斗とデュオが頭を抱える横で、他のメンバーも皆、困惑している。それはそうである。

「え?ちょっと待ってよ。なんで『眠らせる』って発想になったわけ?」

 特に、五右衛門は『やり直し』の前の話をほとんど聞けていないので、こういうことになる。尚、バカはバカで、『たしかに!』と思っているところである。安心と信頼の、バカ!

「あー……簡単に言うと、燕が『俺達が行動可能になるより先に行動できていないと色々とおかしいよね』っていうことと、『俺達、行動可能になったのって残り時間何分の時だった?それ、きりが悪くない?』っていう2点から考えたことじゃないかな。当時の俺の考えは分からないけれど」

 しかも、『やり直し』をして色々知っているはずのバカよりも、デュオの方が色々分かっているらしい!バカは『分かっちゃいるけど、やっぱりちょっとショック!』と嘆いた!

「きりが悪い、というと……?あれ?私達、残り時間何分で起きたんですかね……?」

「残り、大体75分だぞ!俺はちゃんと覚えてるぞ!」

 が、バカはバカでも、こういうのを覚えておくのは得意である。バカは胸を張って『75分!』と答えた!

 ……だが。

「そうだな。お前が僕の部屋の突入してきた時、残り時間は75分程度だったが……そもそも、このタイマーは何分から始まっている?『80分』か?……それも奇妙に思えるが」

「へ?」

 ……海斗に言われて、バカは思い出す。前回のデスゲームでは、『0日目昼』は、90分程度だった。

 そして、今回のデスゲームも『ゲームフェイズ』は90分とルールに明記されていたはずである。『発表フェイズ』は10分なのだが……。

「……90分、かなあ」

「そうか。なら、僕らは15分、余計に寝ているわけだ」

「うん。そっかぁ、やっぱりむつの異能、『お昼寝』かぁ……」

「えええ……そんな、和やかなお名前の異能でいいんですかぁ……?いえ、それを言うなら私も『謎収納』ですけどぉ……」

 バカは『そうだなあ』と頷いて……そして、ふと、海斗を見つめた。


「……海斗?」

 ……海斗は、なんだか難しい顔をしていた。




「……海斗、何か気になることでも?」

 デュオが、すい、と海斗の顔を覗き込むと、海斗は我に返って、ちょっと慌てた。

「え?ああ……いや、その、理に適っている、とは、思うんだが……どうにも、ひっかかるものが、あって……」

 ……そこで海斗はちょっと迷って、それから、『樺島。そこに居ろ。耳を塞いでおけ』と言って、他の全員を、ちょいちょい、と手招きして……そして何やら、こしょこしょ、と内緒話をした。……バカだけ、ぼっち!

 バカはちょっと寂しく思いながらも体育座りで大人しく待つことにした。こういう時もちゃんといい子で居るのがバカの美徳である。

 ……そうして、バカが待っていると。

「はああああああああ!?樺島はバカだから異能を使えるだァ!?どういうことだ、そりゃあ!」

 四郎がそんな大声をあげたので、バカは『ひゃ』とびっくりした!

「あー……成程ね。確かに、言われてみたら……その、燕が樺島君の異能を使うのは難しそう、だ、ね……。あははは……」

「……そういうことだ。それがどうにも、引っかかっている」

 バカは『皆、何の話してたんだよぉ』と聞いてみた。すると四郎が、なんとも生温かい顔で、『ま、適材適所……ってこった』と、優しくバカの肩をぽむんと叩いた。バカは『そっかぁ!』と納得した。多分、バカには知らなくていいことだ。多分、頭脳労働担当の人だけ知っていればいいことなのだろう。ヨシ!




 そうして。

「……なあ、樺島。本当に、燕はお前の異能を『模写』したと思うか?」

「へ?」

 海斗がそんなことを言い出したので、バカは、きょとん、と首を傾げた。

「『マイナス1周目』の話だ。燕は『やり直し』をしている、という話だったが……その、彼がお前の異能を『模写』した、というのは、どうもおかしい気がしていてな……」

 海斗はちょっと迷って、『これは説明しなくてもいいか』と何かを説明することを止めたらしい。……そして、デュオや四郎やタヌキや五右衛門、更にはヤエまでもが、なんだか生温かい笑みでバカをそっと見守っていた!何故だ!

「その、お前がバカだという話はまあ、置いておくとして」

「俺がバカだって話、してたのぉ!?」

「してた。が、それは置いておいて……もし僕が燕で、かつ『やり直し』の異能者が居ると分かっているのなら……『自分の自覚が一周目だったなら、一度、最初にやり直しをしてから先へ進む』という行動に出ると思う。さもないと、お前に『やり直し』を上書きされるからな」

 バカは『なんで今更、俺がバカだって話!?』と混乱したが、海斗の説明に引き戻される。

 バカにはイマイチよく分かっていないが……『やり直し』をやったもん勝ち、というところは、なんとなく分かっている。

 だからこそ、燕はバカの知らない『マイナス1周目』をやっていたのだろう、という結論に至っているわけだが……。

「が、今回、それが無かったわけだから……多分、燕はお前の異能を知らないんだと思う」

「へ?」

 ……バカは、『そういや、そんなこと聞いたなあ』と思い出しつつ、きょとん、とする。

「だから燕は『先を越される』という心配をしていないのだろうし……そもそも、計画にお前の異能を組み込むことも、できない。お前の異能が『やり直し』だということを知らないから、使いようがない。そういうことだ」

 バカは、ぽかん、としながら、『ほええ』と声を漏らした。バカには難しい話だが……『知らないものはどうしようもない。そして燕はバカの異能を知らなかった!』というところまでは、なんとか理解した!


 そして。

「……僕は、燕が『マイナス1周目』にコピーしたものは、お前の異能じゃないと思っている」

 海斗はそう言って……ちょっと青ざめた顔で、むつのランタンを見下ろした。

「多分、むつさんの異能だ。……彼女の異能も、『やり直し』の類なんじゃないか?」




「ええええええええええええ!?そうなのぉおおおおおおお!?」

 そうして部屋の中にはバカの絶叫が響き渡り、同時に、むつの魂は、『ぴゃーっ!?』と驚きに跳ね上がったのであった!大変だ!


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感想のお返事にお返事はマナー違反かもしれませんが、どうしても言いたいんです。 天城さんを完成させたの揚げ物悪魔さんですよね!? 天城さんにカルマ積ませすぎじゃないですか!?!? えっと株がストップ安…
馬鹿だから……そういえば、Ⅰの時に「やり直しの異能が使える条件」みたいなのでありましたね。パラドックスを理解出来ないという感じで。 確かに、その、燕君には……むり、かな……。
むつちゃんは平行世界を理解できてしまいそうだから「やり直し」ではないんだろうな……。 範囲を指定できる「巻き戻し」とか? 変な挙動してたエレベーターは、エレベーターだけ巻き戻したからとか? むつの魂を…
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