ゲームフェイズ3:天井裏
ということで。
「……発表フェイズ中に1回、ゲームフェイズ3が始まってもう1回、『リプレイ』を使えるな」
「そうだね。じゃあ……えーと、どこに使う?結構、難しいね。ははは……」
……バカのやり直しはもう決まったものとして……最後に2回分、『リプレイ』を使うのだ!
「どこを見たらいいか、ってことだよなぁ……?おい、どこ見て、何が分かるんだ?」
「俺は分かんねえ!」
「ああ、うん、まあ、それは俺達が考えるから……」
さて。こうなってしまうと、四郎とバカは全く役に立てない。四郎は役に立てるかもしれないが、少なくともバカは役に立てない!ということで、2人は待機だ!
「まず、知りたいのは『どのタイミングで燕が動いたのか』だな。……まあ、僕達が目覚める前、ということなんだろうが、それなら『僕達が目覚める前に燕が動いていた証拠』は1つ確認しておきたい」
「そうだね。まあ、それについては……時間指定をして、ティファレトかイェソドの個室を場所の指定にしておけば、何かの情報は出てくると思う。そして、そのあたりで出てきた情報は大体どれでも、有益なものだと思うよ」
バカが『てぃふぁれと……は、むつの個室だよな』と一生懸命考えていると、横から海斗が『イェソドは燕の個室だぞ』と教えてくれた。やさしい!
「まあ、そういうことなら1つ目の『リプレイ』は決まりだな。そして、もう1つは……」
「俺としては、『9』のアルカナルームを見ておきたい気はするけれどね。でもまあ、ランタンを置くのが見えるだけかな……」
「僕は、1つ目の『リプレイ』を見てから考えたい。どうだろう」
「うん、そうだね。賛成。情報が増えてから考えた方がいい。じゃあ……確認するのは『ティファレト』の部屋にする?」
「それがいいと思う。『イェソド』の方では何も起きていない可能性が高い。燕がむつさんと接触したことは間違いないだろうし、なら、そっちを見た方がいいだろう」
そうして海斗とデュオの相談がある程度片付いたらしい。バカと四郎は、『ほええ……』とやるばかりである。四郎もこうなのだから、バカがこうなるのは至極当然であった!
……さて。
「じゃあ、いくぞ。……『リプレイ』を宣言する!対象の場所はティファレトの個室!対象の時間は、『ゲーム開始前のフェイズの残り時間75分よりも前、駒井燕が誰かと2人でこの個室に居た、最初の瞬間から』だ!」
そうして海斗が異能を使うと、海色の光がほわりと溢れ……それは、2人分の人の形を作っていく。
「むつだ!」
「むつさんだね。……こうしてみると、燕、かなり上手にむつさんのふりをしていたんだな……」
……そうして、そこにはむつと燕の姿が現れる。むつと、燕だ。
バカは、久しぶりに見る2人の姿に、なんだか感慨深くなった。むつがむつで、燕が燕なのはなんだか珍しいのである。
「むつさん、困惑してるね。何の話をしているんだか……」
「燕は燕で、焦っているように見える。『時間が無い』ということか……?」
『リプレイ』の2人は、何やら話していた。燕がほとんど一方的に何か話している様子で、むつは困惑しながらそれを聞いている、というような……そんな様子である。
そうして、1分その様子が映し出されて、『リプレイ』は終了した。……特に何も、新たに得られる情報は無かったが……。
「……まあ、条件は『ゲーム開始前のフェイズの残り時間75分より前』としたからな。つまり、僕らが目覚めるより前に燕とむつさんが動いていた、ということは確からしいぞ」
バカは思い出す。確か、バカが行動開始できるのは『残り時間75分』くらいからなのだ!つまり、それより前に燕が動いていたら……燕の方が早起き、ということだ!バカは『早起きで負けた!』と、ちょっとショックを受けた!健康優良児たるこのバカが早起き対決で負けるなどとは!
「……ただ、今のを見ていたら、新たな問題も発生しちゃったけれどね」
が、バカはショックを受けてばかりも居られない。デュオが険しい表情で悩んでいるからだ。
「……むつさん、或いは燕が、異能を使った形跡がなかった」
「へ?」
「つまり……何故、俺達が眠ったままなのかは相変わらず分からない、ということだよ」
そうしてデュオはまた頭を抱え始めた。今回はデュオと海斗がいっぱい頭を抱える回であるらしい……。
「……燕だけ、目覚めるのが早かったならまだ、分かる。分かるんだけれど……それでも、彼だけが早く起きられる理由にはならない。俺はてっきり、目覚めてすぐ異能を使って俺達を妨害したんだと思っていたんだけれど……」
「そう、だな……。たまたま、だとしてはあまりに出来すぎている。燕が『早く起きられる異能』だとするのは、出来すぎな気がするし……そもそも、彼は『コピー』に似た異能を持っているんだろうと、僕は思っているんだが……違ったか?」
「いや……俺も、燕の異能は『コピー』の類だと思ってる。多分、発動条件がつぐみとは違うとか、発動制限があるとか、そういうところだとは思うんだけれど……」
デュオと海斗の悩みを聞いたバカが、『そうなのか?』と四郎を見ると、四郎は『まあ、血縁で、しかもよく似た姉弟だっつうんなら、異能もほぼ一緒でもなんら不思議じゃないわな』と教えてくれた。そういうもんらしい。
そして、バカとしても、多分そうだろうなあ、と思う。だって、燕はなんとなく、たまと似ているのだ。似ているなあ、と思わされるくらいなのだから、魂の形もきっと似ているのだろうし、それならやっぱり、『コピー』みたいな異能なんだろうなあ、と思うのだ。
「……これ、さっきのリプレイの時点では、残り時間は何分だったんだろうね」
そうして、デュオの考察はまだ進む。
「すまない。……『リプレイ』は、物の動きは再生できない。よって、時計を見ることはできないんだ」
「そっか。まあ……なら、しょうがないか……」
海斗が『僕の異能、本当に弱いな……』と、ちょっと拗ねたようにぼやいたので、バカは『そんなことないぞ!』と海斗の背を叩きに行った。海斗はちょっと複雑そうな顔をしつつ、『まあ、適材適所、か……』と何やら納得した様子であった!
「これだけだとどういう状況だったのか、よく分からないんだよね……。せめて、今ある謎の内、1つでも解決できればいいんだけれど」
そして、バカが海斗を慰める横で、デュオは特に何も気にせず、情報を整理し始めた。
「今解決しなければならない謎は、『むつさんを助けるにはどうすればいいのか』なんだけれどね。同時に、『燕とむつさんを同時に存在させるにはどうすればいいのか』っていうところでもあるけど……」
「それなら、『むつさんの体に入っている燕』と『むつさんの魂が入ったランタン』と『天井裏の燕の死体』を同じ場所に集めて、燕を説得すればなんとかなるんじゃないか?」
「まあ、それで一回やってもらうのがいい、か……。いや、だとしても、燕の説得材料になりそうな情報は欲しいね」
「……明かさなければならない謎に、『燕の動機』が加わりそうだな……。それが分からないことには、説得が難しい」
バカはバカなりに、『むつと燕を助けるにはどうすればいいか!』『燕を説得するにはどうすればいいか!』と覚えた。次回への引継ぎ事項である!
「他にある謎としては……『燕はどうやって、ゲーム開始前に9番アルカナルームに入ったのか』というところか」
「そうだね……。俺としては、『どうして2周目以降、むつさんが出てこないのか』も気になるけれど。どういう条件で分岐してるんだろう。それによっては、むつさんの魂がランタンに入る前に燕を説得することができるよね?」
バカは更に、『燕がゲーム開始前にエレベーターを動かしたんだよな……?』『なんで2周目からは燕しか出てこないんだ……?』ということも、覚えようと頑張った。そろそろいっぱいいっぱいであるが。
「おい、ちょっといいか。俺はよぉ、むつを一早く、確保すべきだと思うぜ」
更に、そこに四郎が提案し始めてしまってバカは『あわわわわわわわ』となってきた!
「その方が、燕の説得をやりやすいだろ。懐柔するにせよ、脅すにせよ」
「……まあ、そうだろうね。むつさんの魂が入ったランタンを持っていって人質にする、というのも、アリか」
「人質にするのぉおおお!?」
バカはもう、付いていけない!むつを人質にするなんて、そんなかわいそうなことはできない!ランタンの中に入れられてしまうだけでも怖いだろうに、そこに筋肉ムキムキのバカがやってきて脅し始めたら、もっと怖いに違いない!
「な、なあ……あの、俺、バカだからよくわかんねえんだけど……」
なのでバカは、そろり、と提案した。
「……つまり、俺が早起き頑張ればいいんだろ!?俺、頑張るよぉ!だから、むつにも燕にも、酷いことしないようにしてくれよぉ!」
そう!今、話をしているのは『どうやって燕とむつを仲間にするか』なのだ!多分!
ならばまずは、2人に会えなければならない!そして、2人に会うために燕を脅したり、むつを人質にとったりするよりは……燕がむつの魂をランタンに入れちゃう前に会って話をする、という方がいいと思うのだ!
だが。
「いや、頑張るな」
海斗はそう言った。バカは『そんなあ……』と、ちょっとしょんぼりしたが……。
「樺島。お前は次回……盛大に寝坊しろ!」
「なんでぇえええええええ!?」
まさか、お寝坊を指示されるとは、思わなかった!
「な、なんで寝坊!?いいのか!?そんなことしていいのか!?」
「ああ、構わない。もう、次の周はゲーム開始前に僕らに説明を行うのは諦めろ!1周目の状況をできるだけ再現するんだ!……確か、1周目だけは寝坊したんだったな?」
海斗に問われて、バカはこくんと頷いた。
そうだ。確かにバカは、1周目だけ寝坊した。今は残り時間75分ぐらいのタイミングで起きられるが、1周目は……残り時間30分弱ぐらいで起きていた、と思われる。多分。
あれも、どういう理屈だったのかは分からないのだが……もし、むつの異能が『人を眠らせる異能』だったら、そういうののせいでバカが寝坊した、ということだろうか……?
「とにかく、1周目の状況を限りなく再現しろ!そして、むつさんと燕の両方が居る状況に再現性があるかどうか確かめろ!どう考えても、『燕とむつさんが両方普通に居る状況』を生み出すのが最適だ!」
「そっかぁあああああ!分かった!俺、寝坊する!寝坊するよぉおおおお!」
ということで、バカはよく分かっていないながらも、ひとまず分かった。『何故』を覚えるのはちょっと苦手だが、『何をする』だけ覚えておくのなら、バカはまだ頑張れるのである!
ということで。
リンゴン、リンゴン、と鐘が鳴る。発表フェイズも終わって、ゲームフェイズ3に入ったところだ。
「さて。じゃあ……ここで粘っても、あんまり情報が出てこない気がするから、これが最後の『リプレイ』になるかな。……燕の最初の行動を見ておくのが最適かも」
「そうだな。……じゃあ『リプレイ』を宣言する。対象の場所は『イェソド』の個室の中。時間は『燕が行動可能になった瞬間から』だ」
デュオと海斗はさらっと打ち合わせて、さっさと『リプレイ』を決めた。
これがバカがやり直す前の、最後のお土産になる、ということだろう。バカは心して、海斗の異能を見守り……。
だが。
「……リプレイが、出ないな」
「不発?っていうことは……『イェソドの個室の中で、燕が行動可能になった瞬間』は存在しないのか……?どういうことだ……?」
……ここに来て、不発である!海色の光は、ぽやっ……と霧散してしまって、形にならなかった!
「……樺島」
それを見ていた海斗は、なんともやさぐれた目で、バカに笑いかけた。
「頑張ってくれ。僕はもうお手上げだ」
「ええええええええええええええ!?」
海斗がお手上げだというのならば、バカも当然、お手上げである!否、手だけ上げたとしても不足であろう!バカは足も上げてその場にひっくり返った!
だがひっくり返ってばかりも居られない!バカは……また『次』を頑張らねばならないのである!バカは発光を始めるのだった!
……ということで、バカは目を覚ました。
「ん……っとと、駄目だ、起きちゃいけないんだった……」
バカはすぐさまモニターを確認し、そこの残り時間が『75分』であるのを見た。
つまり、まだ起きちゃ駄目である。バカはベッドの上で、『まだ起きちゃ駄目、まだ起きちゃ駄目……』と、そのまま二度寝を決め込んだ!おやすみ!
そうしてバカは改めて、ぱちりと目を覚ました。
モニターをしかと確認してみると……残り時間は、『30分』となっていた。
そろそろ、動いてもいい頃ではあるのだろう。だが……バカはちゃんと覚えている。バカは今回、『できるだけ、1周目と同じ行動をしてみる』のだ。
確かあの時は、部屋の中を確認して回った後、残り時間はずっと、ベッドの上で待っていた!
……ということで、バカはベッドの上にきちんと正座して、そわそわとその時を待つ。
今回は、燕とむつが2人揃った状態でゲームが始まるはずなので……。
……そうして、エレベーターが動き始めた。バカはそわそわ、としながらベッドの上で体操して待ち……。
「……あれっ?」
ドアが開いて、全員が大広間に出てきた。そう。9人が。
……燕が、居ない。
<章末バカカウンター>
この章の中に出てきた『バカ』という単語の数:大体890回くらい




